乳児の突然死のリスクは日齢によって異なる?
乳幼児突然死症候群(SIDS)などの予期せぬ乳幼児突然死(SUID)を解明する上で、SUIDが発生したときの乳児の年齢が手掛かりになる可能性があることが、米シアトル小児研究所のTatiana Anderson氏らが実施した研究で示された。
この研究では、SUIDで死亡した乳児は、生後1週間以内に死亡した児と生後1週間以降に死亡した児の2つのグループに分けられることが明らかになったという。詳細は「Pediatrics」12月9日オンライン版に発表された。
今回の研究は、Microsoft社と共同してコンピューターモデリングを用いて実施された。
コンピューターモデルは、米疾病対策センター(CDC)の2003~2013年の出生コホートデータベース(Birth Cohort Linked Birth/Infant Death Data Set)を基に開発された。
全体として4100万件以上の出生データと3万7,624件のSUIDのデータがモデルに組み入れられた。
なお、SUIDは、国際疾病分類第10版(ICD-10)の3つの死因カテゴリー(SIDS、その他の診断名不明確及び原因不明の死亡、ベッド内での不慮の窒息及び絞首)のいずれかに該当する、1歳未満の乳幼児に生じた突然死を指す。
その結果、早期新生児期(0~6日)に生じたSUIDとそれ以後(7~364日)の乳幼児期に生じたSUIDでは、SUIDの要因が大きく異なることが明らかになった。
まず、両者では、3つのICD-10の各カテゴリーに該当する割合が有意に異なっており、「その他の診断名不明確及び原因不明の死亡」「SIDS」に分類されたSUIDの割合は、0~6日に生じたSUIDではそれぞれ67%、24%であったのに対し、それ以後に生じたSUIDではそれぞれ28%、55%であった。
また、通常、SIDSのリスク因子とされている、母親が若い、母親が未婚、出生順位、出生体重などは、出生後1週間以内に乳児が死亡した要因としては考えにくいことが示された。
既知のSUIDのリスク因子である母親の喫煙についても、生後48時間以内に生じた突然死のリスク因子ではないことが示唆された。
だからといって、妊娠中に喫煙しても問題ないというわけではない。Anderson氏は、「喫煙がSUIDの修正可能な最大のリスク因子であることに変わりはない。過去の研究では、SUIDによる死亡例の22%が喫煙に起因していたと推定されている」と述べている。
今回の研究結果についてAnderson氏らは、「SUIDが起こる時期によって根本原因が異なる可能性があることが分かった。今回得られた情報だけでは親に対するなんらかの推奨を示すことはできないが、これまでの研究結果に基づけば、SUIDのリスクを低減させるためには妊娠中に喫煙しないこと、乳児は仰向けに寝かせることが重要だ」と強調している
この研究論文の付随論評を執筆した小児の突然死を専門とする米ボストン小児病院のRichard Goldstein氏は、「過去には入手が難しかったビッグデータから真実が分かるようになってきた」と説明。
ただし、現時点では発生した日齢に応じてSUIDを2つのグループに分類することについては慎重な姿勢を示し、「原因が異なる2つのグループが存在すると考えるのは時期尚早であり、さらなる研究で検証する必要がある」と指摘している。
一方、多くの専門家はSUIDには類似した原因や共通の脆弱性が背景にあるのではないかとの見方を示している。
例えば、SUIDに至るような乳児は、酸素を十分吸い込めていないときに眠りから目覚めさせるような自律神経系の調整がうまく働いていない可能性がある。
このような脆弱性があると、死産になる場合もあれば、生後4カ月時にSUIDをもたらすことも考えられるという。(HealthDay News2019年12月9日)
2020-01-01 16:55:28