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新型コロナウイルスは自覚症状がない感染者によって感染が拡大した可能性が示唆される

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に感染が拡大しており、世界保健機関(WHO)によって、約11年ぶりにパンデミック(世界的流行)であると認定されました。急速な感染拡大の原因について、自覚症状がない感染者によって感染が急速に拡大した可能性があることを、インペリアル・カレッジ・ロンドンMRCセンターの研究員であるリ・ルイユン氏が報告しています。

新型コロナウイルス感染症において、軽度、またはほとんど症状が現れておらず、自覚症状がない状態では、マスクを着用していなかったり、むやみに外出をしたりする感染者によって、多くのウイルスがまき散らされている可能性があります。自覚症状のない感染者がいつ頃から増加したのかを推定するために、ルイユン氏は武漢への移動制限が行われた2020年1月23日以前の、中国における自覚症状がない感染者の数を推定しました。

ルイユン氏による新型コロナウイルスの感染拡大のシミュレーションは、都市間を移動する人による感染の拡大が考慮されています。都市間を移動する人の数は2018年の春節における旅行者数(総勢約29億7000万人)を基にしたデータから算出されています。

以下のグラフは、中国全土(A)、武漢市(B)、湖北省(C)の2020年1月10日~2020年1月23日における感染者数増加のシミュレーションです。縦軸は1日ごとの感染者数、横軸は2020年1月の日付を表し、青いグラフは自覚症状がない感染者を含めた全体の感染者数を表しています。青いグラフの縦長のボックスは四分位範囲、ボックス中の横線は中央値を示しています。赤い×印は、日別に実際に報告された感染者数です。グラフから、2020年1月11日頃から、報告された感染者よりも、自覚症状がない感染者を含めた感染者数が多かった可能性が示唆されています。

なお、感染者数増加の算出にはアンサンブルカルマンフィルタが用いられ、300回のシミュレーションから導き出された結果がグラフ化されています。

シミュレーションの結果、2020年1月10日~1月23日の期間に、自覚症状がないケースも含めて、武漢市では1万3118人、中国全土では1万6829人の感染者がいたと推定されています。この結果から、ルイユン氏は「自覚症状がない感染者がもっと少なければ、つまり、もっと早く『自覚症状がない感染者』を発見できていれば、2020年1月23日までに報告された感染者は、中国全土で約78%、武漢市では約66%減少していただろう」と推定しています。

また、中国全土で、新型コロナウイルスに感染してから診断されるまでに平均6.6日の遅れがあったことも明らかになっています。