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【解説・アップルiOS 14】飲食店を救う、あるいは淘汰する「App Clips」

iOS 14に流れる「体験のコンパクト化」というテーマ、そしてAndroidへのキャッチアップという市場における外せないポイントが交差する、象徴的な機能がApp Clipsです。

App Clipsはグーグルが実現していた「Instant Apps」のiPhone版というイメージ。いわばアプリの一部分の機能を切り出して利用できるミニチュア版、出張所、みたいなイメージでしょう。

こうしたミニアプリが必要となったのは、おそらく皆さんも経験があると思いますが、街中、あるいは店頭で、会員登録や決済をする際、「アプリをインストールしてご利用下さい」と言われてしまったときの面倒くささ。

簡単に言えばこれを解決するための手段が、Instant Appsであり、App Clipsというわけです。ユーザーとしてみれば、面倒なダウンロード→新規ユーザー登録→決済手段登録という手順を回避できて、店側としては客に嫌な顔をされず、デジタル化された店舗サービスを、その場ですぐ提供でき、エンゲージメントを高める手段として有効活用できる、というわけです。

●10MB制限のインスタントアプリ

起動からしてスマートです。NFCタグにiPhoneを近づけて起動もできるし、QRコードの読み込み、地図アプリの店舗情報から、Siriによる位置情報をもとにした提案、Safari内のバナー、iMessageのURL送信といった手段が用意されています。App Storeで検索、という手順を追う必要がありません。

加えて、1つのアプリで、複数のApp Clipsを設定可能です。たとえばテイクアウトと着席がある飲食店の場合、テイクアウトの注文用App Clipsと、席の予約用のApp Clipsを用意しておくこともできる、というわけです。

あるいはシェアバイクの場合、QRコードにその自転車のIDを含めたアドレスを入れておくことで、読み込んだ自転車を借りるApp Clipsを実現することができます。

App Clipsには10MBの制限があります。そのため、もし店頭でダウンロードする場合も瞬時に済みますし、写真がパンパンでストレージ残量が逼迫している場合でも利用できるはず。

確かに体験のコンパクト化に大きく貢献することになりますが、それ以上に、新興国でのスマートフォンの使い方への対応、という側面も見逃すことができません。

たとえば東南アジアのような新興国では、エントリーレベル、あるいはミドルレンジのスマートフォンが使われています。そのため、処理能力もストレージも比較的少ないため、入れたアプリはすぐに消す、という使われ方が見られます。

●ユーザー登録と支払いもインスタント

ここでうまいな、と思ったのは、App Clips内でのユーザー登録はSign In with Apple、支払いはApple Payを利用する点です。いずれも、Appleがこれまで用意してきたセキュリティに配慮したログインあるいは支払いの仕組みです。

確かに、せっかくApp Clipsで瞬時にミニアプリが立ち上がっても、そこでメールアドレスとパスワードを決める作業が入ってくると体験そのものはインスタントになりません。そこで、ボタン1つでログインが終了するSign In with Appleを使うと言うわけです。

また支払いについても、Apple Payを使うことで、クレジットカード番号を引っ張り出してこなくても済みます。だったらレジでカードを使った方が素早くなってしまうわけで……。

アプリそのものの体験をコンパクトにすることができたのは、セキュリティに配慮しながら、付随する体験もコンパクトできていたから、ということになります。

●懸念はむしろ、店舗側

App Clipsを飲食店に限って言えば、顧客に対してモバイルオーダーを促すことで、店舗での注文や支払いのやりとりをなくし、テイクアウトならピックアップだけのために店を訪れる形となり、店の滞在時間を極めて短くすることができます。

これは、既存の店舗では、忙しい時間帯の売上のネックをなくすことを意味します。例えば米スターバックスは、いち早くアプリを介したモバイルオーダーを取り入れることで、既存店の売上を毎四半期15%ずつ伸ばしていた期間がありました。

若干煩雑な注文を、ゆっくりもっさりとこなす店員がネックで、レジに行列ができたら負け、という世界。これをアプリ経由で注文を受けることで、店舗スタッフはドリンク作りに専念でき、売上が上がるというわけです。

これは大きなチェーン系の飲食店やファストフードだけでなく、たとえばサンフランシスコの金融街にある個人経営のおにぎり屋さんも同様です。昼休みの1時間にあわせて午前中におにぎりを作っておくのですが、売上のネックはレジで、1人に2〜3分かかってしまえば、1時間で20〜30人しか買ってもらえません。

そうした問題解決にモバイルオーダーは非常に有効で、App Clipsはより手軽にユーザーに使ってもらえる道を作り出すことになります。しかしながら、確かにApp Clipsはユーザーにとっては手軽ですが、個人や小規模ビジネスにとっては、結局アプリ開発というハードルが残ってしまいます。資金力やデジタルへの理解がなければ、アプリを活用してビジネスを効率化する土俵にすら立てません。

アップルは、アプリ対応できない店舗の淘汰を望んでいるのか、もう少し柔軟に街の中をモバイル対応していく方法を模索するのか、という別の問題が浮かび上がってきます。


2020-07-22 19:20:22



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