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次世代移動通信システム「5G」とは 第28回 iPhone 12も対応のミリ波、ビジネスで注目される高精度な位置推定

全機種が5Gに対応した米アップルの「iPhone 12」シリーズが、米国向けモデルでミリ波への対応を打ち出すなど、ミリ波を使う端末は着実に増加していますが、その扱いづらさゆえ活用には依然課題があるのも事実です。ではビジネス用途でミリ波の特性を生かした活用方法にはどのようなものが検討されているのでしょうか。。→過去の回はこちらを参照。

高速通信とスマートフォンではない、「5G」が注目を集める理由

対応機種は増えるが活用に課題のミリ波

米国時間の2020年10月13日、アップルが新しいiPhone「iPhone 12」シリーズ4機種を発表しましたが、新しいiPhoneが初めて5Gに対応したことでも、大きな話題となったようです。モデムチップを巡るいきさつから5Gへの対応が大きく遅れていたアップルですが(第14回参照)、iPhone 12シリーズでようやく5G対応となりました。

ただ5Gへの対応が後発ということもあり、アップルはアンテナの工夫などでiPhone 12シリーズが対応する5Gの周波数帯の幅が非常に広いことをアピールしています。実際、国内で5Gに対応したスマートフォンが対応する周波数帯は5つ未満であることがほとんどですが、iPhoneはモデルにもよりますが、日本向けモデルで18、米国向けモデルでは20もの周波数帯をカバーしており、世界中の5Gに対応していることをアピールしています。

一方で、周波数が高いミリ波に対応するのは米国向けのモデルに限定され、ミリ波を使うことで理論値の通信速度が最大4Gbps(それ以外では3.5Gbps)となるようです。これはiPhone 12の発表イベントにCEOが登壇した米携帯最大手のベライゾンが、ミリ波での5Gエリア整備に力を入れていることが影響しているとみられ、米国向けモデルにはミリ波用のアンテナとみられる側面の凹みが設けられています。

ただ、国内でも徐々にミリ波対応のスマートフォンが増えつつある印象です。韓国のサムスン電子は、新しいスマートフォン「Galaxy Note20 Ultra 5G」などをミリ波に対応して提供していますし、富士通コネクテッドテクノロジーズの「arrows 5G」もミリ波への対応をアピールしています。

今後、ミリ波のエリア整備が進むにつれ、ミリ波対応端末は徐々に増えていくものと思われますが、一方でミリ波でのエリア整備に力を入れているベライゾンでさえ、サブ6を主に活用している他の携帯電話会社と比べ、5Gの接続率は決して高いとはいえない状況にあります。

ミリ波は帯域幅が広く高速通信が見込める一方、周波数が非常に高いため障害物に弱く、遠くに飛びにくいという課題を抱えていることから、使い方の試行錯誤が続いているのが現状のようです。
ミリ波は低遅延だけでなく高精度の位置推定にも役立つ

そのミリ波の活用に関しては、人が多く集まるスタジアムのような場所でのエリア整備や、第25回で触れたFWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)での活用などが有望視されていますが、これらは主にコンシューマー向けの活用といえるもの。

では産業用途など、ビジネスでの活用が期待されているのはどのようなものが挙げられるのかと言うと、それを知るためにはミリ波の特性を知っておく必要があるようです。

ノキアが2020年10月15日に実施した「NOKIA Future Connected 2020」で、ノキアソリューションズ&ネットワークスのCTOである柳橋達也氏は、ミリ波の特性として搬送波の送信間隔が短いことを挙げています。間隔が短ければ一度により多くのデータをやり取りできるようになるため、5Gの特徴の1つである「低遅延」の実現に大きく貢献するのだそうです。

低遅延は遠隔操作などでの利用が有望視されていることから、ミリ波の活用が低遅延を生かすソリューションの拡大につながる可能性は高いでしょう。しかし、柳橋氏はもう1つ、ミリ波の送信間隔が短いことを活かして端末の位置推定を高度化できることも大きなメリットだと話しています。

携帯電話のネットワークでは、端末の位置を割り出すために3つの基地局からの電波を用いて、三角測量に近い要領で位置を推定することにより、どの基地局に接続するかを判別しています。そして距離を測定する上では、基地局から発せられた電波を端末が受信するまでの時間を正確に測定することが重要になります。

この際、搬送波の送信間隔が長いと時間にずれが生じやすくなるのですが、間隔が狭いミリ波であればずれが生じにくく、より正確な位置を推定できるとのことです。それゆえ、従来メートル単位だった誤差が、ミリ波を活用した5Gでセンチメートル単位にまで精度を高められるよう、標準化に向けた議論を進めていると柳橋氏は説明しています。

位置を正確に測定できることで、例えば特に工場内のAGV(無人搬送車)やロボットなどの正確な制御などができるようになるでしょうし、現実のモノや場所を仮想空間に取り込み、さまざまなシミュレーションなどができるようにする「デジタルツイン」の正確性を高めるのにも有効です。

そうしたことからノキアでは、ミリ波がもたらす高精度の位置情報を、従来の5Gが持つ3つの特徴に並ぶ第4の軸として捉えてユースケースの開拓を進めるとしています。

5Gにエリアの広さが求められる現状ではミリ波の有効活用が難しいのは事実ですが、ある程度のエリアカバーがされてスタンドアローン運用がなされ、5Gの高度な利用が求められるようになった暁には、高いポテンシャルを持つミリ波の活用に脚光が集まると考えられます。そうした先の動向を見据える上でも、ミリ波の有効活用に向けた取り組みは引き続き注目される所です。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら