2020年春に発売となったパナソニックのロボット掃除機シリーズ「RULO(ルーロ)」の新モデル「MC-RSF1000」。同社が次世代ロボット掃除機とうたうように、5世代目にして大きく進化しています。気になるその実力、実際に自宅で試してみました。
次世代ロボット掃除機を宣言したパナソニック「RULO」の”次世代”を紐解く(後編)
まずは新ルーロの特長から。最大の進化点は、業界最高クラスというレーザーセンサーを使用した「空間認識技術レーザーSLAM」を搭載したこと。本体上面に備えた円盤状の装置から、レーザーを360°全方位に照射して、物体に当たって跳ね返った反射状況から空間を認識。自らの位置を把握します。これは、船舶、潜水艦、航空管制でも採用されている高度なナビゲーション技術と同じものとのこと。ロボット掃除機への採用は最先端といえます。
ルーロは2018年発売の「MC-RS810」で、カメラセンサーによるSLAM機能とWi-Fi機能を搭載。部屋の間取りの地図を作成し、自らの位置を認識しながら効率的に走行するようになりました。また、カメラセンサーに加えて、以前からある障害物を検知する赤外線センサー、超音波センサーという3つのセンサーを組み合わせています。これによって、イスの脚など約2cmまでの幅の狭い障害物まで認識し、ギリギリまで接近して掃除できるようにもなりました。
ところが、従来のカメラセンサーによるSLAM技術は、部屋の特徴点をとらえて自分の位置を認識する仕組みのため、床に近くて低い位置などに死角が生じます。すると部屋の特徴点を認識しきれない場合が出てきて、さらに走行しながら地図を作っていくため、暗い場所や走行していない場所には対応できないといった限界もありました。
○かしこくなってる!
こうした問題を解決するために、新たに採用されたのがレーザーSLAMというわけです。新ルーロのMC-RSF1000では、1秒間に約10回転し、半径8メートル先まで照射可能なレーザーセンサーによって、360°全方位にわたって障害物をリアルタイム検知。室内全体を見渡しながら走行できるようになりました。
自宅で初めて新ルーロを動作させたとき、思わず「かしこくなってる!」と独り言。従来のルーロは、障害物に近づいてから回避している感じでしたが、新ルーロはぶつかりそうな場所を回避しつつも、際(きわ)まで寄って掃除していることが確認できました。床に近くて低い位置にある障害物も、ギリギリまで近寄りながらも上手に避けます。100%とはいかないまでも、障害物にぶつかるシーンがかなり減ったと感じました。
走行ルートも効率的になっていることを実感。というのも従来のルーロは、壁際から掃除をしたあとに、内側の空間を埋めていくように動きます。対して新ルーロは、室内を小さなエリアに分割した上で、1つのエリアを掃除し終えると、次のエリアに移って順々に掃除をしていく動きです。同じ場所を行ったり来たりすることなく、効率よく掃除できていました。
従来モデルと同様に、ルーロが掃除した履歴はスマホアプリ「RULOナビ」で確認可能です。毎回、運転が終わると、掃除結果を「ゴミマップ」としてレポートを作成します。このマップを見ると、部屋の形や家具の位置をまずまず正確にとらえていることがわかりました。同時に、物が置かれていたりして掃除できなかった場所や、ゴミ量の大小を色分けで表示してくれるので、ゴミの溜まりやすい場所なども把握できて、あとから手作業で重点的に掃除するときにも役立ちます。
マップを利用して、エリアを指定した掃除ができるのも便利です。掃除してほしいエリアと、除外したいエリアの両方を設定でき、1回のお掃除で2カ所まで設定できるのも使いやすいポイントです。
エリアを指定したお掃除機能には、ゴミマップを活用したモードもあります。運転開始時に「お手軽モード」を選ぶと、ゴミマップ上でゴミの多い場所だけを掃除。「徹底掃除モード」なら、指定したエリア内を二重に走行して念入りに掃除してくれます。
エリア指定と徹底掃除という2つのモードは、スケジュール設定でも利用可能です。曜日ごとに時間と掃除モードを設定しておくと、例えば平日は不在時に標準(自動モード)で掃除、週末は徹底掃除など、パターンを変えて効果的に掃除できます。
○室内の段差を自動で乗り越えていく「アクティブリフト」の実力は?
