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次世代移動通信システム「5G」とは 第25回 扱いにくいミリ波の活用に「FWA」が有望視されている理由

5G向けに割り当てられた周波数帯の中でも、とりわけ活用がしづらいと言われているミリ波。その有望な活用方法と見られているのが、固定通信の代替として利用するFWA(Fixed Wireless Access)です。光回線のネットワークが充実している日本でも、5GによるFWAの活用が広がる可能性はあるのでしょうか。

高速通信とスマートフォンではない、「5G」が注目を集める理由

ミリ波は高速だが扱いにくく事業者には不人気

5G向けとして新たに割り当てられた周波数帯には、大きく分けて6GHz以下の「サブ6」と、30GHzより上の「ミリ波」の2つが存在します。日本ではサブ6として3.7GHz帯と4.5GHz帯、ミリ波に分類される28GHz帯の、3つの帯域の割り当てがなされていますが、各社の利用状況を見ると積極的に利活用がなされているのは圧倒的にサブ6です。

その理由は、やはり周波数が高いほど障害物に弱いので遠くに飛びにくいという電波の特性があるため。とりわけ周波数が高いミリ波は一層障害物に弱いことから広範囲をカバーするのが難しく、広いエリアをカバーすることが求められている携帯電話会社ではサブ6の利活用を重視しているようです。

一方、現在28GHz帯のみが割り当てられているローカル5Gに関しても、28GHz帯の利用は試験的な活用にとどめ、今後予定されている4.8GHz帯の割り当てがなされた後の本格サービス開始を検討している事業者が多いようです。その理由としては28GHz帯の扱いづらさに加え、4Gと5Gを一体にしたノンスタンドアローン(NSA)での運用が求められ、4Gのネットワークを持たないローカル5G事業者にはインフラ整備の負担が大きいことが挙げられています。

このように現状を見る限り、ミリ波は事業者側にとって人気のない帯域となっていることが分かります。ですがミリ波はサブ6より一層広い帯域幅を確保できることから、より一層の高速通信を実現できるメリットがあるのも事実です。

実際国内の携帯4社には28GHz帯が400MHz幅ずつ割り当てられていますが、これは3.7GHz帯や4.5GHz帯の4倍の帯域幅なのです。またローカル5G向けの28GHz帯は、現在のところ100MHz幅の割り当てのみとなっていますが、将来的に衛星通信との調整が済めば900MHz幅が確保される予定となっています。

ミリ波のメリットを生かせるFWA、日本での展開は

今までにない高速通信が実現できるが、使い勝手が非常に悪いミリ波をどうサービスに落とし込むかは、多くの事業者にとって課題となっているようですが、実は有望な用途が1つ存在します。それが「FWA」(Fixed Wireless Access、固定無線アクセス)です。

これは要するに、無線で固定のブロードバンド回線を代替するというもの。モバイル回線をそのまま固定回線として活用するケースや、固定回線のラストワンマイル部分を無線で提供するケースなど、FWAにはいくつかの事例がありますが、日本ではソフトバンクの「SoftBank Air」や、UQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」などで提供している据え置き型のWi-Fiルーターのように、前者の事例がよく知られているのではないでしょうか。

固定ブロードバンドが充実している日本では注目度が高くないFWAですが、海外では国土が広く、固定回線を全国に引くのが難しい国も多いことから、FWAに対する注目度はかなり高いようです。米国で2018年に開始された独自仕様を含む5GのサービスがFWA用であったことも、FWAに対する期待の大きさを示しているといえるでしょう。

そのFWAを拡大する上で注目されているのが、5Gとミリ波です。この組み合わせが高速大容量通信に適しているというのはもちろんですが、端末を移動する必要のないFWAであれば、あらかじめ障害物のない場所に基地局とアンテナ、端末を設置することで、ミリ波の特性を存分に生かしたブロードバンド通信を実現しやすいのです。

実際、クアルコム社長のクリスティアーノ・アモン氏は「IFA 2020」のオンライン基調講演において、世界のモバイル通信の25%はFWAが占めると予想。さらにミリ波にも対応した「フル5G」の重要性を訴え、特にFWAの実現にはミリ波が不可欠だと話すなど、スマートフォン向けだけでなく、5Gとミリ波によるFWAの広がりにも強い期待を寄せている様子を見せていました。

では、日本において5Gとミリ波を活用したFWAが広がる可能性はあるのでしょうか。その可能性を秘めているのが、現在はほとんど使われていない固定回線のラストワンマイルとしての活用です。

固定ブロードバンドは回線を引くのに宅内工事が必要だというのがユーザー側のデメリットとしてよく指摘されますが、実は回線を引いたり、撤収したりするのに手間とコストがかかるというのは、事業者側にとっても大きな負担なのです。しかしながら5Gとミリ波によるFWAで宅内に回線を引き込む部分だけを無線化できればそうした工事の負担を最小限に抑える、あるいは衛星放送のように、ユーザーに設置を任せられる可能性も高まる訳です。

中でも5GでのFWAに期待を寄せているのがケーブルテレビ会社のようで、ジュピターテレコムや秋田ケーブルテレビなどいくつかのケーブルテレビ会社が、既にFWAでの活用に向けてローカル5Gの免許取得を実施しています。また2019年12月にはインターネットイニシアティブと住友商事、ケーブルテレビ事業者5社などが共同で、無線サービス基盤を構築する「グレープ・ワン」という会社を立ち上げ、ケーブルテレビ事業者がローカル5Gを活用しやすくする環境整備を進めようとしています。

そうしたことから国内でも、地域は限られるかもしれませんが意外と早い段階で、FWAによる5Gとミリ波の活用事例が見られることになるかもしれません。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら