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Armのライセンス形態はどうなっているのか AppleはどのIP?

RISCプロセッサの歴史連載でもおなじみ大原雄介さんがスタートした短期集中連載。テーマは今最も熱いRISCプロセッサ、“Apple Silicon”だ。Armアプリケーションプロセッサの変遷に続いて、第2回はAppleとArmの関係にも影響してくる、ライセンスの問題について。

 前回、Cortex-Aシリーズの製品の説明を一通り終わらせたところで、ライセンスの話をしておきたい。

 以前の記事にもちょっと書いたが、ArmはCPUのIP(Intellectual Property)を提供する企業である。ここでいうIPとは、プロセッサの「論理的な」設計図である。他に何があるかというと、「物理的な」設計図が必要である。

 例えばこちらは、2つのArduinoというマイコンボードで通信を行わせよう、というテーマの記事だが、下の方にある「回路図」が論理的な設計図、「実体配線図」が物理的な設計図になる。この記事の例ではブレッドボードを使っているが、実際はユニバーサル基板を使いたいとか、プリント基板を自分で起こしたいとか、あるいはちょっと太めの1本のケーブルにして、その中に回路を突っ込みたいとか、ニーズに応じて実体配線図は大きく変わることになる。これはCPUのIPも一緒で、ArmからCPUのIPを購入したメーカーは、それを基に物理的な設計図を自身で作成し、それをファウンダリーに委託して製造するという形になっていた。

 実は昔はArmも、こうした論理的な設計図以外に、物理的な設計図を販売していた時代もある。前者をSoft IP、後者をHard IPと呼ぶが、後者は特定のファウンダリーの特定のプロセスに最適化した、物理的な回路ブロックの設計図をそのまま提供するというもので、物理設計の手間がいらない分楽ではあるが、逆に設計の柔軟性が極端に少ないというものだった。

 それもあってHard IPは比較的早期に廃れたのだが、その代わりにArmが提供したのがPOP(Processor Optimization Package)と呼ばれる、もう少し包括的なIPである。

 これは特定のファウンダリーの特定のプロセスに最適化はしているが、物理的な設計図を作る手前あたりまでを提供するというものだ。

 論理的な設計図から物理的な設計図を作るにあたっては、何をどの程度まで最適化するか、を決めるのは面倒な作業である。俗にPPA(Power/Performance/Area)と呼ぶが、消費電力の最小化、性能の最大化、エリアサイズ(ダイに占めるCPU回路ブロックの面積)の最小化はしばしば相反する要求となる。性能をどのくらい、消費電力をどの程度、エリアサイズをどのあたりに設定するかは、常に妥協が強いられることになる。

 この作業をあらかじめArmの側で行い、うまくバランスの取れた形での物理設計用データを提供することで、物理設計の時間を最小限に抑えよう、というものだ。Cortex-Aの場合、生のCPU IPよりも、昨今ではこのPOP IPを利用するケースの方が多くなりつつある。

 ただ、この場合ベンダーAもベンダーBも、同じPOP IPを使って同じファウンダリを利用すると、そこでは性能差が出なくなる。ここで差別化したい、というメーカーに対してArmが提供したのが、Architecture Licenseである。Architecture Licenseでは、Armの命令セット(Armv7-AなりArmv8-Aなり)を利用したCPUを自分で作る権利が与えられる。ただしここで論理的な設計図は提供されない。メーカーは自身でまず論理的な設計図を作るところから作業を始める必要がある。