新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に対する懸念が高まる中、Y Combinator(Yコンビネーター)はこれまで慣れ親しんできた2日間にわたる米国サンフランシスコでの会合からイベントの開催方式を切り替え、デモデーのウェブサイトを通じて、招待された投資家とメディアにクラス全体を同時公開する方法で開催することを決定した。
さらに驚きなのが、投資家の動きが加速してきた事実を受け、YCがデモデー開催日を1週間前倒しにしたことだ。このため、デモデーのウェブサイトに録画したプレゼンを掲載するというプランは変更せざるをえなくなり、各事業は代わりにスライドに事業概要、今後の見通し、チームの経歴などの説明をまとめてプレゼンを行った。急速に進化する投資環境と相まって、この新たなスタイルがこのクラスにどのように影響するかは今のところはわからない。
プレゼンやウェブサイトのほか、場合によっては以前の記事から収集した情報をもとに、我々が集めたそれぞれのクラスの各事業のメモをまとめてみた。
読みやすさを優先し、全事業をすべて羅列するのではなくカテゴリー別にまとめている。以下は主に他の企業への販売に重点を置いているB2B企業である。その他のカテゴリー(ハードウェア、AI、フィンテックなど)に関してはこちらから読むことができる。
B2B企業
Alude
ブラジルの不動産テックはホットな市場であり、Loftのようなスタートアップ企業やユニコーン企業のQuintoAndarなどが大きな成長段階にある。Aludeはシンプルな住宅リース/購入プロセスで流通チャネルを管理しようとしている。そのシステムは、身元調査、文書収集、保険購入、オンライン署名のプロセスを自動化する。この最新テクノロジーは仲介業者に無償で提供され、同社は顧客への住宅ローンと保険の販売を収益化することを計画している。
Vori
Voriは、米国の食料品サプライチェーン向けオペレーティングシステムとなることを目指している。2020年になっても、スーパーでは依然として卸売業者との間で昔ながらの紙とペンの注文プロセスが行われている。Voriはスーパーや販売業者のB2Bマーケットプレイスとして機能し、店舗がベンダーからの仕入れ商品一覧をより効率的に作成できるよう支援する。Voriは、すでに24の店舗がその技術を使用しており、またカリフォルニア北部では150以上の販売業者をサポートしているとしている。Voriはスーパーの商品検索エンジンとしても機能し、Whole FoodsやAmazonとの競争力を保つために役立つ。
Linkana
Linkanaは、中南米におけるコンプライアンス主導型調達ソフトウェアである。中南米には年間6万ドル(約650万円)を調達ソリューションに費やす企業が4万社あり、25億ドル(約2713億円)の市場機会を生み出している。4人の共同設立チームには、10年間近く共に働いてきたメンバーがいる。
Weav
職場での新しい志望者の面接には時間がかかることがあり、チームからのフィードバックを整理して統合するよい方法もない。Weavは採用チームの面接を記録して書き起こすため、企業がより迅速に意思決定を行い、面接を減らすことができる。元Apple/Google/Microsoft社にいたチームが率いるWeavは、情報検索、トピックモデリング、エンティティ認識を活用した最先端のNLPツールを構築しているという。
ElectroNeek RPA
ロボットが自動化の未来であることには誰もが同意しているが、実際のテクノロジー導入には多くの専門知識が必要である。ElectroNeekは、ロボットの専門知識を持たないITスタッフや従業員向けに自動化プロセスを効率化するために設計された、デスクトップとクラウドベースのインターフェイスを構築している。
Reaktive
アニメーター、ビデオ編集者、エンジニアなどのクリエイティブな専門家向けにデザインされたReaktiveは、デスクトップハードウェアをクラウドベースのソリューションで置き換える。同社は、その製品が従来のソリューションよりも100倍高速で、例えば8時間のレンダリングジョブを45秒にまで大幅に短縮するとしている。同社はすでにスタジオから220万ドル(約2億3870万)の購入注文を獲得している。
Handl
