SeagateのHDDで、24時間365日稼働を前提とした高い信頼性を持っているのがNAS向けの「IronWolf」と「IronWolf Pro」だ。どちらも、現在発売されているHDDで最大容量となる16TBモデルを用意。今回はそのIronWolf Proの16TBモデルを試用する機会を得たのでさっそく実力をチェックしてみたい。
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○耐久性と信頼性が特徴のNAS向けHDD
Seagateでは、デスクトップPC向けの「BarraCuda」、SSDとのハイブリッドモデルになるSSHDの「FireCuda」といったブランドを展開しているが、高い耐久性と信頼性を重視しているのがNAS向けの「IronWolf」と「IronWolf Pro」だ。
ほかのブランドと大きく異なるのは、24時間365日稼働を前提しており、長時間の駆動と大容量のデータ送受信を可能にする高耐久、高信頼性を重視した設計であること。そして、NAS向けということもあり、複数台を隣接して設置することを想定し、「IronWolf」では4TB以上、「IronWolf Pro」ではすべてのモデルでプラッタの回転やヘッドの移動で発生する振動を検知する「RVセンサー」を搭載。これにより、NASきょう体がプラスチックであったり鉄製であったり、複数台を搭載しているなどの違い、それぞれ環境に合わせた振動をセンサーで検知し、しっかりパフォーマンスが出るようにヘッドの動作を補正する。
そして、「IronWolf」と「IronWolf Pro」には、200項目のパラメーターでHDDの状態を診断してくれる「IHM」(IronWolf Health Management)を備えている。ASUSTORやSynologyの対応NASでは、このIHMを使った詳細な監視によってより信頼性を高めることが可能だ。また、「IronWolf Pro」ではもしデータロスが発生した場合、データ復元専門チームによるサポートを2年間受けられるRescueサービスが付帯している。
「IronWolf」と「IronWolf Pro」はNAS向けではあるが、その信頼性の高さゆえにデスクトップPCのデータ保存用としても人気は高い。価格は高めだが、それだけの価値があるHDDと言える。
○性能ベンチマーク、ゲームにも有効?
ここからは、その実力をチェックしてみたい。今回試用したのは「IronWolf Pro」の16TBモデル。型番は「ST16000NE000」。気体抵抗を減らすヘリウムガスを封入することで、搭載するプラッタ(磁気ディスク)の枚数を増やし、16TBの容量を実現している。インターフェースはSerial ATA 3.0(6Gbps)、回転数は7,200rpmでキャッシュは256MB、公称のデータ転送速度は255MB/秒とHDDの中ではトップクラスのスペックを持っている。
まずは、最大速度を測る定番ベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0h」を実行してみる。比較用として同じSeagateでデスクトップPC向けの「BarraCuda」の6TBモデル(ST6000DM003)を用意した。また、テスト環境は以下の通りだ。
シーケンシャルリード、ライトとも250MB/秒オーバーとほぼ公称のデータ転送速度が出ている。これはHDD最速クラスの数値だ。BarraCudaも200MB/秒オーバーと十分高速だが、こちらは5,400rpm。回転速度の違いがデータ転送速度に影響を与えているのが分かる。
続いて、HD Tune ProでHDDの内周部と外周部の速度差をチェックする。HDDは構造上、プラッタの外周部ほど高速で内周部ほど低速になるためだ。
IronWolf Pro ST16000NE000はリード、ライトとも外周部だと最大260MB/秒オーバーと公称以上の速度を記録。内周部でも100MB/秒を切らないと、HDDとしては高い性能を維持している。BarraCuda ST6000DM003は内周部だと100MB/秒以下まで下がってしまう。
続いてゲームのロード時間もチェックしよう。ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークのローディング時間で比較する。
IronWolf Pro ST16000NE000のほうが約4秒もロード時間が短いことがわかる。最近は大容量のゲームが増えているだけに、SSDだけで大量のゲームをインストールするのは厳しい。少しでもロード時間が高速なHDDを導入したいなら、IronWolf Pro ST16000NE000はいい選択肢と言えるだろう。
○こちらが本職、NASに搭載するとどうか?
次はNASに搭載した場合の動作をチェックしたい。使用したNASはSynology DiskStation DS220j。2ベイモデルなので、IronWolf Pro ST16000NE000を2台搭載し、RAIDはSynology独自のSHRで構築した。
データ転送速度のテストはDS220j内の共有フォルダをネットワークドライブとしてマウントし、「CrystalDiskMark 7.0.0h」を実行した。
DS220jはエントリーモデルではあるが、シーケンシャルリードはギガビットイーサの限界速度になる110MB/秒前後を出しており、十分なパフォーマンスが出ていると言える。PC接続よりも4KiBのランダムアクセス速度が高いのはDS220jによるキャッシュが効いているためだ。
高性能なHDDだと温度も気になるところ。PCから約73GBの大容量データを連続してDS220jにコピーを実行してみた。背面にあるファンの動作モードは低速の「低ノイズモード」に設定している。室温は約20℃前後。
1台の温度は変化せず、もう1台の温度も1℃上昇しただけだった。これならばバックアップに大量のデータをコピーしても安心と言える。
なお、DS220jはIronWolfシリーズの「IHM」(IronWolf Health Management)に対応し、HDDの詳細なパラメータを確認できるが、IronWolf Pro ST16000NE000はまだ未対応だった。今後のアップデートで対応されることだろう。
○データ容量が大きいだけに、信頼性は大切
ここまでIronWolf Pro ST16000NE000のテストを行ってきたが、HDD最高クラスの性能そして耐久性を備えているのが大きな魅力と言える。例えば、作業負荷率制限(この容量の読み書きが行われると故障率に影響されるという指標)を見てもIronWolf Proシリーズは300TB、BarraCudaシリーズは55TBと5倍以上のスペック差がある。いかに信頼性を重視した設計なのかわかるはずだ。
16TBもの容量になると、万が一HDDが故障したときの損失は恐ろしく大きいものになる。大切なデータを扱うなら、信頼性が高いものを選びたい。そのときにIronWolf Pro ST16000NE000は有力な候補なってくれるはずだ。
2020-04-15 18:52:29