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プラットフォームに進化するZoomからユニコーンが誕生するかもしれない

Coralでは投資判断のポイントの1つとして「タイミング」を重視しています。具体的には、いわゆる「変曲点」と重なるタイミングであるかどうかを見ています。

変曲点というのは、様々な新しい機会に追い風をもたらすパラダイムシフトや、シンプルに新しい機会が生まれる局面などのことですが、例えば規制の見直しや、革新的な技術の誕生、なんらかの普及状況の変化、常識の変化などが挙げられます。

変曲点の可能性として個人的に最近注目しているのは、Zoomの最先端プラットフォームとしてのポテンシャルです。特に、同社が現在注力中のZoom SDKやApp Marketplaceが鍵となると予想しています。

SDKにより、Zoomの信頼性の高いビデオや音声機能を組み込み、新しくアプリを開発することができます。開発者は自分たちが作った外部アプリケーションに自由にZoomの機能を埋め込み、アプリの機能向上に活用できるのです。さらに、Zoomビデオであることがユーザーにわからないようにユーザーインターフェースをカスタマイズすることも可能です。

一方で、MarketplaceはZoom上で使えるアプリを誰でも開発できるオープンプラットフォームで、個々のニーズに合わせてより快適な体験を実現できるというものです。

この2つの新しいツールにより、将来的にZoomがインターネット上のコミュニケーションに欠かせないプラットフォームになる可能性があると考えています。

このような「プラットフォームの変曲点」は過去にも何度もありました。ラジオやケーブルテレビ、ブロードバンドインターネット、スマートフォンの登場は、プラットフォームのシフトを起こし、その度に私たちの生き方や働き方を変え、数千億円規模の産業を創出してきました。

あのApp Storeも、サービスが2008年に始まったばかりの頃はまだアプリの数は500程度で、iPhoneのユーザーも1000万人ほどしかいなかったのです。

それに比べてZoomはどうかというと、新型コロナウイルスのパンデミックが始まってからわずか数カ月で、1日あたりのミーティング利用者数が1000万人から3億人へと急増しています。圧倒的シェアを獲得し、すでに多くの人にとって仕事や学校だけではなく運動や娯楽、友達との交流など、日常の多くの場面で必要なツールになっているのです。

そして今回の同社のプラットフォーム化への取り組みは、Zoomのインフラと顧客層へのアクセスを可能にすることで膨大な数の新しい機会をもたらし、新しくてより快適なユーザーエクスペリエンスの実現につながるかもしれません。

また、単純にアプリ配布チャネルとしても、Zoomの成長に「便乗」しようと考えているスタートアップにとっては特に大きな利点になり得ます。

Marketplaceを使えば、何千万人もの潜在的な新規顧客にアプリを見つけてもらい、提供できる機会が無料で得られます。

しかも、現時点で登録されているアプリ数は1200個程度と、Zoomの総ユーザー数と比べるとまだごくわずかです。一方で、AppleのApp StoreやGoogle Playストアではそれぞれ数百万ものアプリが競い合っています。つまり、Zoomのプラットフォームを使っていち早くプロダクトを展開することができれば、競争がないことから大きな成長を獲得できるチャンスがあるということです。

実際、すでに多くのスタートアップがSDKやMarketplace、もしくは両方を活用して事業を展開しています。

例えば、Classというアプリでは、Zoomの機能を利用して本当に教室の中にいるような授業体験を再現しています。教師はこのアプリを使うことで出席を取り、宿題を出し、小テストを実施し、採点や個人面談をしたりできるのです。

また、Docketというミーティング特化型のワークスペースアプリでは、アジェンダの作成や決定事項の記録、アクションアイテムのトラッキングなどを共同で行うことができます。

Lumaというクリエイター向けのショップアプリは、Zoomを使ってイベントの企画と開催を行い、イベントやニュースレター、コミュニティなどにそれぞれ適した分析ツールを用いて参加者の管理もできるというワンストップ・ソリューションを提供しています。

コロナ禍により、Zoomは私たちにとって仕事でもプライベートでも欠かせないツールになりました。Zoomのおかげで世界中の何億人もの人たちが今でも繋がっていられることを考えると、もはや社会のライフラインの1つだと言っていいかもしれません。

そしてこのままZoomのインフラや配布チャネルがますます一般に開放されるようになれば、その波に乗った企業の中から、大企業に成長するところが出てくる可能性があるでしょう。

App Storeの草創期に最初に成功を収めたプレイヤーも、WhatsAppやInstagramなど、今では誰もが知るアプリばかりです。Zoomがもたらすであろうこの新しい「プラットフォームの変曲点」では、今後どのようなプレイヤーが生まれ、勝ち抜いていくのか、今後の展開が楽しみです。