新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴って、市中はもちろん、医療従事者の間でもマスク不足が深刻な問題となるなか、厚生労働省は7日、感染リスクを低減させる効果がある「N95マスクの供給の見通しが立たない」と認めたうえで、「使い捨てしないで」と全国の医療機関に通知を出した。
厚労省の感染症対策本部は今月7日、全国の都道府県や保健所に向けて、医療機関の院内感染に関する対応マニュアルを通達した。
使い捨てが望ましいから一転
厚労省の資料より
それによると、医療従事者が患者から検体を採取する際には、気道からウイルス微粒子が空気中に放出されてエアロゾル感染するリスクがあることから、「N95マスク」やゴーグルなどの眼の防護具、長袖ガウン、手袋などの使い捨て製品を着用し、使用後は感染性廃棄物容器に密閉するなど、厳重な取り扱いを求めている。
N95マスクとは、一般に普及しているサージカルマスクとは異なり、ウイルスや細菌などの微粒子を95%以上通過させない効果があるフィルターが使われているマスクで、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の定めた基準に合格したものだけを指す。
廃棄しないで
厚労省からの事務連絡
もともとは建築現場や防塵作業用に使われていたが、結核菌やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)などの感染症予防にも効果があることから、医療現場で使われるようになった。
しかし、厚労省は同日、「N95マスクは当面の間、増産される見通しが立たず、供給不足だ」と認めたうえで、現在、再利用してもいいかどうか、海外の知見を収集しているとして、使い捨てではなく「廃棄について慎重に検討して欲しい」と全国の医療機関に呼びかけた。
院内感染の原因の30%は医療従事者
厚労省の対策本部によると、今月5日までに報告があった医療機関で発生した集団感染(クラスター)の原因は、患者が70%、医療関係者が30%と高かった。
医療従事者は感染者と接触する機会が多いだけでなく、いったん感染すると自身が院内感染の原因となる可能性が高いことから、日常生活はもちろん、病院内でのリスクを下げることが求められている。
2020-04-08 21:46:51