物理キーボード好き歓喜のスマホ「Gemini PDA」 後継機種を発売予定!
今度はスライドするキーボードを備えたAstro Slide 5G Transformer
QWERTYキーボードを備えたスマートフォンが次々と市場から消えていく中、2017年にクラウドファンディングで資金調達に成功した「Gemini PDA」がPlanet Computerから登場しました。指先でのタッチも可能な本格的なキーボードを備えた製品として、キーボード搭載スマートフォンファンたちの心を虜にし、日本からのオーダーも多く日本語キーボードモデルも登場。さらには日本で正規代理店から発売になるなど、ニッチな製品ながらも一定の支持を受けています。
そのPlanet Computerから今度はスライド式キーボードを備えた「Astro Slide 5G Transformer」が発表になり、現在キックスターターで資金調達を募集しています。製品化に必要な調達資金は日本円で約2100万円でしたが、受付を開始するや否や世界中から続々と資金が集まり、残り22日(4月17日時点)で約9300万円を集めるほどの人気となっています。アーリーバードの優待価格は1台あたり約5万7000円でしたので、ざっくり計算すると約1600台のオーダーを集めたことになります。
ちなみに過去にはGemini PDAが約2億2300万円、後継モデルの「Cosmo Communicator」が2億3300万円を集めました。毎年新機種を出しながらこれだけの注目を集めたということで、Planet ComputerもAstro Slide 5G Transformerの投入に自信がついたのでしょう。
ちなみに社名がPlanet(惑星)、歴代モデルはGemini(ふたご座)、Cosmo(天体)、Astro(宇宙)と宇宙にちなんだネーミングにこだわっています。気が早いですが次期モデルも太陽系の惑星や星座の名前が付けられるのでしょうね。
さて、Gemini PDAが出てきたときはノートPC代わりにもできそうな大型キーボードを備えながらも、折りたたむとポケットに収まる6型ディスプレー搭載スマートフォン(LTE版とWi-Fi版の両方が存在)として「よくぞ出してくれた!」と涙を流したマニアも多かったと思います。Planet Computerは元々PDAのPsion社にいた人々が立ち上げた会社で、そのPsionも1990年代後半からミニサイズのキーボード付きPDAを出し人気がありました。Gemini PDAの押しやすいキーボードはPsionのPDA譲りのデザインなのです。
ちなみに日本では当時PalmのPDAが大きなシェアを握りましたが、PsionのPDAも細々ながら日本語化キットが出るなどして日本で発売されたことがありました。そしてPsionが開発した同社PDA向けの「Epoc OS」は1998年にノキアやエリクソンなどと共にOS部門を分離し、「Symbian OS」としてスマートフォン向けにリビルドされていったのです。
Gemini PDAは閉じた状態の天板部分にはディスプレーがなく小さなLEDライトが埋め込まれているだけだったので、通知がわかりにくく通話に出るためには開く必要がありました。それでもキーボードのデキの良さで充分満足できる製品だったのです。ところがPlanet ComputerはそのGemini PDAの出荷もまだ完全に終わっていない2018年11月に上位モデルのCosmo Communicatorを発表。今度のモデルは天板にディスプレーとカメラを搭載し、閉じたままで通話や通知受信が可能、写真も撮れる製品へと進化したのです。
まさかのスライド式デザインで よりスマホらしく
この2製品が出そろったことで、Planet Computerから次の新製品はしばらくでてこないだろうなと多くのキーボードスマートフォンマニアたちは思ったことでしょう。ワイヤレス充電の追加や5G対応といったハードウェアの進化は必要かもしれませんが、クラムシェル型で横に開くというデザインは完成されており、派生モデルが出てきたとしてもマイナーチェンジに留まる可能性が高かったのです。
ところがAstro Slide 5G Transformerはまさかのスライド式デザインで登場しました。キーボードは同等品を使い、ディスプレーサイズも同等とすることで本体サイズはほぼ同等。ヒンジで開く必要がなくなったため、閉じた状態でも6型ディスプレーを使ってそのままスマートフォンとして利用できます。このデザインのスマートフォンは最近ではF(x)tecの「Pro1」がありましたが、キーボードは指先で押す小型のもので長文入力には向きません。しかし、Astro Slide 5G TransformerはGemini PDA譲りの大きいキーボードでしっかりとしたタイピングが可能なのです。
Astro Slide 5G Transformerはキーボードをスライドさせ、それを持ち上げることでGemini PDAなどと同じ、ノートPCのようにディスプレーに角度をつけた状態となります。これで電車の車内で立っているときや、机の上に置いた時でも両手の親指や人差し指を使って高速タイプが可能になるのです。そして閉じればすぐに普通のスマートフォンと同じ形状になるため、使い勝手も高いでしょう。
このスライド&ヒンジの構造ですが、単純にディスプレーを横に動かして縦に起こすのではありません。ディスプレーを目いっぱいスライドさせると、キーボードと面一になる位置まで沈み、そこからディスプレーを引き上げるというギミックになっているのです。これにより可動部分の強度が増すだけではなく、机の上に置いた時も縦方向の高さを若干低くできます。キーボードとディスプレー部分が近づくために文字を入力中も目の移動距離が少なくて済むというメリットもあります。
実はGemini PDA、Cosmo Communicatorはディスプレーを開くとヒンジの裏側のカバーが浮かび上がり、机上に置くとスタンドとしてキーボードに傾斜をつけることができます。そしてPsion時代のPDAも、ディスプレーを開くとキーボードが前にせり出てくるなど特殊な機構を採用していました。Psion時代から本体のデザインを手掛けるMartin Riddiford氏は、スモールデバイスに対して何かしらこだわりを持った動きや機構を加えることが好きなようです。とはいえそれは奇をてらったものではなく、外観上の美しさや使いやすさ、さらに強度も考えたデザインなのです。
また名前にもあるようにAstro Slide 5G Transformerは5Gに対応しました。対応周波数は未定ですがSub6に対応、キーボードには日本語もあるため日本の5Gにも対応してくるでしょう。ここで気になるのはSoCにクアルコムのSnapdragon 865や765ではなくメディアテックのDimensity 1000(MT6889)を採用していること。同SoCは5Gモデムを内蔵したSoCですが、現時点でOPPOの「Reno 3」中国版がDimensity 1000Lを採用しているのみと採用実績はほとんどありません。
同SoCはクアルコム製品より安価なため、採用が決まったと思われます。Astro Slide 5G Transformerは2021年3月の出荷予定ですが、そのころには他社からもDimensity 1000/1000Lを採用したスマートフォンが出ていると思うので、5Gの動作に関しては問題ない状態でリリースされるでしょう。
日本ではファーウェイがSIMフリー5Gスマートフォンとして「HUAWEI Mate 30 Pro」を発売しました。Astro Slide 5G Transformerも同様にキャリア縛りのない5Gスマートフォンとして、日本の正規代理店からも発売されることを期待したいものです。
2020-04-19 20:17:13