アップルが第2世代の「iPhone SE」を発売しました。44,800円(税別)から購入できる手ごろな価格にも注目が集まる新しいiPhone SEはどんな人にオススメなのか、実機に触れながら検証してみたいと思います。
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iPhone SEは「iPhone 8の皮を被ったiPhone 11 Pro」
第2世代のiPhone SEは、2017年に発売されたiPhone 8と同じ約4.7インチのRetina HD液晶ディスプレイを継承する、現行ラインナップの中で最も小さなiPhoneです。片手で持ちやすく、操作も快適なサイズ感だと感じます。
前面には、App Storeなどでコンテンツを購入した際の決済に指紋認証が使えるTouch ID機能内蔵のホームボタンを搭載しています。外出先ではマスクを着けたまま素速く画面のスリープ解除もできるので便利です。iPhone SEは、現行のラインナップの中で唯一ホームボタンを搭載するiPhoneになりました。
アップルが独自に開発する最新A13 Bionicチップを搭載したiPhone SEは、“ヒツジの皮を被ったオオカミ”ならぬ「iPhone 8の皮を被ったiPhone 11 Pro」です。ARアプリやApple Arcadeのゲームがとてもスムーズに動作します。
Android OSを搭載するスマホは、5万円前後で買えるミドルレンジ価格帯の端末が増えていますが、iPhone SEはプレミアムモデルであるiPhone 11 Proと同等のパフォーマンスを備えるミドルレンジクラスのスマホであることが大きな特徴だといえます。
2016年春に発売された初代iPhone SEに搭載されていた「A9」と比べて、A13 Bionicチップに統合されているCPUは約2.4倍、GPUは約4倍にそれぞれの性能が大きく飛躍しています。今後、数年にわたって長く愛用できるコンパクトでスリムなスマホを探しているという方には、最新のiPhone SEを強くプッシュします。
シングルカメラでもポートレート撮影や4K動画撮影に不満なし
A13 Bionicチップの高性能は、iPhone SEのカメラによる写真や動画の撮影にも反映されます。iPhone SEのメインカメラは12メガピクセル/F値1.8のシングルレンズ構成なので、iPhone 11シリーズのように超広角レンズを活かして被写体をワイドに収めた写真や動画を撮ることはできません。それでも解像感が高く、自然な色合いにまとめた写真と動画を記録できる再現力は、iPhone 11 Proにも引けを取らないと思います。
iPhone 11シリーズから搭載が始まった、暗闇の中でもフラッシュを焚かずに色鮮やかで明るい写真が撮れるナイトモードは、iPhone SEには搭載されていません。それでも、薄暗い場所での写真撮影は、やはりiPhoneらしい安定感に富んでいます。
iPhone 8とカメラのスペックを比較してみると、iPhone SEには最新世代の「スマートHDR」が搭載されています。この機能により、逆光のシーンでも白飛びや黒つぶれを抑えながら明暗を賢くコントロールし、被写体のディティールを引き出します。
ポートレートモードの撮影はシングルレンズのカメラながら、A13 Bionicチップの高度な処理能力を活かしてカメラから被写体までの距離(深度情報)を瞬時に計算。機械学習による人物認識処理を合わせて加えることで、被写体の人物と背景の境界を正確に認識し、背景だけに自然なボケ味を加えます。
ボケ味のエフェクトには、最新世代の「ハイキー照明」を含む6種類があります。ポートレート撮影は、メインカメラと7メガピクセルのFaceTime HDカメラの両方で可能。オートフォーカスは精度だけでなく、スピードが初代のiPhone SEの3倍になりました。
メインカメラによる4K動画撮影は初代のiPhone SEから対応していましたが、2020年モデルのiPhone SEは最高4K/60fpsでの4K動画撮影もできるようになりました。4K/30fpsまでは動画のHDR撮影も可能です。
