AIやIoTといったテクノロジーの進歩により、アメリカ・中国を中心に広がる「デジタルシフト」。世界的にも注目されているこの流れは、今や「第四次産業革命」とも呼ばれるほどだ。そんななかで生まれる新しいビジネスは、いったいどんな着眼点で生み出されているのだろうか?
〈「Digital Shift Times」より作成。元記事はこちら〉
プリペイドなのに「後払い」できる
今回は、日本国内で新たな貸金モデルを作りだした、株式会社カンムの「バンドルカード」を解説します。タレントのベッキーさんがダンディ坂野さんに扮して出演するCMを見たことがある人もいるのではないでしょうか。
バンドルカードは、SuicaやPASMOのように、事前に電子マネーをチャージして利用するプリペイドカードです。バーチャルカードを発行し、スマホ決済をすることができます。
特に注目すべき点は、現金が登録口座に入っていなくても電子マネーをチャージできること。つまり、プリペイドカードでありながら「後払い」にも対応しているのです。
当然、手数料はかかりますが、ATMの手数料感覚で“お金の前借り”が出来てしまうこの仕組は、その手軽さからZ世代などの若者を取り込み、ローン市場をじわじわと押し広げていると考えられます。
それでは、さらに詳しくバンドルカードのビジネスモデルを分析していきましょう。
誰でも手軽に発行できる
バンドルカードは2011年に創業した株式会社カンムが運営しています。カンムは2016年からバンドルカードを開始し、2018年1月時点でアプリが37万ダウンロードを突破しました。また、同じく2018年1月にはフリークアウト・ホールディングスとの資本業務提携も発表しています。
バンドルカードはクレジットカードとは異なり、与信審査が無く、誰でも手軽にカードを発行できることが特徴です。専用のアプリから電話番号と生年月日を入力するだけでカード番号を発行でき、未成年でも保護者の同意があれば作ることができます。
ウェブ上で使える「バーチャルカード」か、現実のお店で使える「リアルカード」かを選ぶこともできます。カードはVisaと提携していて、Visa加盟店で使用することができます。
バンドルカードの最大の独自性は、先述した「後払い」ができる「ポチッとチャージ」機能です。アプリで金額を入れて「OK」をポチッとするだけでお金がチャージされます。
チャージした金額と、それによって変動する手数料を期日までに支払う必要があり、カンムはここから収益を上げています。発行自体も手軽にできることから、「現金がないけど“今すぐ”欲しいものがある」というニーズに対応することができるのです。
ところで、日本の決済手段別の市場規模をまとめると、利用金額が5000円未満かつ現金で決済している金額は約90兆円にのぼるとされています。
この市場が、支払い手段の多様化により、現金からスマホ決済に取って代わられる可能性があるのです。多くの企業が目をつけている市場ですが、バンドルカードも、独自サービスでこの市場を狙っていると考えられます。
“ならでは”のユーザー層とビジネスモデル
バンドルカードのポイントは、「ユーザー層」と「ビジネスモデル」です。
2020-06-07 20:50:29