もう1つ、新ルーロの大きな進化点として、機能の「アクティブリフト」が挙げられます。本体の進行方向に備える「フロント3Dセンサー」が段差を検知すると、本体の前方部分がリフトアップして乗り越えるというもの。新ルーロはこの機能のために、タイヤ部分が持ち上がるように構造が大きく変わっています。
この機能の優位性を評価したかったのですが、残念ながら、我が家は段差がないバリアフリーなマンション。これまでのルーロでは引っかかって止まりがちだった薄いマットやラグも、新モデルのMC-RSF1000は乗り越えられるとのことですが、我が家で試した限りは乗り越える前に押し動かす結果に。ラグやカーペットでも、ある程度の重さがあって床に密着していてズレにくいものなら、乗り越えてくれるかもしれません。
我が家では、乗り越えてほしくないところでアクティブリフトが働いてしまうケースが見られました。特に、台座がスロープ状になった家具や家電類が鬼門。従来のルーロや他社のロボット掃除機であれば乗り越えるのをあきらめるようなものでも、がんばって乗り越えようとするあまりに、エラーを起こして止まってしまうことがありました。
また、コード類に関しても、アクティブリフトが仇になっていると見受けられることが。かしこく乗り越えていくときもありますが、コードを段差と認識して本体を持ち上げたときに、サイドブラシに引っかけたり、ときにはレーザー装置がコードに引っかってエラー。そこで掃除前にコードの場所を移動させたり、位置を変えたりしてから、運転することにしました。
段差を認識して本体を持ち上げて乗り越えるというのは、ほかのロボット掃除機にはないチャレンジングな機能です。ただし精度にまだ課題があり、「部屋の片付けが不要なロボット掃除機」とうたうには、さらなる改良と進化を期待したいところです。
○センサーのお手入れが大切
ほかに走行性で気になった点としては、充電台に帰還できないケースが多かったこと。また、使い始めはかしこく回避していた障害物に衝突するようになったりと、使い続けるうちになんとなく精度が落ちるように感じました。
この点をパナソニックに問い合わせしたところ、「おそらく生活しているうちにモノの配置が微妙に変わっているので、ルーロの動きも変わってきているのだと思います」とのこと。また、イスの脚の間から脱出できなくなっていたことがあった点について、「本体ギリギリのスペースだと、どうしても物理的に回避動作をしようとすると、ぶつかってしまうケースが出ているのかもしれません」という回答でした。
新ルーロは「走行を覚えているのではなく、掃除のたびに部屋の状況を検知して走行している」とのこと。それゆえに、家具などの配置に多少の変化があってもうまく対応してくれると思っていたので、やはりまだまだ弱点はあるようです。
また、センサーにホコリがつくと検知性能が下がります。試しにセンサーをお手入れしてみると、充電台への帰還と一部の動きは改善されたことから、センサー部分の汚れが精度落ちの一因になっていたことは確認できました。
お手入れのとき気付いたこととして、センサー部分にホコリが溜まりやすいようにも感じます。たくさんの高精度なセンサーを備えているだけに、通常のロボット掃除機よりもセンサー周りのこまめなお手入れが必要かもしれません。
○吸引力は特段パワフルではなけど、動作音が静かなのがイイ
もう1つ新たなユニークな機能として追加されているのが「otomo機能」です。ルーロが人の足を認識して追いかけて、人が止まった場所の周辺をスポット掃除してくれる機能です。結論としては、個人的にはあまり使いませんでした。
ペットのようでかわいい機能ですが、正直、一連の動作をして掃除させるよりも、目的の場所までルーロを手で持っていったほうが早いからです。とはいえ、本体を持ち上げるのがつらい小さな子どもや、かがむのがつらいお年寄りには、便利な機能ではないでしょうか。
吸引性能に関しては、ロボット掃除機としては一般的なレベルだと思います。吸引口の回転ブラシは刷毛状でゴミを掻き出しやすく、ゴム仕様ではありませんが、糸くずや髪の毛などもそれほど絡まず、お手入れも簡単です。
掃除終了後には、ダストボックスにしっかりとゴミが溜まっています。ダストボックスの容量は0.25Lと小さめですが、ゴミを圧縮するため、実際の集じん容量としては約5倍の1.25L相当となり、不便は感じません。従来モデル同様、ダストボックスは水洗いができて、側面にフィルターお手入れ用の小さなブラシを装備しているなど気が利いています。
MC-RSF1000は吸引力が特段高いわけではありませんが、その反面、稼働中の音が静かなこともメリットです。「音ひかえめ設定」も用意されており、有効にすると本体の動きが遅くなり、実感音をさらに約20%抑えられるとのことですが、標準運転でも十分に静かです。吸引音やモーター音が小さいだけでなく、本体がカタカタ擦れ合うときに発生する音も少なく、静音性においては群を抜いていると思います。
最後に、ルーロといえば「三角形」がシンボル。新製品のMC-RSF1000も、もちろんこのスタイルです。ただし、従来モデル(MC-RS800)と比べてボディサイズが微妙に大きくなっており、部屋の隅には強い形状ではあるものの、小回りという点では従来モデルよりも物理的に多少の制約が生じる場面もあるでしょう。従来モデルのMC-RS800は、本体サイズが幅33×奥行32.5×高さ9.2cm、新モデルのMC-RSF1000は幅34.5×奥行33×高さ9.9cmです
MC-RSF1000の連続使用時間は約100分、最大稼働面積は約120畳と、これまでよりも長く動いて広い範囲をカバーできます。ルーロは、標準モデルの「MC-RS520」、幅と奥行が25cm未満の小型モデル「MC-RSC10」もラインナップしています。新ルーロのMC-RSF1000は、広めの部屋を得意とするモデルで、かつ最先端の技術を搭載して確かにかしこいロボット掃除機です。それだけに繊細な部分も多いという印象ですが……。
今後、ファームウェアのアップデートによっても改良されていくでしょう。高価な製品なので、家電製品のレンタルサービスを利用して、自宅との相性を確認してから購入すると安心です。
2020-07-17 01:45:58