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「〇〇を食べれば、がんが治る」は誤り! 最新のがん治療が知られていない現実

がんの治療は、現状でどこまで進んでいるのだろうか。なかには「がんはもうすぐ不治の病ではなくなる」といった声もある。実際のところはどうなのか? 画期的な最新医療は富裕層しか治療を受けられないのではないか?

「二人に一人がガンになる」と言われる今、最先端治療はどこまで現実になっていて、「がんは撲滅される」というのは本当なのだろうか? これをすれば、これを食べればがんが治る! というような情報もはびこっているが、それは効果があることなのか?

そんながんについてのさまざまな疑問について、『二人に一人がガンになる 知っておきたい正しい知識と最新治療』(マイナビ新書)を上梓した医療ジャーナリストの村上和巳氏に聞いた。

◆過去15年ほどで多くの新薬が登場

――そもそも本書を執筆したきっかけはどのようなものだったのでしょう?

村上:実は私の場合、取材領域が医療、国際紛争・安全保障、災害・防災にまたがっています。このうち医療は、約四半世紀前に新卒で医療専門紙の記者になった頃から、時期による取材量の多寡はあるものの、最も長期間取材している領域です。

そのなかでも、がんは主要な取材テーマの一つでしたが、四半世紀前は記者の取材テーマとしてがんは傍流でした。当時は、がん治療がある意味停滞状態だったからです。ところが過去15年ほどで数多くの新薬が登場し、劇的に進歩しました。

例えば、2018年に京都大学の本庶佑教授がノーベル医学生理学賞を受賞した「免疫チェックポイント分子の研究」は、そのまま画期的な免疫チェックポイント阻害薬・オプジーボの登場につながっています。

そうした動きを追いながら私は記事を書いていたのですが、それが編集者の目に留まり、執筆の提案がありました。ただ、正直言うと、当初は引き受けることに若干戸惑いがありました。

◆主張が明確でわかりやすい本ほど売れているが、医学的には不正確

――その戸惑いとは何でしょうか。

村上:本来、出版社が医療に関する書籍を企画した場合、医師に執筆を依頼しますし、私もその方が望ましいと思っていました。だから、私が書いていいものかという不安があったのです。ただ、提案してくれた編集者は「ジャーナリストの立場から俯瞰した目で書いた本を出したい」という意向でした。

私自身、医師が執筆した一般向けのがんに関する書籍は数多く目を通しています。私の印象では、そうした書籍は、「主張が明快で分かりやすいが内容は医学的に不正確」「一般人にはやや難解なものの内容は正確」という2つに大別できます。

前者のような書籍を執筆する医師の意図は推測しかできませんが、ご自身が目立ちたいだけなのだろうと考えています。ところがこの不正確な内容の書籍ほど売れているのが現実です。私自身は後者の医師とほぼ同じ考えですので、こうした状況を長らく苦々しく思ってきました。

編集者からの提案を受けて、四半世紀にわたって執筆という仕事をしてきた経験から、正確な内容でより分かりやすい本を目指せないかと思いました。また、提案を受けた時期にちょっと珍妙な経験をしたことも執筆の動機になっています。

◆「〇〇を食べればがんが治る」ということはない

――珍妙な経験とは?

村上:実は提案を受けた時期は前述の本庶氏のノーベル賞受賞が決定した時期でした。その影響もあってか、日本国内では誰もが知っている有名企業の重役ばかりが集うクローズドな会で最新のがん治療についての講演を頼まれました。

講演は問題なく終了しましたが、終了後の会食の席でその重役の方々が「○○を食べるとがんが治るらしい」というような話を真面目にしているんです。

あらかじめ言っておくと、発症してしまったがんが、ある種の食品を食べることで消えることはありません。私は内心「それは違うんだけどな……」と思いつつも、錚々たる面々が相手ということもあり、何も言えずにほぼ黙ってしまいました。

本書のタイトルにもある「二人に一人ががんになる」時代なのに、一般人の間ではあまりにもがんに関する正確な情報が認知されていない現実を改めて思い知った瞬間でした。だからこそ、「蟷螂の斧」(とうろうのおの)かもしれないけど、私が書いてみようとも思ったわけです。

◆医師は、経験や勘に基づいてがんの治療をしているわけではない

――何が正確ながん情報であるかをまず知っておけば、不正確な情報に左右されにくいということですね。

村上:おっしゃる通りです。一般では少なからぬ人が、医師ががんの治療を行う際は、過去の経験や勘に基づいて治療していると思っています。しかし、これが違うのです。

とりわけがんのように時に命にかかわる病気の場合は、がんの専門家が集まる医学系学会が最新の研究成果を踏まえて、現在もっとも科学的な根拠があって優れている治療を体系的にまとめた「診療(治療)ガイドライン」を作成し、多くのがん専門医はこれに沿って治療を行います。ガイドラインに沿った治療は「標準治療」と呼ばれます。

がん三大治療と呼ばれる手術・放射線・抗がん剤も、どのような病状の時にどれを選択するかなど、ガイドラインでは事細かに記載しています。本の中ではその具体例なども挙げながら解説し、各治療法についても平易な言葉でまとめました。つまりこの一冊でがんとその治療の概略が理解できることを目指しています。