既存モデルからの「大進化」
アップルが米国時間の4月20日に開催したイベントで発表し、まもなく発売される新製品である「iMac」と「iPad Pro 12.9インチモデル」の実機に触れる機会を得た。
手前が12.9インチモデルのiPad Proと新たに発売されたホワイトのMagic Keyboard、後方が新iMac(グリーン)
今回発売される2製品は、どちらもアップルのオリジナルプロセッサー「M1」を搭載している。だが、製品としての狙いやサイズが異なるため、両者の製品特性には当然、大きな違いがある。そして、既存のモデルからの進化もまた、同様に大きい。
そうした変化は、具体的にどういう部分に現れているのか?
5月後半が予定される発売に先駆けて、両機のレビューをお届けするので、購入を検討している人にはぜひ参考にしてほしい。
iPad並みの薄さを実現
まずは「iMac」から見ていこう。
iMacは「ディスプレイ一体型Mac」のブランドとして、1998年の登場以来、長い歴史をもつシリーズだ。初期は「ブラウン管+透明なボディ」がアイコンだったが、液晶が主軸になってからは薄型ボディとなり、現在にいたっている。今回の新モデルも、液晶を活かした薄型であることが特徴だ。
特に、久々に幅広いカラーバリエーションを採用したことに注目が集まっている。
筆者が今回、試用したのは「グリーン」。アルミボディを緑に染めた、非常に見栄えのするデザインとなっている。フロントベゼルはパステル的な淡い色である一方、ボディ本体は濃い色に染められている。
本体の背面は濃いグリーンで、スタンドは薄いグリーンと、部位によって色味が異なる
一方で、薄さ──正確にいえば「薄さの均一さ」は、従来モデルとは大きく異なる。まるでタブレットのようだ。この薄さは、プロセッサーが「M1」へと変更されて省電力性能が高くなり、放熱のための機構が小さくコンパクトなものになったことで実現したものだ。
iMacとiPad Proの厚みを比較してみた。iMacが据え置き型であることを考えると、体感的にはほとんど変わらない薄さを実現している
iMacに搭載されているM1は、MacBook Airなどの既存機種に使われているものとまったく同じであるようだ。パフォーマンスについても差は見られない。
もともと非常に快適な性能を誇っているM1だが、デスクトップに使われても問題はなく、十分な性能だと感じる。ファンの音などがまったく聞こえてこないのも、ノート型と同様だ。
白が新iMac、黒がMacBook Proのベンチマーク結果。同等といって差し支えない
「大画面」という正義
ノート型と異なるのは、なんといっても「画面の大きさ」だ。
24型・4.5Kのディスプレイは広く、作業がしやすい。ビデオ会議の画面とウェブを開きつつ、同時にメモをとる、といった使い方をする場合でも、1画面の中に複数のウインドウを並べて作業できるだけの十分な面積がある。
iMacでの作業画面をキャプチャしてみた。ビデオ会議からウェブまで、1つの画面に複数のウインドウを並べても快適なのが、24インチという画面サイズのメリットだ
持ち歩くことができない代わりに大きな画面を快適な状態で使えるのが、iMacの最大の価値といっていい。
とはいえ、単に大きな画面を使いたいだけなら、外付けディスプレイでもかまわない。「iMacならではの価値」は、どこにあるのだろう?
実機に触れてみて感じたポイントが、3つある。
映像体験を格上げする「音響」システム
1つめはデザイン。これは説明不要だろう。
2つめは音響だ。
iMacには、かなり高音質なスピーカーが搭載されている。本体の下方向に、左右3対ずつ備えられているのだが、ここから発される音がいい。24インチという画面の大きさを活かして、4Kでの映画配信を楽しむにも十分な品質を備えている。
スピーカーを別途、用意する場合には、それなりに高価なシステムを購入しなければ、これと同等の満足度は得られないだろう。それがコンパクトな、1セットのハードウエアで体験できるのが、「iMacならではの価値」の1つだ。
M1版iMac「最大の価値」
最後の3つめのポイントは、「付属機器」だ。
新iMacの上位モデルに付属するキーボードには、指紋認証用の「Touch ID」が搭載されている。このキーボードは、本体と同じカラーのものが添付される。Magic MouseやMagic Trackpadも同様に、本体色に合わせたものになっており、多彩なカラーバリエーションを楽しむための配慮が細部まで行き届いているといえるだろう。
付属機器のカラーバリエーションは当面、iMac本体とのセットでしか供給されない。
新iMacに付属するキーボードやマウス。いずれも本体に合わせたカラーになっている
また、電源はギガビットイーサネットを内蔵したものになっており、有線でのインターネットは電源アダプター側につなぐかたちをとっている。その結果、ケーブルだらけになりがちなiMac本体の背後がすっきりし、デザインの美しさが際立つようになっている。
上位モデルの場合、イーサネットコネクタは電源のほうについていて、電力とともに本体に伝えられる
逆にいえば、デザイン面に関する部分こそが、今回のiMac最大の利点といえるだろう。前出のように、性能面では他のM1搭載Macとほとんど差がない。「iMacならではのかたちで使う」ことこそが、M1版iMacの価値であるといえそうだ。
「Touch ID」のマルチな使い方
ところで、Touch IDを搭載したキーボードには、ユーザー個人のセキュリティを守る以外に、もう1つの利点がある。
macOSには、複数の利用者が個々の設定を1台のMacに保存しておき、それぞれに認証をおこないつつワンタッチで切り替える「ファストユーザスイッチ」という機能が備わっている。この機能は、Touch IDを連動させることで「登録された指紋を用いて、『いま指で触れている人』のアカウントへと切り替える」ことができるのだ。
上位機種で標準付属となるキーボードには、指紋センサーの「Touch ID」がついており、個人認証だけでなく、ユーザー切り替えにも使うことができる
たとえば、一家で1台のiMacを共有しているような場合に、Touch IDを使うことで家族一人ひとりの設定に自在に切り替えて使えるわけだ。こうした使い方は、パーソナルな機器であるノート型より、共用されることの多いデスクトップに向いており、Touch IDを搭載したiMacのもつ大きなメリットと考えることができる。
iMacはデザインが大幅に変更されており、そのこと自体が大きな価値を生んでいる。では、新iPad Proについてはどうか。
じつは、「まったく逆のこと」が起こっているのだ。
外見は不変、中身が大幅進化
新iPad Proのデザインは、旧モデルとほとんど変わらない。試用した12.9インチモデルについては、ほんの少し(0.5ミリ)厚くなっているものの、見た目で判別するのは難しいレベルだ。