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「不妊治療は時間との闘い」コロナ禍で延期推奨、広がった戸惑い

新型コロナウイルスの感染が拡大した4月、日本生殖医学会が、会員の医師に対し、不妊治療の延期を患者に提案するよう勧める内容の声明を出し、関係者に戸惑いが広がった。5月中旬、治療の再開を考慮するよう促し、事実上延期の推奨を撤回する通知が新たに発出されたが、再び感染が拡大した場合への不安は解消されていない。一般的に年齢が上がるほど妊娠率は低くなり、当事者からは「不妊治療の実情がわかっていないのではないか」と切実な声が上がっている。(加納裕子)

治療延期にショック

「4月の声明の内容にショックを受けた」と話すのは、堺市の女性会社員(41)。昨年4月から治療をはじめ、勤務先の了解も得て不妊治療を最優先する生活を送ってきた。今年1月から、卵子と精子を体外で受精させる「体外受精」を開始。学会の声明は、受精卵を子宮に戻す2日前だったという。

「年齢からして治療できるのはあと1年くらい。治療の延期は子供をあきらめろということ」と女性は訴える。通っているクリニックは患者の希望を尊重する方針を発表したため、予定通り治療を続けた。

学会の声明では、延期を推奨した理由について、新型コロナウイルスが妊娠初期の胎児に及ぼす影響が明らかになっていない上、現在治験中の抗ウイルス薬が妊婦には使えず、受診や医療行為に関連した感染が危惧されたためと説明。延期の目安は「感染の急速な拡大の危険性がなくなるまで、あるいは妊娠時に使用できる予防薬や治療薬が開発されるまで」とした。

だが、女性は「自然妊娠した人に対し、厚生労働省は過度な心配はいらないとしている。感染しないよう注意すれば治療は可能なのでは」と話す。

「よく相談を」

声明が出た4月、不妊治療専門病院を含む多くの医療機関で、医療物資が不足した。ある産婦人科医は声明の背景について「妊娠したら危ないという意味ではなく、医療物資が不足する中で、新型コロナ以外の多くの手術が延期された。それと同じで、今は医療物資をコロナ患者にまわしてほしいという文脈だったのではないか」と指摘する。

声明を受けた不妊治療専門病院の対応は分かれた。ある病院は、ホームページで原則として治療を延期する方針を発表。一方、全国30病院が加盟する一般社団法人「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」は「多くは40歳前後の比較的年齢の高い方々で、時間との闘いの中で治療を受けている」とし、一律の治療延期は行わなかった。

日本生殖医学会は5月18日、感染防御の対策を可能な限り行った上で、治療の再開を考慮するよう促す通知を新たに発表した。今後も「感染の再拡大と収束を繰り返すことが想定される」ことから「治療の実施・延期も状況に応じて選択する必要がある」とした。

同学会の市川智彦理事長は「4月の声明は、一般市民、特に不妊治療を受けている女性に妊娠を控えていただくことを意図したものではなかった」と釈明。今後については「地域によって異なる感染状況や個別の事情も反映される。最終的にどのような治療が選択されるかは患者さんと主治医の判断に委ねられるべきだ」としている。

「不妊治療、控えられない」専門病院で進むコロナ対策

「年齢が高くなれば受精卵の染色体異常が増え、ホルモンも分泌しにくくなる。40代の1カ月は30代前半の半年間に相当する」。JISARTに加盟する不妊治療専門病院「HORAC(ホーラック)グランフロント大阪クリニック」(大阪市北区)の森本義晴院長(68)はこう話し、「不妊治療を控えることはできない」と訴える。

系列の「IVFなんばクリニック」(同市西区)の松岡麻理医師が5月中旬に患者20人を対象に行った調査によると、70%が治療を継続すると回答。日本生殖医学会が4月に出した声明について、40%が「理解可能だが従うのは困難」とし、「当然と納得」の30%を上回った。

「HORAC」では感染防止策に神経をとがらせながら治療を継続している。患者には来院時の体温計測や手洗い、マスクを徹底してもらい、医師やスタッフはフェースガードを着用。発熱したスタッフは全員、2週間休ませる。来院回数の少ない治療方針を推奨するとともに、来院せずに相談や投薬ができる遠隔診療システムの構築を急ぎ、7月から開始する予定だ。

さらに4月から、不妊治療の正しい知識を動画にまとめ、「POSITIVE妊活!」シリーズとしてユーチューブで発信。中でもまめな水分補給や、帰宅後は手だけでなく顔も洗うこと、運動を続けることなどを勧める「妊活中の新型コロナウイルス対策」は7千回以上視聴された。森本院長は「不妊治療には噂や証拠のない情報が多い。この機会に正しい情報を発信していく」としている。