iPhone SEで撮影した4K動画は、写真アプリからファイルを選択して、動画のトリミングから簡単な色味・明るさの調整が行えます。ここも、またA13 Bionicチップの高いパフォーマンスが真価を発揮する部分といえます。
iPhone 8との違いは、動画撮影時のステレオ録音ができるようになったことと、写真モードからでも素速く動画が録れる「QuickTakeビデオ」にも対応したこと。ステレオ録音ができるということは、FaceTimeによるビデオ通話の相手に鮮明な声を届けられることを意味しています。
筆者も、ふだんステレオマイクを搭載するiPad ProやiPhone 11 Proをビデオミーティングの際に使っていますが、相手から声がとても聞きやすいとほめてもらえます。
驚くほどの没入感が得られるディスプレイ
4.7インチのRetina HDディスプレイは解像度や画素密度、コントラスト値や再現できる色域性能、輝度ともにiPhone 8と変わっていません。ただひとつ、iPhone SEから大きく変更された点があります。ブラック/ホワイト/ (PRODUCT)REDのすべてのカラーバリエーションが、ディスプレイの周囲に黒いベゼルを採用したことです。特に、ホワイト系のカラバリモデルにブラックのベゼルを採用したiPhoneは、最初期のiPhone 3GS以来ではないでしょうか。
ベゼルの色がブラックになると、映画や写真を画面に表示した際に高い没入感が得られます。iPhone 8は、黒いベゼルの選択肢がスペースグレイの1色のみでした。白いベゼルのほうがデザインの面では優しい印象に見えるかもしれませんが、iOS 13から採用されている「ダークモード」との相性を考えても、やはり圧倒的にブラックベゼルの方が引き締まった印象に見えてよいと思います。
動画コンテンツの再生は、Dolby Atmosや空間オーディオ再生に対応しているiPhone 11シリーズのほうが、豊かな音の広がりと立体感においては優れていると思います。iPhone SEは、ホームボタン側のスピーカーが横向きに搭載されているため、スピーカーで再生した時の音の定位感もやはりiPhone 11 Proのほうが鮮明に聞こえます。iPhone SEを使ったビデオ通話の際、相手の声が少し聞きにくく感じられた場合は、AirPods Proを接続すると音声の左右バランスがよくなるので、長時間のミーティングも聴き疲れしないでしょう。当然、ノイズキャンセリング機能により周囲の騒音が遮断されるメリットもあります。
Rakuten UN-LIMITも使えた!
先日、「iPhoneやiPad Proでも使える? 『Rakuten UN-LIMIT』導入記」の記事で、楽天モバイルが提供を始めた「Rakuten UN-LIMIT」のプランがiPhoneでも使えることをレポートしました。iPhone SEにもRakuten UN-LIMITのSIMを装着してみましたが、iPhone 11 Proと同じく筆者の環境では特別な設定をしなくてもRakutenネットワークにつながり、4G LTEネットワークによる高速通信が快適に利用できています。
コンパクトで高性能、しかもシンプルに使えるiPhone SEは、これから初めてスマホを使う方にも親しみやすい端末になると思います。Apple Payによる電子決済やモバイルSuica定期券が使えることも、ぜひ教えてあげたいところです。
筆者もiPhone SEを購入しました。データ使い放題のRakuten UN-LIMITのプランを活用して、外出時にApple MusicやNetflixをデータ容量の制限を気にせず使い倒せる“2台目のiPhone”として活用したいと思ったからです。
もっとも、新型コロナウィルスの感染拡大の影響がまだ収束する気配が見えないため、今後しばらくは家の中でWi-Fiにつないでさまざまなコンテンツを楽しむ生活が続くと思います。iPhone SEはWi-Fi 6にも対応しているので、ネットワーク接続の品質も安定しています。本体はIP67相当の防水対応なので、浴室でテレビやYouTubeを見るのもOK。自宅にこもりながら、新しいiPhone SEの底力に心打たれる発見が数多く得られることを期待したいと思います。
2020-04-26 02:40:04