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ThinkPad トラックポイント キーボード IIは製品化になぜ7年もかかったのか

レノボ・ジャパンから「ThinkPad トラックポイント キーボード II」(以後、この記事に限ってTTPK II:テーテーピーケー・ツーと呼ぶ)が登場してから早一カ月近く。デスクトップPCでもAndroidデバイスでもThinkPadと同じように快適なキータイプと便利なトラックポイントが使えるぞおおおおお! と狂喜乱舞しているユーザーは多い(少なくとも私はそう)。

「ThinkPad トラックポイント キーボード II」レビュー - 操作性がよくなった新作、相変わらず使いやすかった

しかし、このキーボード。従来モデルから7年間を経ての新モデル登場ということで、あまりにも間が空きすぎていないか、と。しかし、レノボ・ジャパンの担当者に聞くと「いや、これでも速かったんですよ」という。何がどういうわけで「これでも速かった」のか。それも含めて7年の時が可能にした新モデルのアップデートについて、「TTPK IIを世に送り出した中の人」に話を聞いた。

○「圧倒的に売れた日本だからユーザーの要望はほぼ通った」

「TTPK IIを世に送り出した中の人」とは、レノボ・ジャパン ThinkPad製品事業部プロダクトマネージャーの上野達也氏だ。上野氏は、TTPK IIが登場“できた”背景として、初代が「日本のユーザーに高く評価してもらえたこと」を挙げる。2016年から2020年の合計売上で日本は第1位。直近の2019年度のデータによると、全世界売り上げの50%を日本が占めているという。続くカナダが22%、米国が16%と「日本は圧倒的なんですよね」(上野氏)

なお、初代が日本で圧倒的に販売できた理由について上野氏は「まず日本のユーザーの多くがワイヤレスのTTPKを望んていたこと。当時のトラックポイント搭載外付けキーボードは有線接続しかなかったので」と挙げる。

とはいえ、いや、だからこそかもしれないが、日本のユーザーからは多くの改善を望む意見が寄せられたという。その意見に後押しされるように、上野氏は改善点を反映したTTPK IIの製品化を本部と交渉することになる。

「そんな順調だったのに、次の製品が出るまで7年もかかったのですか?」

「7年間もかかったんですかといわれますが、まず、その交渉に4年間ほどかかったんです」

さらに、4年かかった交渉を経て製品化が決定した後も製品化にはさらに3年かかった。その理由を上野氏は「なんといってもお安い製品ではないので」と述べる。加えて、現在Lenovo全体では周辺機器を500種類ほどラインアップにかかえており、その中で開発リソースを割り当てる優先順位が決まっている。Lenovoにおいてその優先順位が高いのはドッキングステーションだ。さらに、販売見込みや実装する機能を検討する仕様要求策定などで、3年の時間を要したと上野氏は説明する。「私、“しつこい”たちなので」(上野氏)

製品化されたTTPK IIでは、Bluetooth 5.0、USBの2.4GHzワイヤレスモジュール、Windows並びにAndroidの正式サポート、USB Type-Cによる充電など、企画段階で希望していた仕様をほぼ実現することができた。TTPK IIは製品化を提案したレノボ・ジャパンが主導して製品企画を決定できた(販売実績がダントツトップだとこういうことが可能になる)ので、上野氏は日本のユーザーに対するヒアリングで得た意見を優先して実現すべきと考えていた。ただ、それでも最も重要視したのが、打鍵感やキーの操作感、そしてトラックポイントだ。「それがThinkPadの命なので」(上野氏)

あまり知られていないかもしれないが、大和事業所時代からThinkPadシリーズでは点字入力に対応していた。しかし、初代は点字入力に必要な「6点入力」に対応していなかった。これをTTPK IIでようやくサポートすることになり、それも改善点として訴求したいと上野氏は話していた。

○見た目と打鍵感は同じ、でも中身は大きく変わった

初代TTPKとTTPK IIを比べるとサイズはほぼ同じ。だが、重さは初代の460グラムから516グラムとTTPK IIが重くなっている。これは、TTPK IIのボディ底面に金属製のパネルを搭載したためだ。

初代でも鉄製パネルを内蔵していたがサイズが小さく、ユーザーからは剛性を増す要望が多く寄せられたという。TTPK IIではその要望に応えるべく、鉄製パネルのサイズを増やして(上の写真で底面右側に設置されたパネルのサイズは76.72×72ミリ、重さ約50グラム。左側パネルのサイズは106.5×72ミリ、重さ約72グラム)、重くなるけれど剛性を高めることを優先した。

他にもデザインと機能面のアップデートとして、ファンクションキーレイアウトで4つずつのグループ化にしたこととHomeキーの搭載、CapsLockとFnLockにLEDインジケータの用意、トップカバーのワンピース化、トラックポイントボタンの形状変化、キートップ質感の変更を挙げている。いずれも現行ThinkPadと意匠をそろえるための変更だ。ただし、現行ThinkPadで搭載するマイクとスピーカーにオンオフを示すLEDについて、TTPK IIでは用意していない。その理由について上野氏は「電力消費を抑えるため」と説明している。なお、バッテリー残量を示すLEDについては、(アイコンがなくて分かりにくいが)キーボード右上に用意したLEDの点滅パターンと色で示すようにしている。

