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形成直後の“赤ちゃん銀河”を発見、宇宙最後の銀河の可能性も - 東大など

東京大学(東大)や国立天文台などからなる国際研究チームは2020年8月1日、現在の宇宙に残る、形成して間もない銀河を複数発見することに成功したと発表した。すばる望遠鏡の大規模データと、機械学習に基づく新手法を組み合わせることにより実現した。

学習院大学など、赤外線でも検出できない生まれたての恒星を発見

これにより、形成初期銀河の存在を現在の宇宙で実証するとともに、標準的宇宙論モデルの裏付けにもなった。さらに、宇宙が誕生してから約2億年ごろに、銀河がどのように形成されていったか、その期限や性質についても理解が進むと期待される。

研究成果は米国の天体物理学誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に、8月3日付けで掲載される予定。

宇宙はいまから約138億年前、ビッグバンと呼ばれる大爆発から始まったとされる。誕生した直後の宇宙は、水素やヘリウムといった軽いガスが充満していたと考えられている。

そして宇宙の誕生から約2億年が経ったころ、宇宙で初めての恒星や、その集合体である銀河が誕生。そうした恒星の内部で起こる核融合反応などで、生命の源となる酸素や炭素、鉄といった重元素が生まれていった。

つまり、現在の宇宙には、重くて年老いた、そして酸素などをたくさん含んだ銀河があるものの、生まれたばかりの宇宙には、軽くて若い、また重元素が含まれていない銀河がたくさんあったと考えられている。

しかし、これまで人類が観測してきた銀河は、宇宙の誕生から5億年以降に生まれたものばかりであり、つまり生まれたばかりの宇宙にあったはずの形成間もない銀河はまだ観測できておらず、その性質や起源などはわかっていない。

そんななか、標準的な宇宙論によると、現在の宇宙にもわずかに形成初期の銀河が残っている可能性があると予言されていた。そして実際に、近年の観測で、「極重元素欠乏銀河」という銀河が見つかりつつある。

極重元素欠乏銀河は、恒星の集合体である銀河でありながら、重元素量(酸素の含有量)が、ひとつの恒星である太陽の10%以下しかない天体のことで、たとえば「IZw18」という銀河は、太陽の2.7%しかない。また、質量も太陽の質量の約100万倍と小さく、さらに誕生から1億歳以下と若いなど、形成初期の銀河の性質を備えていることがわかってきた。

そして、現在の宇宙にある、こうした赤ちゃんのような銀河について調べれば、宇宙誕生直後に生まれた銀河(初期宇宙銀河)についてもわかるのではないか、つまり初期宇宙銀河の「生ける標本」なのではないか、と考えられ、世界中で研究が進んでいる。

しかし、極重元素欠乏銀河を観測するには、大きく3つの課題があった。

1つ目は、こうした形成初期の銀河は、現在の宇宙では希少であり、発見が難しいこと。2つ目は、従来の観測方法では、明るい銀河しか観測できず、生まれたばかりの暗い銀河を見つけるのは難しいこと。そして3つ目は、従来使われていた銀河の色選択手法では、間違いが多かったり、時間がかかったりすることである。

そこで今回、元東京大学大学院の小島崇史博士と国立天文台/東京大学宇宙線研究所の大内正己教授が率いる国際研究チームは、こうした課題を解決するため、すばる望遠鏡の大規模データと、機械学習を組み合わせた新手法を開発した。

まず1つ目と2つ目の課題については、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ(HSC、Hyper Suprime-Cam)戦略的観測プログラムのデータを使うことで解決。HSCは非常に広い範囲を、暗いところまで深く撮像でき、従来の100倍暗い天体も観測できるという特徴をもつ。

ただ、こうして集められた膨大なデータのなかから、形成初期の銀河だけを探し出すのは、3つ目の課題にもあったように難しく時間がかかる。そこで研究チームは、ディープ・ニューラル・ネットワークという機械学習の一種を用いた新手法を新たに開発。さまざまな天体の色を機械に覚え込ませることで、形成初期の銀河と、今回の研究の対象ではない他の天体とを自動的に、また正確に分類できるようにした。

その結果、HSCが集めた約4000万個の天体のデータから、27個にまで形成初期の銀河の候補を絞り込むことに成功。そしてそのなかから、4個の候補について、ケック望遠鏡、すばる望遠鏡、そしてマゼラン望遠鏡にある高性能な分光器で観測した結果、すべてが形成初期の銀河であることが判明した。

特筆すべきは、そのなかのひとつである、ヘラクレス座の方向、地球から4.3億光年離れた位置にある「HSC J1631+4426」と呼ばれる銀河について、酸素含有量が太陽の1.6%しかないことが判明。この酸素含有量は、これまで発見されたどの銀河よりも小さく、最小記録を樹立した。これほど酸素含有率が低いということは、この銀河にあるほとんどの星が、ごく最近作られたことを意味している。

研究チームを率いた一人である大内氏は、「このHSC J1631+4426に含まれる星の総質量は80万太陽質量で、私たちが住む天の川銀河のわずか10万分の1ほどしかないことが明らかになりました」と語る。すなわち、HSC J1631+4426は銀河でありながら、天の川銀河を構成する星団1つと同程度の質量しかなく、きわめて軽い。

また、その年齢も約1000万年と、天の川銀河の約1000分の1というきわめて若い、赤ちゃんのような形成初期の銀河であると結論づけられた。

この研究の意義について、研究チームは「宇宙ができたばかりのころには、このような形成初期の銀河が多くあったと考えられていますが、標準的な宇宙論によると、現在の宇宙にもわずかに形成初期の銀河が残っている可能性があると予言されていました。今回の発見は、形成初期銀河の存在を現在の宇宙で実証するとともに、標準的宇宙論モデルの裏付けにもなりました」と語る。

また、宇宙は数十億年前から、暗黒エネルギーが優勢となり、加速膨張が進み、宇宙の物質密度が急激に減少しつつあると考えられている。このような宇宙では、重力によって新たに物質が集まることが難しくなるため、近い将来(いまから300億年後から1500億年後)には、新しい銀河が誕生しなくなる時代が到来すると予想されている。したがって、HSC J1631+4426は最後の世代の銀河の1つではないかとも考えられるという。

一方、そもそもの研究の発端である、「生まれたばかりの宇宙にあったはずの形成初期の銀河」が、今回見つかったような「現在の宇宙にある形成初期の銀河」がまったく同じようなものであるかは、今回の研究だけではわからない。その決着をつけるためには、実際に「生まれたばかりの宇宙にあったはずの形成初期の銀河」を観測する必要がある。

現在、米国航空宇宙局(NASA)は、次世代の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」を開発しており、完成して運用が始まれば、生まれたばかりの宇宙の姿さえも観測できると期待されている。

しかし、何の信号を取れば、「生まれたばかりの宇宙にあったはずの形成初期の銀河」を観ることができるのかどうかという肝心なことが、じつはまだわかっていないという。

そこで、今回観測できた「現在の宇宙にある形成初期の銀河」のデータが、そうした宇宙初期かつ形成初期の銀河を探すために活用できる可能性もあるとしている。