自動運転車の安全性は、大規模な商用展開に耐え得る水準にはまだ至っていない。メーカー各社は安全性を高めるため、何層もの対策を講じている。その中の1社である「オーロラ(Aurora)」は、リモートモニターを使った、航空運航管理に似たシステムを開発した。
カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くオーロラは、グーグルやテスラ、ウーバーで自動運転車の開発に携わった3名のベテラン技術者によって設立され、株主にはアマゾンが名を連ねる。
同社は、「テレアシスト」と呼ばれるシステムを開発し、自動運転車が様々な路面状況に対応できるよう管理している。このシステムでは、訓練を受けた技術者が車両のセンサーを遠隔操作し、異常事態が発生した際に指示を出すことができる。乗客が遠方の技術者に支援を求める場合には、車両を道路脇に安全に停車させてから連絡をする。
「ファントム・オート(Phantom Auto)」や自動運転トラックのスタートアップ「Starsky Robotics」も遠隔操作システムをテストしているが、オーロラの共同創業者兼チーフ・プロダクト・オフィサーであるSterling Andersonによると、同社のテレアシストは他社と大きく異なるという。
「我々の場合、物流車両に乗車しているユーザーがリクエストしたり、車両システムが支援を求めた場合に遠方の技術者に対してアラートが発せられる。例えば、”いつもと状況が違うように感じるので、どのように対応するべきかアドバイスをして下さい”といったようにだ」とAndersonは話す。
オーロラを指揮するのは、グーグルの自動運転車開発プロジェクトのリーダーを務めたクリス・アームスン(Chris Urmson)だ。同社は2018年1月にステルスモードから脱して以降、これまでに7億ドル(約767億円)を調達している。
5億3000万ドルを調達したシリーズBラウンドには、アマゾンが参加している。オーロラは配達用ワゴン車やトラック、乗用車などを使って自動運転技術のテストを行っている。Andersonは、アマゾンと自動運転車の開発で協業しているかについてはコメントしなかった。
競合にはない「テレアシスト」の強み
遠隔操作は、これまで宇宙探査ロケットやドローンに用いられてきたが、自動運転車に適用したケースは少なかった。グーグルが2016年に立ち上げた自動運転会社「ウェイモ(Waymo)」も、アリゾナ州フェニックスの郊外にある施設で人間の監視員が自律走行するミニバンの管理やアシストを行っているが、遠隔操作は行っていない。
テスラのイーロン・マスクは、競合に先んじて自動運転車を開発して業界のリーダーになると宣言しており、オートパイロットシステムで走行する車両から多くのデータを収集している。そのテスラも、技術者が遠隔から支援するシステムは採用していない模様だ。
Andersonはテスラ時代にオートパイロットの設計に携わった経験を持つが、同社のアプローチについてのコメントは拒否した。
Andersonによると、セルラーネットワークの通信遅延や、遠隔での状況認識の難しさなどから、車両を安全に操作するには多くの課題を伴うという。それでも、車両に搭載されたソフトウェアが進歩するまでの間は、テレアシストのようなシステムを導入することによって、自動運転車の実装を早期に実現することが可能になるだろう。
「我々は、”安全に、迅速に、広範に”というアプローチで自動運転車の実現に取り組んでいる。我々のテレアシスト・システムを用いることで、早く、安全に自動運転車を導入し、社会に変革をもたらすことができる。ただし、システムが正常に機能することを統計的に立証できるまで、慎重に準備を進めたい」とAndersonは語った。
2020-01-01 19:26:27