※この記事は2019年2月7日に公開された記事の再掲載です。
ネット五大老GAFAM断ち、第3週はGoogleです。
3週目:Google
「Don't be evil」が消えたGoogle
「Don't be evil(悪をなさない)」というモットーはもともと、本人に無断で行動を追跡したりするドットコム時代のネットの王様商売への当てつけから生まれた社是です。創業以来ずっと行動規範の巻頭に記され、未来永劫消えることのないウェブの良心、矜持、灯台と思われていましたが、昨年5月、親会社Alphabetの行動規範からごっそり消え、「20年もたなかったね」と言われています。
3ワードの呪縛が解けた後のGoogleは何かが吹っ切れたかのように大胆です。
誰も使わないSNSとして一世を風靡したGoogle+(10月に閉鎖発表)は、利用最大50万人のメールアドレス、職業、性別、年齢がネットのプログラミングUI経由で社外のアプリ438社にダダ漏れになる穴があることが発覚したにもかかわらず、「ザッカーバーグみたいに国会に呼ばれる」、「どうせ誰も見てないし」と自らに言い聞かせ、こっそり塞いで揉み消していたことが後日発覚しています。
中国市場向けに検閲付き検索エンジンの開発に乗り出したり、国防総省のAI開発に技術協力する契約に抗議して社員が集団辞任したり、セクハラ辞任の某幹部のゴールデンパラシュートに抗議して社員2万人がウォークしたり、携帯の履歴をOFFにしても追跡したり、MasterCardとこっそりタッグ組んでカード利用履歴を大枚はたいて買って広告に使ったり(いま翻訳して初めて知った。いくらAmazonにリテール握られて焦ってるからって、実店舗の買い物履歴を裏で買うなんて…ひゃ~)。
それも今週でさようなら~♬
エンジニアのDhruv Mehrotra君が作ってくれたVPNを使えば、携帯もPCもスマート機器も、Googleの息のかかった8,699,648件のIPアドレスとは一切データのやりとりはなし!です。
海馬がGoogleのような拒否反応
しかしこれは正直、かなり堪えました。使えるぶん、抜かれるデータも多いというトレードオフですよね。いつもあまりにも頼りすぎていて「Google断ち」と考えるだけでパニック障害ですよ。脳みそ開けると海馬がGoogleになっているのかもしれない...。
・1日の予定チェックは、Googleカレンダー
・ネットは、Google Chrome
・メールは仕事もプライベートも、Gmail
・検索は、Google
・記事の下書き、半分書きかけのゾンビ小説、家計簿は、Google Docs
・地図検索は、Google Maps
これだけの依存度なのにGoogle断ちって、実は2時間もあれば終わるんです。Dhruv君のVPNで完全断ちなので、代わりのサービスを探す作業ですね。
まずブラウザのブクマは全部Firefoxに移植。デフォの検索エンジンもDuckDuckGoに変えました。GoogleはAppleに年間90億ドル(約1兆円弱)を払ってデフォにしてもらってるらしい…ちょっともったいないけど。DuckDuckGoも広告ベースですが検索の追跡はしていません。地図はApple MapsとMapQuestのアプリを入れました。Apple Mapも昔ほど悪くないって話だし、MapQuestは90年代以来です。まだ生きてたんですね~。そういえば昔は地図印刷して持ち歩いていたなあ~なつかし~。
カレンダーはAppleにして、メールアドレスはProtonMail(仕事用)とRiseup.net(個人用)で取得。Gmailには自動転送を設定しました。指が勝手にGoogleとGmailとGoogle Mapsに寄っていくので、iPhoneにフォルダーを用意して全部収監しました。自分はこの3つとInstagram、Words With Friendsがヘビロテ5大アプリなので…。
Gmailアカウントを閉鎖するのはやめました。メアドを乗っ取られるのが心配(記事公開後グーグルの人から「Gmailはメアドリサイクルしないからその心配はない」って連絡がきたので杞憂だった)だし、文書も連絡先もログもためこみ過ぎてて迂闊には消せません。こんなに山のようにデータがあれば、返信候補がピタッと出てくるGmailの機能も、できるの当たり前だよね。
Googleを断つとネットが90年代のように遅くなる
さて問題はGoogle以外の「Googleの息のかかったサービス」です。これは表からはわからない。だから、やってみるまで影響はまったく読めない、という手探りでした。
で、実際やってみてどうなったか。インターネットそのものがモサ~ッと遅くなったんです!!!
(動画で見られます。2:55~)初日。Firefoxでタブを開くと、Googleのサーバーにピン送ったきり読み込みが止まってしまうタブが多いのなんの。AirbnbもGoogleがないと写真が1枚も表示されません。NY TimesはGoogleアナリティクス、広告、決済、ニュース、Double-Clickトラッカーなどなど読み込もうとして失敗して止まります。10:00AMを回る頃にはGoogleサーバー呼び出し回数がすでに1万回を超えてました。
「~を読み込もうとしています」っていうメッセージが次から次へと出てきて、90年代に初めてインターネット使ったときのこと思い出しましたよ。ダイヤルアップ接続で。サイトが開くまで本読んで待ってたなーって。とにかくどのサイトも自社コンテンツより先にGoogle様のトラッカー、広告、アナリティクスという3種の神器を召喚しないと、何も表示されないんですね。
ほんの数時間使っただけで、前の週のFacebook呼び出し回数15,000回/週を軽く超えてしまって、けっきょく1週間で100,000回ちょっとでした。Amazonの293,000回に比べたら少ないけど。Googleはとにかくトラッカー、広告、情報で呼び出されまくりであることがわかりました。
フォント自体が読み込めない
Google断ちの週はずっとどのサイトも遅くて、これはGoogle Fontsを使ってるサイトが多いこととも関連があることがわかりました。これまではGoogleのフォント(無料のオープンソースとして2010年にリリース)をGoogleのサーバーからダウンロードしてブラウザにキャッシュして、それでサイトを表示してたんですよ。パソコンに保存されていないフォントも素早く呼び出せるのが利点なんですけど、Googleにアクセスできないとそれも使えません。
これだけ追跡魔なGoogle。まさかフォントもトラッキングで使ってないよね…と不安になりましたが、それはないみたい。「いろいろやばいことやってるGoogleも、これだけはクリーン」とDhruv君は言ってました。
車も呼べない
朝は早めに家を出ました。でもUberも使えないし、Lyftもだめです。どっちもGoogle Mapsをカーナビに使ってるので、 目的地が打ち込めないの! タクシーも拾えず、けっきょくバスに乗って、会議に遅刻してしまいました。
地図はほぼGoogle独占です。各種調査でも全世界の消費者の最大77%がナビでGoogle Maps使ってるらしい…。サイトやアプリのナビでGoogle MapsのAPIを導入している企業も全体の9割近くにのぼります(iDataLabs、Stackshare、BuiltWith調べ)。
2020-01-02 19:28:23