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中国版GPS「北斗」、55機目の衛星が打上げ成功 - 全地球測位システムが完成

中国は2020年6月23日、全地球測位システム「北斗」を構成する衛星の打ち上げに成功した。今回が55機目の実用衛星の打ち上げで、これにより北斗衛星コンステレーションが完成。中国は、米国、ロシア、そして欧州に続いて、全地球衛星測位システムの実用化を成し遂げた。

米国のGPSに対抗する全地球衛星航法システム「北斗」

北斗55号を搭載した「長征三号乙」ロケットは、日本時間6月23日10時43分(中国標準時9時43分)、四川省にある西昌衛星発射センターから離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約25分後に、衛星を計画どおりの軌道に投入した。

打ち上げの模様は、中国国営の中国中央電視台(CCTV)が生中継を実施。中国のロケット打ち上げが生中継されることはきわめて珍しく、中国にとって北斗の重要性がどれほど高いかを表している。

長征三号乙は今年4月、インドネシアの衛星を載せた打ち上げに失敗しており、約2か月ぶりの打ち上げ再開となった。
中国版GPS「北斗」とは?

北斗(Beidou)は中国が構築した全地球測位システムで、米国のGPSやロシアのGLONASS、欧州の「ガリレオ」と同じく、世界中のどこでも測位を可能としている。

サービス自体は以前から展開されており、すでに輸送、農業、漁業、災害救助といった分野で活用が始まっている。また、外交・経済でも活用されており、アジアと欧州を結ぶ広域経済圏構想「一帯一路」においても重要な役割を果たしている。

測位精度は、衛星単体では全世界で10m以下、アジア・太平洋地域では5m以下で、地上局による補正などを加えることで数cm級の高精度サービスを提供することもできる。また、軍用により高い精度の信号も出している。

また、GPSなどの他の衛星測位システムにはない特長として、衛星が配備される軌道がある。米国のGPSなどは、高度約2万kmの中軌道のみに複数の衛星を配備しているが、北斗は中軌道のほか、高度3万5800kmの静止軌道、そして傾斜地球同期軌道にも衛星を配備している。

傾斜地球同期軌道とは、大きな軌道傾斜角をもちつつ、地球の自転と同じ周期で周回する軌道のことで、複数の軌道面の傾斜地球同期軌道に衛星を複数配置することで、赤道上空以外の高緯度地域でも、あたかも上空に静止衛星が存在するかのように運用することができる。これによりアジア上空での測位精度を高めている。ちなみに日本の「みちびき」も、準天頂軌道と呼ばれる傾斜地球同期軌道の一種に衛星を投入している。

さらに北斗には、ショートメッセージの送受信機能もあり、海上での遭難や災害時に役立つとされる。中国メディアの報道によると、遭難した漁船の乗組員など、これまでに同サービスを使って累計1万人以上が救助されているという。

北斗の信号を受信するためのチップも安価に販売されており、Android端末を中心に、大手メーカーから出ている多くのスマートフォンなどで受信可能となっている。

中国は1980年代から衛星測位システムの研究に着手し、1989年には通信衛星を利用した基礎実験を実施した。

そして1994年、米国のGPSへの対抗や、全地球測位システムの分野における自律性を確保することを目的に、中国政府の肝いりで開発が正式にスタート。以来、中国国家航天局や、大手衛星メーカーの中国空間技術研究院(CAST)、中国科学院などが参画する一大プロジェクトとして進められている。

2000年に最初の実験衛星となる第1世代の衛星「北斗一号」衛星群が打ち上げられ、中国国内を対象にした実証実験を実施。2010年からは最初の実用衛星となる第2世代の「北斗二号」の打ち上げが始まり、2012年までに18機が打ち上げに成功し、アジア・太平洋地域を対象にした測位サービスが始まった。

そして2015年からは、測位精度などを改良した「北斗三号」シリーズの打ち上げが開始。これまでに中軌道に27機、対地傾斜同期軌道に5機、そして静止軌道に3機の衛星が打ち上げられた。そして、二号と合わせて55機目となった今回の衛星の打ち上げをもって、全地球を対象にした測位サービスにとって必要となるコンステレーションが完成。中国は当初、今年末までの完成を予定していたが、半年前倒しでの実現となった。

これにより中国は、米国のGPS、ロシアのGLONASS、そして欧州のガリレオに続いて、全地球衛星測位システムの実用化に成功した。

なお、今回打ち上げられた最後の衛星は、北斗三号のうち静止軌道で運用される衛星で、中国空間技術研究院が開発、製造した。打ち上げ時の質量は4.6tで、設計寿命は8年が予定されている。

今後は、老朽化したり故障したりした衛星の代替機の打ち上げが、定期的に行われることになる。また2022年ごろからは、現在衛星に搭載されているルビジウム原子時計よりも精度が高い、水銀を使った時計を積むなどして性能を高めた、新型衛星の打ち上げも計画されている。

○鳥嶋真也(とりしましんや)

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。