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キヤノン電子らの衛星を載せた米ベンチャーのロケット、打ち上げに失敗

米国のロケット会社「ロケット・ラボ」は2020年7月5日、「エレクトロン」ロケットの打ち上げに失敗した。搭載していた、キヤノン電子などが開発した計7機の小型衛星も失われた。

ロケットラボ、ロケットを空中で回収する試験に成功 - 再使用に一歩前進

エレクトロンは今回が13機目の打ち上げで、失敗は1号機以来2回目。2号機から12号機までは連続で成功し、小型・超小型衛星打ち上げロケットの分野で確固たる地位を築いた矢先の出来事だった。

エレクトロン・ロケットの13号機、ミッション名「Pics or It Didn't Happen」は、日本時間7月5日6時19分(現地時間9時19分)、ニュージーランドのマヒア半島にある同社の発射場から離昇した。

ロケットは1段目の燃焼や1、2段目分離などに成功し、順調に飛行を続けていたものの、打ち上げから約4分後に異常が発生。軌道投入に失敗した。事故の詳細は現時点で明らかになっていない。

ロケットと搭載していた衛星は、あらかじめ設定されていた海域内に落下したという。船などへの被害は報告されていない。

同社はその後、声明を発表し、「米連邦航空局と連携して異常の調査を行い、根本的な原因を特定して修正し、速やかに次の打ち上げにつなげたい」と述べている。

また、同社のピーター・ベックCEOは「今日の異常は、衛星の打ち上げが過酷なものであるということを思い出させてくれます。しかし私たちは、問題を特定し、修正し、できる限り早く、安全な打ち上げに戻ります」と語っている。

ロケットには、キヤノン電子が開発した小型衛星「CE-SAT-IB」のほか、米国の地球観測衛星会社プラネット・ラボズ(Planet Labs)の地球観測衛星「フラック4e(Flock 4e)」が5機、そして英国のインスペース(InSpace)の技術試験衛星「ファラデー1」の、計7機の小型衛星が搭載されていた。これらの衛星の打ち上げはスペースフライトが手配した。

CE-SAT-IBは、2017年に打ち上げられた「CE-SAT-1」に続く、同社2機目の衛星で、1号機に続き、望遠カメラとしてEOS 5D Mark IIIと口径400mm望遠鏡を、また広角カメラとしてPowerShot S110を搭載。また、新たに開発した姿勢制御用センサーやアクチュエーターなどを搭載し、内製化率を格段に高め、今後の量産化に向け、2年間の実証実験に挑む予定だった。

なお、キヤノン電子は事故の翌日(6日)、2020年下期以降、衛星3号機「CE-SAT-IIB」をエレクトロンで打ち上げることを決定したと発表している。CE-SAT-IIBは、1、2号機が搭載していた望遠鏡に加え、新たに開発した超高感度カメラも搭載し、深夜の地上観測も可能にしているという。

エレクトロン・ロケットとは?

ロケット・ラボ(Rocket Lab)は米国に本拠地を置く宇宙企業で、ニュージーランドにロケットの生産施設や射場を構える。

同社のエレクトロン(Electron)ロケットは、近年世界的にブームになっている小型・超小型衛星(質量100kgから数kg級の衛星)を打ち上げることに特化した、超小型ロケット(micro launcher)に分類されるロケットである。

また、ロケット・エンジンを動かす仕組みに電動ポンプを使ったり、製造に3Dプリンターを使ったりと、機体を手軽に製造、運用できるようにし、さらに大量生産することで、低コスト化を図っている。

2017年の1号機の打ち上げは失敗に終わったものの、2018年1月21日の2号機の打ち上げで初成功し、以来12号機まで、11機の連続成功を続けていた。

現時点で、このクラスのロケットで実用化されているのはエレクトロンのみであり、その信頼性の高さも手伝って、世界中の衛星ベンチャーなどから打ち上げ受注を獲得。市場で確固たる地位を築いていた。

さらに、急増する小型・超小型衛星の打ち上げ需要に対応するため、米国バージニア州に新しい発射台を建設するとともに、第1段機体の再使用計画も打ち出すなど、さらに勢いを増そうとしていた矢先での失敗となった。

もっとも、2号機から12号機まで11機が連続で成功したことからして、ロケットに根本的な問題があったとは考えにくく、また即座に市場からの信頼を失うこともないだろう。

実際、前述のようにキヤノン電子は、事故の翌日に新しい衛星の打ち上げをエレクトロンで行うと発表。またプラネット・ラボズも「ふたたびエレクトロンで打ち上げられることを楽しみにしています」とエールを送っている。

ただ、エレクトロンと同規模のロケットは、世界中で約100社が開発に挑んでおり、米国内でも「ヴァージン・オービット」や「ファイアフライ」といった企業が実用化に近づいている。また日本でも、「インターステラテクノロジズ」や、キヤノン電子も出資する「スペースワン」が開発を行っている。

そもそも、市場において一社のみが独占する形は、今回のような打ち上げ失敗時に代わりがきかないというリスクがあり、また市場競争も働かないという問題があることから、衛星ユーザーからはエレクトロン以外のロケットが待ち望まれている。

そのため、今回の原因究明や飛行再開、またその後の信頼回復などが遅れることがあれば、市場の勢力図に大きな変化が起こる可能性もある。

○参考文献

・Rocket Lab - Pics Or It Didn't Happen Launch - YouTube
・弊社 超小型人工衛星 2 号機 CE-SAT-ⅠB 打上げ予定日決定
・弊社 超小型人工衛星 3 号機 CE-SAT-ⅡB  Rocket Lab 社 E lectron にて 打上げ 決定
・Rocket Lab Electron Rocket Fails Carrying Five SuperDoves
・Rocket Lab | Electron - satellite launch vehicle | Rocket Lab

○鳥嶋真也(とりしましんや)

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。