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次世代移動通信システム「5G」とは 第27回 NTTドコモの完全子会社化を打ち出すNTTの「IOWN」と5G・6Gの関係

NTTは2020年9月29日、NTTドコモをTOB(株式公開買い付け)によって完全子会社化すると発表し、大きな驚きをもたらしました。完全子会社化の背景にはさまざまな要因が考えられますが、5Gやその先を見据えた取り組みとしては、NTTが次世代のネットワークとして実現を目指している「IOWN」の存在が大きいと見られています。

高速通信とスマートフォンではない、「5G」が注目を集める理由

完全子会社化で研究開発の連携も積極化

2020年9月29日、NTTがNTTドコモをTOBで完全子会社化するとの報道を見て驚いた人も少なくないと思います。NTTはNTTドコモの株式を1株当たり3900円で取得して完全子会社化するとのことで、合計で約4兆3000億円という、国内企業としては最大のTOBとなることは確実でしょう。

完全子会社化の発表が、かねて携帯料金引き下げを公約に掲げる菅義偉氏が内閣総理大臣に就任して間もない時期に重なったこと、そしてNTTの32.36%の株式を持つのは「政府および地方公共団体」、つまり日本政府であること。そうしたことから今回の完全子会社化は、携帯電話料金引き下げのためではないかという見方も広がったようです。

もちろん、NTT側もTOBに当たっては携帯電話料金引き下げを意識していない訳ではないでしょうが、両社の発表内容を見ると、大きな狙いの1つはここ数年来NTTドコモの業績が振るわないことから、NTTによるテコ入れで競争力強化を図ることのようです。具体的にはNTTコミュニケーションズやNTTコミュニケーションズの事業を移管するなど、NTTドコモとNTTのグループ企業との連携を強化して法人事業やサービス創出、コスト競争力などを強化していくことなどを挙げています。

元々は国営だったNTTグループは電気通信事業法で禁止行為が設けられており、グループ内での連携には色々と制約はあります。しかし、NTTドコモとNTTコミュニケーションズらが連携することは法的にも問題ないことから、グループ内の連携強化による競争力強化が大きな狙いであることは確かなようです。

そしてもう1つ、大きな狙いとなるのは研究開発の強化です。NTTとNTTドコモはともに自社独自の研究施設などを持ちますが、従来別々に研究を進めていました。ですが完全子会社化によって連携を大幅に強化することで、5G、さらには6Gに向けた研究開発体制の強化を図る狙いも大きいようです。
研究体制強化でIOWNと6Gによる次世代ネットワークに注力

そのNTTが6G時代に向けて研究開発に力を注いでいるのが「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)です。これはNTTが2030年頃の実用化に向けて推進している次世代コミュニケーション基盤の構想であり、NTTとインテル、ソニーの3社を中心に立ち上げた「IOWN Global Forum」によって実現を目指しているものです。

なぜ、NTTがIOWN構想を打ち出すに至ったのかと言えば、そこには今後を見据えるに当たり、既存のインターネット技術でのネットワークには限界が見えてきたことが挙げられています。5GでもIoTの利用が大きな注目を集めていますが、IoTによってネットワークに接続するデバイスが膨大となり、現在以上のデータをネットワークでやり取りする上では、現在のインターネットで主流のTCP/IPのプロトコルを主体としたネットワークでは限界が来ると考えているようです。

また、ネットワークに接続するデバイスが増えることで消費電力が増えることも、大きな課題の1つとして挙げています。そうしたことからIOWNでは、NTTが強みを持つ光ベースの技術を中心とした技術革新でネットワーク技術のあり方を大幅に刷新することで、一層の大容量通信や情報の処理ができるネットワーク基盤を構築することを目指すものとなるようです。

そして、IOWNは大きく3つの要素から構成するとされています。1つ目は「オールフォトニクス・ネットワーク」で、これはネットワークだけでなくデバイスやチップ間の伝送などにも光ベースの技術を取り入れることで、さらなる高速大容量・低遅延・低消費電力を実現するというもの。具体的には、波長を制御する伝送装置や光電融合素子の開発による100倍の電力効率化の実現、そして光ファイバの一層の多重化やマルチコアファイバの拡充で125倍の伝送容量拡張などを目指すとしています。

2つ目の要素は「デジタルツインコンピューティング」。これは現実空間にあるモノや場所をサイバー空間上に再現する「デジタルツイン」という技術を活用し、サイバー空間上で人やモノの行動を自在に再現・試行できるようにするというものです。

そして3つ目は、さまざまICTリソースを最適に調和させ、必要な情報を提供する「コグニティブ・ファウンデーション」というもの。ICTリソースを一元的に連携し、管理する「マルチオーケストレータ」を通じて、クラウドやエッジ、さらにはネットワークを通じて得られた情報など、さまざまなICTから得られる情報を最適化して提供する仕組みとなるようです。

そして、NTTはIOWNと同じ時期に実現されると見られる6Gの技術開発に同時に取り組むことで、固定・移動にまたがる新しいネットワークの実現を目指すとともに、6G時代のネットワーク技術で世界的な主導権を獲得したい狙いがあるものと見られています。実際、IOWNが重視している高速大容量通信、そして低消費電力などは総務省の「Beyond 5G推進戦略」でBeyond 5Gに求められる機能の1つとされており、IOWNと6Gの双方を組み合わせての実現を検討している部分もあるように感じられます。

実は標準化団体の3GPP(Third Generation Partnership Project)でも、5Gの新しい仕様となる「リリース16」で、固定とモバイルのネットワークアクセスの双方を5Gのコアネットワークに集約し、融合する「5G Wireless and Wireline Convergence」(5WWC)が盛り込まれるなど、固定とモバイルを融合する取り組みは確実に広がっています。そうした意味でも、NTTがIOWNの実現に向けてはNTTドコモのリソースを取り込み、固定・モバイル双方にまたがった技術開発を積極化する必要があったのかもしれません。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら