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アップルがいまイノベーションを起こしているのは環境対策だ

アップルは毎年、4月のアースデーに合わせて、環境問題への取り組みの進捗に関する報告書を発表しています。

これまでで大きなマイルストーンとなっていたのは、アップルのビジネス全体の「カーボンニュートラル」化でした。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出と吸収の差し引きをゼロにするということ。さらに、二酸化炭素の吸収が増えていけば、「カーボンネガティブ」や「カーボンマイナス」と言われています。

アップルは2030年までに、サプライチェーンに至るまで、アップル製品の製造すべてをカーボンニュートラルにしようとしています。さらに、ユーザーが製品を利用する部分まで含めて、カーボンフットプリントを算定し、おそらくそこまでもカーボンニュートラルを目指していくことになるでしょう。

●環境担当役員の存在

筆者は教育とともに、アップルの環境問題への取り組みに注目してきました。2013年に環境・政策・社会的イニシアティブ担当として副社長に就任したリサ・ジャクソン氏に毎年話を聞き、アップルの環境対策の進捗について議論をしてきました。

ジャクソン氏はオバマ政権で米国の環境保護庁長官を務めた黒人女性の化学者。そして世界最大のテクノロジー企業アップルの副社長に就任した、ビジネスリーダーでもあります。そもそも、副社長レベルで環境担当者を置いているテクノロジー企業が珍しく、製品やサービスを作っていく過程に環境対策が組み込まれていくことをあらわしていると言えます。

米国のトランプ政権を中心として、世界には地球温暖化をはじめとする気候変動と人間の活動や二酸化炭素排出量の増加との関係を疑う声は根強くあります。その一方で、そうした疑問はすでに、アクションを起こさない理由としては使えなくなりました。

2019年にスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが国連で演説した瞬間から、環境問題に向き合わない大人たち、国家、企業は、ブランドだけでなく、投資まで失うことになる、という機運が生まれたからです。その意味で、アップルはそうなる未来を、いくつかの理由で信じて、取り組みを進めてきました。

その推進役を務めてきたリサ・ジャクソン氏の元には、連日のように全社中から環境負荷を減らすアイディアがメールで集まってくるといい、「社内で最もクリエイティブな仕事」と何度か話しています。

これまで、ジョナサン・アイブ氏が率いてきた工業デザインチームにより、生活に必要なコンピュータの機能に対してあるべき姿を与えてきたアップル。アイブ氏の2019年の退社によって決定的になったのはクリエイティブの中心が環境対策に移ってきたということです。

●Apple Silicon移行も無関係ではない

環境対策は、単なるコストではありません。企業の本気の持続可能性を追求することであり、企業が存続する本能に直結しています。

そして技術革新で最も注目される領域に取り組むことで、企業の価値を高めていくことにつながります。これは、グレタ演説で投資家が環境対策を怠る企業を無視する機運が出来上がったことで、決定的になりました。

同時に、サプライヤーの間でも、激変が始まるかもしれません。

カーボンニュートラル化では、日本のイビデンやソニーセミコンダクターソリューションズ、セイコーアドバンスといった企業が賛同し、その取り組みを加速させようとしています。世界では71のサプライヤーがこれに賛同しています。しかしすべてのサプライヤーというわけではありません。

WWDC20ではMacプラットホームが、IntelチップからApple Siliconへ移行することが発表されましたが、前述のカーボンニュートラルを約束したサプライヤーの名前にIntelはなく、Apple Siliconを製造する台湾のTSMCは、きちんとリストに入っています。

もちろん、Apple Siliconの待機・低負荷時の省電力性はIntelチップを大きく上回っており、電池の容量などの電源周りの制限が存在するモバイルデバイスの高度化のための移行という見方も捨てるわけではありません。ただ、アップル製品に対して製品や組み立てを提供したければ、カーボンニュートラルを実現せよ、という強烈なメッセージとして受け取ったサプライヤーもいるのではないでしょうか。

●次なる目標は、素材

個人的にアップルの2020年モデルのiPhoneで注目しているのは、プロセッサ、カメラ、5G対応に加えて、外装の素材です。全ては難しいとしても、一部のモデルだけでも、100%再生アルミニウムや低炭素アルミニウムで作られていたら、称賛に値すると考えています。

アップルは年間2億台前後のiPhoneを作り続けています。1台あたりおよそ200g程度のスマートフォンを、リサイクル素材なしで作り続けていれば、2億台ぶんのiPhoneより大きな穴を地球に開け続けていることにほかなりません。そう言われれば、このビジネスに持続性がないことがすぐわかると思います。

そこでアップルは、MacBook Air、Mac mini、iPadなどの製品を100%再生アルミニウムの外装としました。また、iPhone、iPad、Mac、Apple Watchに使われる希土類元素(レアアース)は、100%リサイクルされて作られており、リサイクルされたレアアースのみを用いて作られたスマートフォンとしては初めてとなります。

アルミニウムのリサイクルが重要な点は、その精錬に二酸化炭素の大きな排出が伴うからです。そこで昨年アップルは、米国とカナダの大手アルミニウムメーカーとともに、酸素を排出するアルミ製錬技術の実用化に取り組み、MacBook Pro 16インチ向けの製造を開始したことも明らかにしました。

その低炭素アルミニウムがiPhoneにも活用されるなら、iPhone製造に関わるカーボンフットプリントに大きく影響を与えることになるでしょう。

アップルで最もクリエイティブな現場こそ環境対策だというリサ・ジャクソン氏の言葉を今一度思い出しながら、環境進捗報告書を見ると、その言葉の意味とエキサイティングさをより深く感じることができるのではないでしょうか。

アップルですら、地球に対して、まだまだできることがたくさんあり、これに一挙に取り組んでいるのです。筆者が「アップルの環境対策がイノベーションの中心であり、最も注目すべき」と考えている理由でもあります。