米食品医薬品局(FDA)は、遺伝子操作された大豆レグヘモグロビンの安全性について、非営利組織「食品安全センター」(Center for Food Safety:CFS)の異議を却下する通告を出した。
大豆レグヘモグロビンをビーガン向けの「インポッシブル・バーガー」で使っているインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)は、すでに食料品店やレストランで同製品を販売している。
大豆レグヘモグロビンとは?
インポッシブル・フーズによれば、大豆レグヘモグロビン(soy leghemoglobin)は、レギューム(legume、マメ科植物)ヘモグロビンの略で、ヘムを含むタンパク質だという。ヘムは、植物や動物に見られる鉄を含む分子で、肉独特の色や質感、味を生み出している。
インポッシブル・フーズは以下のように述べている。「インポッシブル・バーガーには、大豆由来のヘムが使われている。このヘムは動物由来のものとまったく同じで、インポッシブル・バーガーに肉独特の風味を与えている」
インポッシブル・バーガーには、ふたつの遺伝子操作された成分が使われており、大豆レグヘモグロビンはそのうちのひとつだ(もうひとつは大豆タンパク質)。インポッシブル・フーズはこの成分をつくるにあたり、大豆レグヘモグロビンを生成する遺伝子を持つように操作した酵母を使っている。
プロセスを簡単に説明すると、大豆レグヘモグロビンをつくるDNAを酵母に挿入し、この酵母を発酵させて培養。大豆レグヘモグロビンを分離して、バーガーに加えるという手順だ。
インポッシブル・フーズによれば、同社のプロセスは、実際に大豆を収穫して根粒からヘムを取り出す必要がないため、より持続可能性が高いという。また、「ラットに摂取させる厳密な研究をはじめ、徹底的な試験」を実施したが、大豆レグヘモグロビンの摂取に伴う副作用はいっさい見られなかったとも述べている。
食品安全センターの異議
FDAは、遺伝子操作された大豆レグヘモグロビン(別名GMOヘム)を色素添加物として認可したが、公益と環境の保護を目的とする非営利組織である食品安全センター(CFS)は、その判断に異議を申し立てていた。また、CFSが最初に送った質問にFDAが返答する前から、インポッシブル・フーズが製品を食料品店で販売していることにも抗議していた。
CFSは以下のように述べている。「CFSは以下の理由から、GMO『ヘム』を新たな色素添加物として認可することに異議を申し立てる。
(1)FDAは、原産物や、遺伝子操作された酵母の試験を求めなかった。
(2)FDAの認可により、さらなる試験をおこなわずに、新たな細胞由来製品でGMO『ヘム』を使うことが可能になる。
(3)製品に適切な表示がなされていない。
(4)新たな色素添加物の認可に適用される『説得力のある証拠』の基準をFDAが満たしていない」
CFSの指摘によれば、遺伝子操作された大豆レグヘモグロビンの安全性を裏づける研究の論文著者には、インポッシブル・フーズに所属する研究者が含まれており、これは利益相反にあたるという。
FDAの反応
FDAはCFSの異議に対して、大豆レグヘモグロビンを色素添加物として使用しても安全な成分と見なし、色素添加物証明書免除リストに追加するとした判断を改めて是認した。
FDAの最終規則文書では、インポッシブル・フーズが大豆レグヘモグロビンの安全性の問題に取り組んでいること、酵母タンパク質は主要なアレルゲンではないこと、FDAによるさらなる調査は必要ないことが述べられている。これによりインポッシブル・フーズは、インポッシブル・バーガーの販売を続けられることになる。
2020-01-05 04:24:42