11月5日、Windows Insider Programに大きな変更があった。これまで、次の次のWindowsを先行して配布していたSkip Ahead Ringが廃止されたのである。
これは、今年から始まったWindows 10のアップデートパターンの変更に対応したものだ。現在プレビュー中の20H1は、来春に提供されるアップデートで、秋のアップデートはマイナーバージョンアップ扱いとなる。後者はプレビュー期間も短縮されたことから、春のアップデートは、Skip Ahead Ringを使わなくても、ほぼ1年間のプレビュー期間を確保できるからだ。
来年春のリリースである20H1のバージョン番号は2004となる
これまでのWindows Insider Programと Windowsのアップデートパターン
これまで、Windows Insider Programには、以下の4つのRingがあり、ユーザーはいずれかを選んで参加していた。
●Release Preview Ring:現行のWindowsの品質アップデートのプレビュー
●Slow Ring:次のWindowsのプレビューの多少安定したビルド
●Fast Ring:次のWindowsのプレビュー
●Skip Ahead Ring:次の次のWindowsのプレビュー
このうち、Release Preview Ringは現行のWindows 10用、Fast/Slow Ringは次のWindows、Skip Aheadはさらにその次のWindows用となる。
Skip Aheadで最初公開されたリリースは、その後、Fast/Slow Ringで公開されていたプレビュー版が完成版になるタイミングでFast Ringに移行する。つまりSkip AheadとFast Ringで1年ぐらいかけてプレビューが実施されるのだ。これは、Windows 10の機能アップデートが春と秋の年に2回だったときのパターンだった。
2018年までは年2回の機能アップデート(メジャーアップデート)は、毎年3月と9月に品質アップデート用のビルドを完成させていた。
配布は翌月だったが、マイクロソフトはRS5での問題を受けて、完成と一般向け配布の間に時間を取ってプレビューできるようにしている。このため、一般向け配布は完成の翌々月となった。Release Preview Ringは、完成と一般向け配布の間にプレビューが開始され、かなり安定したバージョンのビルドを試すことが可能になる。
Fast/Slow Ringは、どちらも次期バージョンのプレビューだが、Slow Ringでは比較的安定したビルドが前提となっているので、最初のうちは公開されず、配布1~4ヵ月前あたりになってから配布が開始される。昨春のアップデートだったWindows 10 Ver.1803(RS4)がSlow Ringに登場したのは、2017年11月、つまり完成(2018年3月)の4ヵ月前だった。
今年からWindows 10は、春にメジャーアップデート、秋はマイナーアップデートとなり、秋のアップデートに関しては、春のアップデートの一般公開後からのプレビュー開始となり、期間が短縮されている。また今年は、Slow RingとRelease Preview Ringのみで実施されていた。
Release Preview Ringは、現行バージョンの「品質アップデート」のプレビューをするものだが、今年は8月から19H2のプレビューが19H1のプレビューと同時になされていた。この2つは実際にはアップデートパッケージを共有していて、同じものが配布されたのち、19H2のみ差分を後から受け取っていたようだ。
つまり、秋のアップデートのプレビューは、春の品質アップデートのプレビューや配布と同期していたと考えられる。今年はSlow Ringでも一時プレビューがあったが、これは移行前だったからと考えられる。とすると、Fast/Slow Ringは、今後は春のアップデート専用となるのではないかと考えられる。
Windows 10は次のステージへ 20H1に付けられた「VB」は架空の元素名!?
11月に入り、初めてSlow Ringでの20H1のプレビュービルドが公開された。その後のBild 19033では、デスクトップ右下のウォーターマークが消え、VB_RELEASEブランチからのリリースが始まった。また、このビルドはSlow Ringでも同時に配布された。
マイクロソフトのブログによれば、20H1のプレビューは今後Slow Ringとなり、First RingではRS_PRELEASEブランチからのビルドの配布が開始されるという。これは、おそらく21H1となるビルドなのだと思われる。
このため、20H1のプレビューを続けたい場合には、Slow Ringへと移行しなければならないらしい。とすると、20H1はそろそろ大詰めを迎えたことになる。実際、20H1のプレビューに関するブログでは11月に入ってからは新機能の記述がないままだ。
また、Build 19033のバージョン表示(WinVer.exeなど)やマイクロソフトのブログの記述などから、20H1のバージョン番号は「2004」となることが確定した。マイクロソフトによれば、Windows Server 2003などとの混同を避けるため、Ver.2004としたという。
また、ビルドブランチ名がVS_RELEASEとなることから、「VB」が20H1の開発コード名を表す略号だという話がある。これまでリリース直前には、RS5_RELEASEや19H1_RELEASEといったビルドブランチ名が使われてきたからだ。このビルドブランチ名は、以下のWindowsのレジストリで取得することが可能だ。
\HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\BuildBranch
現在の20H1でこの値を見ると「vb_release」となっている。また、19H2のBuildBranchは、19H1_releaseのままになっている。開発上は、19H2は19H1の延長上にあり、まさにマイナーバージョンアップであることがわかる。
VBの意味についてはいろいろと"ウワサ"はあるものの、ハッキリとしたことはわからない。ただ、Windowsのカーネルなどを開発する「コア」チームは、Windows Azureの開発部門に取り込まれ、ここで開発したコアを使って、WindowsクライアントチームがWindows 10として開発するらしい。
そしてWindows Azureの開発部門は、開発コード名として元素名を周期律表に従って使っているという。VBについては、クロム(Chromium)となる予定だったが、Googleのプロジェクトと被るため、Vibraniumという仮想の元素名が採用されたという話だ。また、コアチームがAzureチームに入ったことで、Windows 10のリリースもAzure同様に6月と12月になるという話もある。だが、事前の予告もなく、リリーススケジュールを変更するのはどうかと思う。
それに現在Azureのリリースが6月と12月になっているのは、3月、9月に完成したWindowsコアから、Azureのリリースを開発している時間を考えれば不自然でもない。さて、本当のところはどうだろうか。