改良はまだあり、Bluetoothのペアリングでは、MicrosoftのSwift Pairに対応したことで、デバイスのディスプレイに表示されるコードナンバーを入力するだけでペアリングが完了できたり、バッテリー駆動時間が初代の1カ月から2カ月に向上したりしている(バッテリー容量は500mAh。バッテリーライフのテスト条件は1日あたりキーボード入力3時間、アイドルモード5時間、1週間5日使用)。バッテリー駆動時間の延長は、キーボードを1秒使用しないとアイドルモードに移行し、6時間操作しないとスリープモードに移行することで電力消費を抑えるなどした成果だ。なお、このバッテリーの動作モード移行についてはユーザーが変更できない。

TTPK IIでは、電源スイッチを右側面奥に、Bluetooth/2.4GHzワイヤレス接続の切り替えスイッチとWindows/Androidモード切り替えスイッチを背面に配置している。このデザインは、レノボ・ジャパン大和研究所に所属するデザイナーの「ユーザーが使用する機会が少ないスイッチはユーザーに見えない背面に配置する」という考えに基づいて決定している。電源スイッチが初代のスプリング式スライドボタンからオンオフが明確に切り替えられるスイッチに変更したのも、カバンに入れて移動しているときに勝手に電源が入ってしまうことを防ぐためという。なお、キーボード本体にUSB接続ワイヤレスモジュールを収納できるホルダーを用意した理由について上田氏は、モジュールの紛失防止のためと説明する。

TTPK IIではAndroidに正式対応したことで、F9からF12にかけてAndroidの機能ボタンと検索ボタンの機能を割り当てている。ただ、この配列が標準のAndroidデバイスと異なっている。左から「戻る」「ホーム」「検索」「タスク」となっており、通常の「ホーム」「タスク」の間に「検索」ボタンが割り込んでいる並びだ。このようにした理由について、レノボ・ジャパンは「ユーザーテストを実施したUIテストとベンチマークテストの結果に基づいて決定した」とだけ説明している。

ThinkPadの名を冠する外付けキーボードだけあって、耐久テストも工場出荷時に実施している。振動テスト、防塵テストとともに、キーボードでは気になる防滴テストでは水や炭酸飲料(コーラなどの砂糖を含む飲料)20ccをこぼして5分間放置した後、水分をふき取った状態での動作を確認している。ThinkPadというと、以前はドレインホールを用意して排水することもあったが、TTPK IIはバスタブ構造を採用して内部に浸水させないようにしている。

なお、トラックポイントにおいて「トラックポイントを使っていると、力を抜いた後もマウスカーソルがずるずると動いてしまう」という意見を聞くことがある。これについて上野氏に確認してみると、TTPK IIだけでなくThinkPad搭載トラックポイントでも、環境によっては同様の現象が発生するケースがあることを確認しているという。この症状はトラックポイントが登場した当初から起きていて、筆者も以前は悩まされていたが最近のモデルでは経験することがなく、改善によって問題が解消したと考えていた。

しかし、上野氏によると、この現象については根本的な改善はされていないと回答している。公式見解としては、力を抜いた後もマウスカーソルが動く現象が発生する理由として、「トラックポイントの制御は物理的な抵抗により操作しており、その抵抗の度合いについては、環境や温度の影響を受ける場合や、トラックポイント(のゴムパーツ)自体が元の形状に復元しようとする場合、大きな力がかかった後に発生する場合がある」としている。その上で、「ドリフト(力を抜いた後もマウスカーソルが動く現象をこう呼ぶようだ)が以下の状況で1~3秒程度発生することを通常の仕様環境として想定をしている。ThinkPad起動時。ThinkPadをしばらく操作していない状況で通常の操作に戻った場合。TrackPointを長い時間押していた場合。温度変化があった場合」という要因を挙げている。
○トラックポイントのメリットをがっつり訴求したい

ThinkPadユーザーは、総じて「キーボードにおいた手を動かすことなく使えるポインティングデバイス」としてトラックポイントの使い勝手を高く評価している。しかし、残念ながら現在におけるトラックポイントユーザーは少数派といっていい。ユーザーの中には「そもそもトラックポイントを触ったことがない人もいますし、使いかたも分からない人もいるのが悩みの種」(上野氏)という。

このような状況において、TTPK II(そして、ThinkPadシリーズそのものの)が搭載するトラックポイントのメリットを訴求する必要がある。Lenovoもその必要性を認識しており、米国Lenovoが動画コンテンツを用意している(ただし英語版)。上野氏は、日本語でもトラックポイントの使い方を説明するチュートリアルコンテンツを作るべく調整中であることを明らかにしている。「英語版は“さらっ”と説明していますが、日本語版では、どのようなメリットがあってどのように使うのかを説明する内容にしたいです。トラックポイントのメリットはキーボードから手を動かさずに使えること。マウスのようにキーボードから手を動かして使うデバイスは、生産性に関して明らかにマイナスになります」(上野氏)

余談になるが、TTPK IIはThinkPad Tシリーズ14型2019年モデル(T490、T495など)のキーボードユニットをベースとしている。Tシリーズをベースにする理由について上野氏は、使い勝手に影響するサイズ的に14型ディスプレイを搭載したThinkPadが望ましく、かつ、コスト的にThinkPad X1 CarbonよりThinkPad Tシリーズが望ましいから、と説明している。なお、ノートPCと異なりデスクトップPCで使うことが多い外付けキーボードではバックライトの需要がそれほど高くなく、そのため、TTPK IIではバックライトを搭載しなかったという。

また、外付けキーボードのバリエーション展開(例えば、もっとストロークが深いモデルや、メカニカルキーボードなど)の可能性については、「TTPK IIが爆発的に売れて、作るキーボードも爆発的に売れる可能性があるならば」としている。「すっぽんのように食らいついて離さないのが私の特徴なので。本部もしつこいと思っているようです」