紙の文書(手書きのものを含む)をデータベースまたはCRMにプランクし、構造化データに変換するためのAPIを提供する。同社によると、処理の約85%はAIによって行われ、AIの信頼性が低い部分のデータ検証を人間が支援する。発売から9か月で、年間経常収益(ARR)90万ドル(約9770万円)を見込んでいる。
Eze
Ezeは、商品交換所のような働きをする中古スマートフォン市場を構築している。このシステムは、さまざまな携帯端末の価格変動をリアルタイムで更新する。端末はまとめて卸売業者に販売され、卸売業者がそれらを小売業者に販売する。
Oda
不動産データをリスティングサービスと政府当局の記録から統合された1つのAPIに集約する。同社は現在4つのパイロット企業と協力しているという。
Okay
JIRA、GitHub、GCal、Pagerdutyなどのツールに接続してダッシュボードを提供し、チームがどのように仕事をしているかをエンジニアリングマネージャーが把握し、例えば、生産性を損なう可能性がある会議の減少などにより、効率を向上させることを可能にする。料金はマネージャー1人につき350ドル(約3万8000円)。
Tajir
パキスタンの小規模店が商品を取得する支援を提供するマーケットプレイス。同社によると、現在パキスタンの「夫婦経営」の店へのほぼすべての流通はオフラインで行われており、Tajirは無料翌日配達付きのモバイルアプリにプロセスを組み込む。
GuruHotel
ホテル向けのウェブサイトおよび資産管理/予約システムである。発売から8か月後には26のホテルで稼働しており、月間2万ドル(約217万円)の収益を上げている。基本プランは5%の予約手数料で基本的なホスティング/予約エンジンを提供し、プレミアムプランは手数料に加えて月額350~499ドル(約3万8000円〜約5万4000円)で資産管理ツールなど他の機能を利用できる。
Riot Security
最近発見されたフィッシング法に基づいた偽のフィッシングメールで従業員を自動的にテストする、フィッシング対策ツールである。従業員数が50人未満の企業の場合、月額200ドル(約2万1千円)から利用でき、その後料金はカスタムスケーリングに移行する。このツールは現在月間経常収益(MRR)1000ドル(約10万8千円)で、6社とパイロットテスト中である。Riot Securityに関する以前の記事はこちらを参照。
LabGrid
バイオテクノロジー企業やラボが電子メールよりも効率的にコミュニケーションできるようにするためのプロジェクト追跡およびコラボレーションツールである。
Trimwire
企業の銀行口座とクレジットカードに接続し、異常値のフラグを設定したり、経常経費の節約の可能性(忘れられた定期購読など)を探ったりすることで、毎月のコストを自動的に削減する。
Upflow
「B2BのVenmo」を目指し、Upflowは未払いの請求書を支払いに焦点を当てている。支払い処理のほか、カスタマイズした電子メールと登録済みの手紙を未払いのアカウントに自動送信したり、アカウントのステータスが変わった際には指定のチームメンバーに通知したりする。月間請求書数が30件未満の企業は月額50ドル(約5千円)、それ以上は年間300万ドル(約3億2550万)未満の企業で月額最大225ドル(約2万4000円)となっている。Upflowに関する以前の記事はこちらを参照。
Explo
Exploは、レポート生成に対してポイント発行したりクリックインターフェイスにすることで、SQLクエリの作成や実行方法を知らない技術者以外の従業員でも、大量のデータを分析できるようにすることを目的としている。チームによると、すでに400社以上が順番待ちをしているという。
Workbench
Workbenchは、ハードウェア企業向けにサプライヤーのソーシングと使用するコンポーネントに関する情報/仕様の保存という目的に特化したプラットフォームを開発している。
Jet Admin
コード不要で社内ツールを構築するためのドラッグアンドドロップツール。開発チームのリソース解放が期待できる。Stripe、Google Analytics、Salesforceなどのデータベースやサービスに接続し、事前構築済みのウィジェットを使用してチームがツールを組み合わせることを可能にする。独立開発者は無料、10人までのチームはユーザー一人当たり19ドルとなっている。
2020-04-12 20:44:02