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アップル新型「iPad Air」完璧に近いコンピュータ

アップルは2020年10月23日、新型のiPad Airを発売した。第3世代となるミドルレンジのiPad Airは、シリーズとして新しいデザイン、最新のプロセッサを備え、現段階で完璧なタブレットといえる。見方を変えると「完璧なコンピュータ」と言うべきかもしれない。

●新デザインのメリット

iPad Airは10.9インチに拡大され、フチなしとなったLiquid Retinaディスプレーを備えて登場した。デザインは2018年に登場したiPad Pro 11インチを踏襲しており、6mm台と幾分厚みは増しているものの、角が落とされたアルミニウムとガラスの「板」という意匠そのままだ。

iPad Airは初代iPadと近しいサイズ、ホームボタンのみが前面にあるデザインが採用されてきた。今回フチなしディスプレーとなったため、ホームボタンは排除された。しかしFace IDを実現するTrueDepthカメラは採用されず、別の形でTouch IDが残された。

iPad Airのサイズは長さ247mm、幅178.5mm、厚さ6.1mm、重さ458g。厚みはiPad Pro 11インチより0.3mm厚く、重さは13g軽いが、長さと幅は共通化されており、Magic KeyboardやSmart Keyboard Folio、Apple Pencil(第2世代)と言ったアクセサリ群は共通化されている。

おそらく2018年モデル、2020年モデルのiPad Pro 11インチを持っている人は、iPad Airへの乗り換えの必要性を感じることはないだろうが、引き続き同様の形状やサイズを維持していくとすれば、アクセサリを買い換えず、本体だけを乗り換えていくサイクルを作り出すことができるだろう。

●新しいTouch ID

iPad Airに採用された新しいハードウェアは、Touch ID内蔵のトップボタンだ。Liquid Retina採用により、ディスプレイ面からホームボタンがなくなったことで、Touch IDを備える場所がなくなってしまった。そこで、活用しうるパーツとして、トップボタンに白羽の矢が当たった。

トップボタンは、画面の点灯・消灯、電源ONなどの役割を果たしている。オールスクリーンのiPhoneやiPadは、画面に触れれば画面が点灯するし、Magic Keyboardと組み合わせて使う場合、iPadを閉じれば画面が消えるため、その役割はだんだん薄れつつあるが、Touch IDを内蔵する場所としては最適と考えたのかもしれない。

Touch IDの元々の構造は、表面にサファイヤクリスタル、周囲を金属フレームとして指の設置を検出できるようにし、内部に指紋センサーを備える構造となっている。読み取った指紋データはプロセッサに保存される仕組みだ。

トップボタンはiPad Proの1.5倍サイズに拡大されているが、形は細長い形状。ここに指を押し当てて指紋を登録する必要があるため、正円だったホームボタンに比べると、登録作業は若干しにくいと感じた。

しかし一度登録してしまえば、360度どの方向で指を当ててもロック解除できる。登録の際は、指先をボタンの長辺に合わせて読み取らせるが、ロック解除の際にはボタンに対して直角に指を当てても、問題なく解除できるのだ。

ただし左右の指での登録は必要だと感じた。筆者は多くの時間Magic Keyboardを装着して使っていたが、その場合トップボタンは左上に来るため、左手の人差し指で指紋登録が必要だ。しかしiPad Airを取り外して縦長に構える場合、トップボタンは右上に来るため、今度は右手の人差し指を使うことになるのだ。

iPad Airを試す際は自宅の書斎やオフィスの個室などが多く、マスクをしていないシチュエーションばかり。iPad AirはFace IDではないので、指で解錠しなければならないのだが、つい画面を見たままロック解除を待ってしまうクセが抜けなかった。

筆者が2年近くiPad Proユーザーだったため、Touch IDがわずらわしく感じる原因となった。コロナ禍とはいえ、指紋認証から顔認証に移行してしまったユーザーは、なかなか指紋認証に戻りがたいかもしれない。

●驚くべきパフォーマンス

iPad AirにはA14 Bionicが搭載される。スマートデバイス向けとしては初めて5nmプロセスでの製造だ。同日発売のiPhone 12シリーズとともに採用されているが、iPhone 12と同様のメモリ4GB搭載チップがiPad Airに入っている。ちなみにiPhone 12 Proには6GBメモリが内蔵され、Dolby Vision方式で最大60fpsの撮影ができる。

iPad AirにはiPhone 12と同じA14 Bionicが搭載されているが、パフォーマンスには大きな差があった。Geekbench 5で手元のマシンを計測すると、iPad Airはマルチコアのスコアで4400前後を記録、グラフィックスのスコアは1万2700を超えた。これはiPhone 12、iPhone 12 Proと比較すると、マルチコアのスコアで10%、グラフィックスで25%高速に動作していることをあらわす。

一方、メモリ6GB、A12Z Bionicを搭載したiPad Pro 11インチモデルは、マルチコア4600、グラフィックス1万2200というスコアだ。

面白いのは、同じチップがたたき出すそのパフォーマンス差だ。iPhoneとiPadの違いは、画面サイズ、バッテリ容量、搭載するカメラなど多岐に渡る。このなかでパフォーマンス差に影響しそうなのはバッテリーではないだろうか。

A14 Bionicに限らず、プロセッサは、許容量はあるが、多くの電気を流せば、より高速に動作する。もちろんこれによって生じる熱を上手く逃がすこと、一定した電力共有を実現する電源まわりなど、備えるべきことも多い。iPadにはiPhoneより大きなバッテリーを搭載しており、より電力が必要になるピーク性能を高めて設定していても不思議ではない。

●これがコンピュータ、なのか?

iPhone 12シリーズ、iPad Airの登場と時を同じくして、Adobeは世界最大規模のクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX」をオンラインで開催した。このなかで、iPadは、同社のモバイルクリエイティブの世界を担う重要なデバイスと位置づけられており、Photoshop、Lightroom、Premiere Rushとともに、第4の主要アプリIllustratorがiPadに移植された。

アップルはプロ向けのアプリをiPadに移植していないが、Adobeは着々とiPadに最適化する形で再設計したプロクリエイティブアプリの移植を進めている。すでにPCで仕事をしているプロにとって、iPad向けのソリューションはより高品質なペンの活用など、作業に生かせるサブデバイスとしての役割を存分に発揮してくれそうだ。

しかしAdobeがiPad対応を強めているのには、他の目的もある。サブではなく主たるデバイスとしてのiPadの可能性が、より広がっていくことだ。

現在タブレット市場は縮小し、Chromebookなどのキーボードがついた、より価格が安いデバイスが優勢となっている。積極的にこのカテゴリに取り組んでいる企業はアップルぐらいで、他のメーカーは別カテゴリにシフトしている様子が鮮明だ。

そうした中、コロナ禍、新学期需要などの要因も助け、iPadは直近2020年第4四半期決算で前年同期比46%増を達成している。iPadに対して再び注目が集まっている点は、iPadが手元にあるコンピュータとしてのポジションを拡大することにつながる。

そうした中で、同年に発売したプロモデルよりも高い性能を示すiPad Airを投入したことは、最も身近なコンピュータとしてポジションを固めに行く、非常に戦略的なモデルであると見ることができる。

iPad Airは、およそ、完璧に近いコンピュータの姿を見せてくれる。もちろんそこには、1万円のApple Pencilと3万円のMagic Keyboardを加える必要があるが、将来にわたって高い性能維持し続けてくれるコンピュータに、Adobeのみならず、熱い視線が注がれ続けることになる。

筆者紹介――松村太郎

1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。