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謎多き存在「iPad Air」と「A14 Bionicチップ」を読み解く

Appleは、米国時間9月15日にオンラインでイベントを開催し、Apple WatchやiPadといった新製品と、新サービスについて発表を行った。イベントで個人的に注目したトピックについて、改めて深掘りしていきたい。

これから買うなら「Air」「Pro」どっち? 最新iPadのラインナップを整理してみた

最初のトピックは、A14 Bionicだ。
中堅モデルながら最新のA14 Bionicを搭載した新iPad Air

Appleは例年9月に、iPhoneとApple Watchを刷新し、いくつかの製品もこのタイミングでアップデートしていた。2019年は第7世代iPadだった。2020年、iPhoneのアップデートは先送りとなったが、iPad(第8世代)、iPad Air(第4世代)、そしてApple Watch Series 6とApple Watch SEが登場した。このなかで驚きが大きかったのはiPad Airだ。

iPadラインアップのミドルレンジを構成するiPad Airは、2019年に第3世代モデルが登場した際、当時からすると1世代前のiPad Pro 10.5インチのボディデザインをそのまま流用しつつ、当時のiPhoneに搭載されていた最新チップであるA12 Bionicを搭載した。デザイン面、またチップの面で、上位モデルの“リサイクル”によって作られていたのだ。

今回登場した第4世代となるiPad Airは、現行モデルとなるiPad Pro 11インチのボディデザインに明るいカラーバリエーションを採用しつつ、ディスプレイは可変リフレッシュレートを実現するProMotionや600ニトの明るさといった性能を省くことで、iPad Proと差別化した。

ところが、チップについては、まだiPhoneにすら搭載されていない最新のA14 Bionicが採用されたのだ。
A14 Bionicの処理性能は、iPad ProのA12Z Bionicよりも抑えめか

Appleは、iPhone 4や初代iPadに搭載したA4から、iPhone向けチップを独自に設計しており、近年では台湾のTSMCが一括して製造している。TSMCは、微細化では最も優れた製造技術を有しており、その最新技術を確立するパートナーこそAppleだ。A12では7nmプロセスを最も早く実現したが、今回のA14 Bionicは5nm。世界で初めて消費者向け製品に採用されるプロセッサ製造技術だ。

一般的に、微細化は同じサイズのプロセッサにより多くのトランジスタを内包でき、処理性能を向上できる。同時に、省電力性も高まる特性がある。バッテリー搭載量が限られるモバイルデバイスにおいて、プロセッサの微細化は、持続時間を犠牲にせず処理性能を高める手段となっていた。

今回のA14 Bionicでは、6コアのCPU、4コアのGPUを備え、機械学習処理を受け持つニューラルエンジンは16コアにまで拡大された。総トランジスタ数は118億個にも達する。1秒間の機械学習処理は11兆回に達し、2倍の速度に向上している。

iPadの場合、iPhoneに比べてバッテリーサイズは巨大になり、必ずしも常時モバイル通信をするわけでもないため、微細化の恩恵はむしろ処理性能向上にウェイトがかかる。A12 Bionicに対して2世代進歩したA14 Bionicを備えるiPad Airは、処理性能で40%、グラフィックス性能で30%向上した。

まだ実機を試していないが、Geekbench 5での実測データから、処理性能のスコアを予測してみる。

A12 Bionicを搭載するiPad Air(第3世代)はマルチコアで2527、Metalで5408というスコアだった。A14 Bionicを搭載するiPad Air(第4世代)は、マルチコアで3537、Metalで7030あたりのスコアになると考えられる。

プロセッサの世代は古いながら、コア数を増加させたA12Zを搭載する2020年モデルのiPad Pro 11インチのスコアは、マルチコアで4705、Metalで11619を叩き出している。A14 Bionic搭載のiPad Airが登場しても、iPad Proはプロセッサで約30%、グラフィックスで約65%性能が高く、最上位モデルの存在感を維持することになるだろう。
機械学習処理のパフォーマンスに力点

iPhone 11が搭載するA13 Bionicのパフォーマンスは、マルチコアで3285、Metalで7347というパフォーマンスを手元で確認している。iPadとiPhoneの違いは存在しているが、次期iPhoneにA14 Bionicが搭載されることが確実視される中で、パフォーマンスの増加幅はさほど大きくないのかもしれない。

だとすると、バッテリー持続時間に注目が集まる。プロセッサの微細化は集積度を高めることと、省電力性が向上することが期待されるからだ。iPhone 11の端末サイズの変動、ディスプレイ方式など、バッテリー持続時間に影響する要素はたくさん存在するが、チップに関しては、より高いパフォーマンスをより少ない電力で実現する存在となるのではないだろうか。

A14 Bionicで大幅に性能向上しているのが、16コアへと成長した機械学習処理を受け持つニューラルエンジンだ。1秒間に11兆回もの計算を行うことができる。ニューラルエンジンは、機械学習処理のために単純な計算を膨大な量、高速にこなすことが求められる存在だ。通常のプロセッサを使うとバッテリー持続時間に影響するが、これを防いでくれる存在ともいえる。

例えばSiriの音声解析、カメラアプリの画像処理、写真の分類などが、身近なアプリでの活用例だ。これらのほかには、写真編集アプリで解像度を高めたり、ビデオ編集アプリでシーン解析を行う際にも利用される。

Appleはアプリに対して、機械学習処理を活用しやすい環境を提供してきており、じわりじわりと、Appleプラットホームでの機械学習処理を生かしたアプリが増加している。しかも、2020年末に登場するApple Silicon搭載のMacにも、当然ながらニューラルエンジンが搭載される。機械学習処理を低消費電力で高速にこなすコンピューティングが、Macの差別化要因として今後際立ってくるかもしれない。
新iPhoneのお披露目に合わせてiPad Airの発売日も発表か

そんな楽しみなA14 Bionicを搭載するiPad Air(第4世代)。縁なし、ホームボタンなしのLiquid Retinaディスプレイは、iPad Proに準拠する新しいiPadのデザインへの進化だ。トップボタンに新たに内蔵したコンパクトなTouch IDは、マスクを常に装着している昨今の新しい生活様式において、上位モデルに搭載されるFace IDよりも便利さを感じられるだろう。

では、Appleがアナウンスした「10月発売」とは、一体いつのことなのだろうか? そもそも、iPhoneの発売が例年よりも数週間遅れることは、2020年第3四半期決算の電話会議の際に明らかにしていたことだ。そしておそらく、iPad Airと同じA14 Bionicチップを搭載して登場することになるだろう。

だったら、iPhoneへのサプライズを残すため、iPad Airを発表すべきではなかったのではないか?というアイディアも浮かぶ。だが、A12 Bionic搭載のiPad(第8世代)だけを発表してiPad Airをラインアップにそのまま残した場合、エントリーモデルとミドルレンジが同じプロセッサを搭載することになってしまう不整合性が生じる。

またユーザー心理としても、A12 Bionic搭載のiPadを手に入れた直後にA14 Bionic搭載のiPad Airが発表されると、後出しじゃんけんのようでイメージが悪い。だったら発表して、発売を待ってもらった方が親切だ。

という流れを考えると、iPad Airの発売は、次期iPhone発表のタイミングに前後するのではないか、と考えられる。iPhoneの発売が数週間延期される場合、10月中旬までがそのレンジに入る。しかし、11月3日は米国大統領選挙があるため、10月末に近づけば近づくほど、話題性を保つことが難しくなる点も、考慮しておくべきだ。

著者 : 松村太郎 まつむらたろう 1980年生まれのジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。Twitterアカウントは「@taromatsumura」。 この著者の記事一覧はこちら