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「あと5年でデスクトップ型量子コンピューターが登場する」と量子コンピューター企業CEOが発言

米国時間9月14日、TechCrunch Disrupt 2020で量子コンピューター系スタートアップのリーダー3名が、TechCrunchの編集者であるFrederic Lardinois(フレデリック・ラーディノイス)との座談会に出席し、量子コンピューター技術の将来について話し合った。そこでIonQ(アイオンキュー)のCEO兼社長であるPeter Chapman(ピーター・チャップマン)氏は、現在からわずか5年でデスクトップ型の量子コンピューターを実現できると発言したが、この楽観的なタイムラインに他の参加者からの同意は得られなかった。

「今後数年以内、5年かそこらで(デスクトップ量子コンピューターを)見かけるようになります。私たちの目標はラックマウント式の量子コンピューターです」とチャップマン氏。

だがそれは、 D-Wave Systems(ディーウエイブ・システムズ)のCEOであるAlan Baratz(アラン・バラツ)氏にはやや楽観的に聞こえた。バラツ氏の企業が開発に取り組んでいる超伝導技術には、希釈冷凍機と呼ばれる特殊な大型の量子冷蔵ユニットが必要となるが、その点から見ても5年間でデスクトップ型にするというゴールは実現性が乏しいという。

Quantum Machines(クオンタム・マシンズ)のCEOであるItamar Sivan(イータマー・シバン)氏も、そうした技術を手にするまでには数多くのステップを踏む必要があり、実現には数多くの難関を越えなければならないと考えている。

「この挑戦は、決まった適切な素材を1つ見つければよいとか、特定の方程式を解けばよいといった性質のものではないのです。解決すべき問題は学際的なもので、まさにチャレンジなのです」とシバン氏。

チャップマン氏は、特殊な量子マシンが現れる可能性も想定している。例えばクラウドを通じて量子コンピューターに効率的なアクセスができない軍用機などに搭載されるものだ。

「クラウド内に組み込まれたシステムに依存できないのです。そうなれば、飛行機にそれを積むしかない。量子コンピューターを軍事利用するためには、辺境で使える量子コンピューターが必要になります」と彼は話す。

1つ指摘しておくが、IonQの量子コンピューターへのアプローチは、D-WavesやQuantum Machinesのものとは異なっている。

IonQでは、原子時計における先進的な技術がその量子コンピューター技術の中核となっている。Quantum Machinesは、量子プロセッサーの開発は行わず、そうしたマシンを制御するハードウェアとソフトウェアのレイヤーを開発している。それらは、従来型のコンピューターでは不可能なレベルに到達しつつある。

一方、D-Waveは「量子焼きなまし法」と呼ばれる方法を採用している。何千ものキュービットを生成できるが、その代償としてエラー率が高くなるというものだ。

今後数十年、技術がさらに進歩する過程で、これらの企業はみなパワフルなコンピューティングのスタート地点を顧客に提供することで、価値を提供できると考えている。そのパワーを制御すれば、昔ながらのコンピューティングという観念は一変する。しかしシバン氏は、そこに至るまでにたくさんのステップがあると語る。

「これは大変な挑戦です。しかも、量子コンピューティングのスタック内の各レイヤーごとに、そこに特化した高度に専門的なチームを必要とします」と彼は話す。その問題を解決する1つの方法として、こうした根本的問題のそれぞれを解決する幅広い協力関係の構築がある。今すぐ多くの人たちのために作ろうと決めたにしても、クラウド企業と協力しなければ、量子コンピューターは実現できない。

「この点において、2020年はとても興味深い提携関係がいくつか見られました。これは、量子コンピューターの実現に欠かせないものです。IonQとD-Wave、そしてその他の企業は、他の企業のクラウドサービスを通じて独自の量子コンピューターを提供するクラウドプロバイダーと提携しました」とシバン氏。彼の会社も、数週間以内に独自のパートナーシップを発表すると語っていた。

これら3つの企業の最終目標は、本当の量子パワーを発揮できる汎用量子コンピューターをいずれ完成させることだ。「私たちは、これまでのコンピューターではできなかったことを可能にするために、汎用量子コンピューターへの前進を続けることができ、また続けるべきなのです」とバラツ氏は話す。しかしバラツ氏も他の2人も、このゲームのラストに至る道程の、まだまだ序盤のステージにいるという認識は持ち合わせている。