iOS 14では通話画面が全画面で割り込むことがなくなる
iOS 14に対しては、個人的に、「iPhone体験のコンパクトデザイン」というコンセプトを見出しています。今回のシリーズでは、iOSにおける体験のコンパクトデザインについて触れていきたいと思います。
WWDC20で発表された新しいOSやAPIは、開発者向けにデベロッパープレビューのベータ版が配信されています。7月10日にはパブリックベータも開始され、一般の人が新しいソフトウェアを試す機会も出てきました。
今後のスケジュールは、各種OSについては秋の正式にリリースがアナウンスされています。また例年、既に披露された新機能が正式リリースの半年後となる主要なアップデートが待っています。
しかも、これまでのスケジュールだと、9月に新型iPhone、10月〜11月にiPad系のアップデートがあります。もしかしたらiPhoneの9月のリリースが遅れ、10月に毎週リリース、みたいなこともあるかもしれません。そしてApple Silicon搭載のMacが2020年中に登場します。
Macはとにかく、新しいハードウェアが実装する機能を、後からソフトウェアでのサポートが明らかになるパターンは毎年のことですので、新しいOS群をもう少し長い目で見ていく必要があります。
●iOS 14から「iPhone OS」へ?
さて、今回からiOS 14について触れていきます。そもそもこの新ソフトウェアが「iOS 14」としてリリースされるのかも、少し疑問の余地があるそうです。
そもそも2007年に登場したiPhoneには、当初の名前で「OS X iPhone」という名前で搭載されており、2009年から「iPhone OS」呼ばれるようになりました。そして、2010年から「iOS」の名称を使い始めています。
iPhoneを発表した際、スマートフォンにMac譲りのDarwinカーネルで動作し、堅牢性とセキュリティをもたらすとして、話題を呼びました。その後長らくマルチタスクは実装されてきませんでしたが、今から考えれば、ハードウェアのリソースの進化に合わせて封印していたようなものです。
コンピュータと異なる点は、通話などの割り込み処理が存在すること。またサーバーのように常に電源がONである点も、当時のMacとは異なる種類のコンピュータという見方が正しかったのではないでしょうか。
タッチ操作に対応し、割り込み処理がある、常時電源ONのコンピュータ向けのソフトウェア。これにiOS 5でアプリ切り替え、iOS 7でマルチタスク(バックグラウンドアプリ動作)をサポートしています。
iPhoneだけでなくiPadもカバーして「iOS」と呼ばれていましたが、2019年にiPad向けは「iPadOS」と分離されたことから、iPhoneむけも「iPhoneOS」とブランディングし直すのではないか、ということです。
じゃあHomePodはどうなるのか?という疑問については、既にシステムソフトウェアとして「audioOS」という名称が使われています。
こうして見てみると、
・ iOS(→ iPhoneOS?) ・ iPadOS ・ watchOS ・ tvOS ・ macOS ・ audioOS
といった具合で、OSラインアップが揃ってきました。また別の機会に触れたいと思いますが、MacのApple Silicon対応によって、これらすべてが、アップル設計のチップで動作する、というわけです。
●iOS 14のコンパクトデザイン、象徴的なのは?
iPhoneは元を正せば、電話由来のデバイスです。
しかしながら話している時間、特に携帯電話回線を通じた通話をしている時間は、iPhone利用の中で非常にわずかな割合になってきているのではないでしょうか。
LINEやMessenger、そしてFaceTimeといったアプリ経由の手段も増えていますし、文字ベースのコミュニケーションはもっと多くなっています。そうした中で、だからこその実装と言えるのが、「通話の割り込み画面」の変更です。
iPhoneで電話が着信すると、画面全体が通話画面で覆われます。これはロックされているときも、iPhoneを手に取って使っている時も同様です。後者の場合、メッセージをしていたり、ウェブページを見ているとしても、通話画面が割り込んでくる仕組みになっていました。
ある意味、これが当たり前でした。
しかしiOS 14では、iPhoneを操作しているときに着信した場合、全画面が覆われず、画面上部に通知のようなデザインで、着信を知らせてくれるようになりました。ここで、通話、着信拒否などの操作をすることができます。
この変化は、AirPodsを使っているiPhoneユーザーにとって、より自然に感じられるかもしれません。
iPhoneしか手に持っていない人は、iPhoneを耳に当てるため、画面全体が通話に割り込まれいても関係なく、画面を使うことはありません。しかしAirPodsを装着しているなら、iPhoneで見ていたアプリをそのまま継続しながら、AirPodsを通じて耳だけ通話に貸せば良いだけとなるからです。
もちろん、いままでの着信画面であっても、通話の割り込み画面をホームボタンや画面下端から上へのスワイプで閉じて他のアプリを見ながら、バックグラウンドで通話に参加することは可能でした。
しかし通話が主、アプリがサブではなく、通話をバックグラウンドで、という前提に置き換わった点は、個人的には非常に大きな変化だったとみているのです。これって、大きなパラダイムシフトと言えるのではないでしょうか。
もちろん、実態はすでに通話主体ではなくなっていたことは周知の事実ではありますが。
●Siriさんも割り込まない
通話の着信が全画面を覆わなくなったのですが、これは通常の音声通話だけではありません。MessengerやLINEなどの着信についても同様です。そもそも、全画面を覆う着信画面はiOSのCallKitというAPIを使っており、その割り込みの仕様が変わったため、基本的にはどのアプリも割り込まなくなるとみられます。
もうひとつ、画面全体を覆った割り込みをしなくなる機能があります。それがSiriです。
Siriを使う際、ホームボタンやサイドボタンの長押しだけでなく、Hey Siriと呼びかけたとしても、通話着信と同様に、画面全体をSiriの画面が割り込んで来ます。これもまた、iOS 14では変更されます。
iOS 14では、Siriを呼び出すと、画面下部に丸いアニメーションアイコンが現れるようになりました。結果は画面上部に通知のように表示される仕組みです。こちらも、画面全体を覆うことを避け、よりコンパクトにSiriが扱えるよう配慮されています。
スマートフォンを利用するスタイルが変化するにつれて、画面内のデザインも変化していくことになりそうです。
2020-07-20 19:41:21