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インフルエンザ・ワクチンを腫瘍に注射することで、がん細胞を減らすことができるとする研究結果(米研究)

数年前、ウイルスを利用してがんを殺す方法が話題になったことがある。がん細胞をウイルスに感染させ増殖させることでがん細胞を破壊し、また次のターゲットを探すという方法だ。

がん細胞にしか感染しないウイルスを作り出すことができれば、その細胞だけを選択的に殺すことが可能になるだろう。

しかし、ことはそう単純ではなかった。免疫系がウイルスに反応して、せっかくの治療効果を抑制してしまうのだ。しかも腫瘍を殺す効果の一部は、ウイルスというよりも、免疫系の働きによるものであるらしかった。

そこで注目されたのが、ウイルスではなく腫瘍で生じた免疫反応の方だ。インフルエンザのワクチンを腫瘍に注射して免疫反応を起こし、それによって殺してしまおうというのだ。

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攻撃抑制命令から免疫細胞を解き放つ

まず知っておかねばならないのは、免疫細胞で構成される免疫系は常に体全体をカバーしているわけではないということだ。

そのかわりに免疫細胞は感染が起きた部位で組織され、互いに連絡を取りながら、標的に対して攻撃をくわえたり、健康な細胞が巻き添えを食わないよう攻撃を調整したりしている。

この視点から見ると、免疫系ががん細胞を駆逐できない理由は、ただそれらが健康な細胞と似ているからに尽きる。

健康な細胞を傷つけないように攻撃を抑制する信号ネットワークのおかげで、がん細胞は攻撃を免れているのだ。

最近では、こうした免疫抑制機能を阻害する薬が開発されている。これは本庶佑氏らによって免疫細胞の攻撃を抑制するシステムが発見されたことで可能になった。同氏はこの業績が評価されて2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

インフルエンザに感染した肺ガン患者は死亡率が低い

だが、こうした薬は誰にでもに効くわけではなかった。そこで腫瘍で免疫系を活性化させる別の方法が模索されることになった。

そのためのひとつの方法として考えられたのが、単純に免疫系をブーストするやり方だ。先述した腫瘍に感染しようとするウイルスへの免疫反応からは、これが起きているらしいことが窺える。

実際、今回の研究グループが、3万人の肺ガン患者の中からインフルエンザになった人を探してみたところ、意外な事実が明らかになっている。

肺ガンとインフルエンザのダブルパンチはさぞかし辛いだろうと思うかもしれないが、なんとそうした患者はインフルエンザにかからなかった患者よりも死亡率が低かったのだ。

インフルエンザ・ウイルスがマウスのがん細胞の成長を抑制

同研究グループはさらに詳しく調査するために、マウスの肺にメラノーマ細胞を移植し、腫瘍を作るという実験を行った。

じつはメラノーマ細胞にはインフルエンザ・ウイルスが感染しない。そのため、腫瘍に対する免疫反応をブーストするために、腫瘍細胞自体の感染が必要なのかどうかも知ることができる。

結果、どうやら感染は必要ないらしいことが分かった。インフルエンザ・ウイルスに感染した肺では腫瘍形成が抑制され、さらにその効果は感染した部位に限られたものではなく、感染していない肺でも抑制効果が確認された。

また肺に乳がん細胞を移植した場合でも同様の効果が確認されている。

インフルエンザ・ワクチンの有用性

免疫系が刺激を受けるとそれ全体が活性化し、免疫細胞に腫瘍への攻撃を躊躇させてしまうリミッターが解除される。そこで研究グループが思いついたのは、わざわざウイルスに感染させてやる必要すらないのではということだ。

実際、熱処理して不活性化したインフルエンザ・ウイルスで試してみると、なんと元気なウイルスに感染したときと同様に効果があることが分かったのだ。

このことは、まったく予想外だったというわけでもない。というのも、不活性化ウイルスはワクチンとしてよく利用されており、免疫系を刺激することが明らかだったからだ。

こうなると頭に浮かぶ次の疑問は、ではワクチンではどうか? だ。

研究グループは今年のインフルエンザ・ワクチンを入手して、これをマウスの腫瘍に注射してみた。すると腫瘍の成長が遅くなったばかりか、インフルエンザに対しての免疫までつくという一石二鳥の結果が得られた。

免疫系はがんとの戦いにおける強力な武器となりうる

妙なことに、インフルエンザのワクチンならどれでも有効なわけではないらしい。

ワクチンの中には、予防効果を持続させるために、免疫系の記憶を強化する化学物質が含まれているものがある。こうしたワクチンの場合、腫瘍の成長を抑制するような免疫系への刺激は生じなかった。

このことは免疫刺激の問題ではなく、それよりも攻撃をすぐに引き起こしているかが関係しているようだ。

今後さらなる研究が必要となるだろう。まず免疫刺激をどこで起こすべきかきちんと把握しなければならない。片方の肺を刺激すると、両方の肺で腫瘍抑制効果が得られたが、筋肉に注射したのではダメだった。

また肺の外側でひどい感染があった場合、免疫細胞の戦力がそちらに割かれてしまい、腫瘍の成長がかえって速まることも分かっている。

しかし、こうした研究は、免疫系ががんとの戦いにおける強力な武器であるという科学者の一般的な意見と一致しているだろう。

この研究は『PNAS』(12月30日付)に掲載された。