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PC業界の常識を壊す、Apple M1プロセッサ搭載Mac

性能は? 電力効率は? 価格は? ついに登場したApple Silicon搭載Macは、そのいずれでも多くの人の期待を大きく上回った。

 Mac専用に開発されたApple Siliconは、「M1」プロセッサと名付けられた。

 そしてMac全体の中でも、最も電力効率がシビアな3製品となる、MacBook Air、Mac miniそして13インチMacBook Proが、このプロセッサを搭載する最初のモデルに選ばれた。

性能/効率/価格のいずれも期待以上に仕上がった新型Mac
ちなみに、本体の見た目はIntelプロセッサを搭載したこれまでの製品と全く同じだ。

 その一方で、性能向上は例年のモデルチェンジのような前年比20~30%という話ではない。ビデオ処理で最大3.9倍、静止画では7.1倍、これから重要になる機械学習性能に至っては最大で15倍だ。さすがにこれだけの差が出ると、誰が触っても違いが分かりそうだ。

 Twitterでは、メモリの上限が16GBなのを残念がっている人が多かったようだが、新しいMacBook Proは上位モデル(4ポートのThunderbolt端子を搭載)ではなく、2ポートの下位モデルの後継と考えると、ダウングレードではなく基本性能がそのままであることが分かるはずだ。それでも、M1プロセッサ内でビデオメモリなどの共用化が行われ、無駄に画面表示データを転送したり、コピーしたりする必要がないため、処理は大幅に高速化される。

いち早く開発機を手に入れたという有名ソフトの開発者たちも「触ってすぐに分かるパフォーマンスの違い」と発表会で流れたビデオの中で興奮気味に語っていた。mmhmmのフィル・リービン代表は「(フロントカメラを使って)手で何本指を出しているのか簡単に認識できるようになった」と語ると、映像内の彼の手がアニメーションの手に差し変わって表示された。

 8KのRAWフォーマットのビデオを編集できるという開発者、何百何千というレイヤーを重ねた画像編集ができるという開発者、数百万個のオブジェクトを配置した3Dモデルの編集、1億%ズームができるという画像編集ソフトの開発者など。基調講演では、他にも拡大してギザギザになってしまった写真の一部を機械学習でスムーズにしてしまうPixelmator Proというアプリなども紹介されているので、新Macを購入してその性能を試したい人は、発表会ビデオをちゃんと見た方が良い(日本語字幕を表示することもできる)。

ちなみにMacBook Airですら、この1年で発売された99%のPCよりも高速だそうだ。そしてMac miniも、同じ性能を発揮する他社製のPCはこれよりもはるかに巨大になると発表会では言っていた。

 電力効率の向上も顕著で、これまでAppleのノートタイプと言えばバッテリー動作時間10時間前後が普通だったが、一気に倍の18~20時間に伸びた。

 3つのシリーズには、それぞれ2種類ずつのバリエーションが用意されているが、価格はいずれも既にあるIntelプロセッサ搭載モデルと同じだ。新しいプロセッサの威力を信じて、より多くの人に使ってもらおうといつも以上に頑張っている部分があるのかもしれないが、かなりお買い得に感じる。

iOSのような瞬間起動をMacでも
Appleは、自社製プロセッサに切り替えることで何をしたいのか。おそらく36年近い歴史と伝統で、どこか古ぼけてしまっている“パソコン”という製品のあり方をリフレッシュしたいという思いがあるのではないだろうか。

 その点では11月13日にリリースされるmacOS Big Surも同様で、アイコンの見た目なども含めて、全体的にかなりiOSに寄せた印象のOSになっている。

 発表会では、OSがスリープから一瞬で復帰する話や、アプリが一瞬で起動する話、そしてMacBook Airがファンを搭載しておらず無音で動作する話を聞いた時、「あ、パソコンって確かにその辺りのもどかしさが、iPadなどと比べて古めかしく感じていた部分かも」と改めて思った。

そういう意味で「M1」プロセッサの搭載は、MacをこれまでのMacから一皮向けた新しいパソコンに進化させてくれる変化なのかもしれない。

 実はそう思わされる兆しは、他にもいくつかある。

 例えばモデルの選択だ。今回発表された新型Mac、購入を試みるとMacBook AirはGPUのコア数が7コアのものと8コアという2つのバリエーションが、MacBook ProとMac miniはストレージの容量が異なる2モデルが用意されているだけだ。

これまでPowerPCの時代も、Intelの時代も、購入ページにいくと必ずあったスピードがゼロコンマ数ギガヘルツ違って2万円くらい値段が変わるのを、どう選んだらいいのか悩ましく、かつ煩わしくも感じていたバリエーションがなくなった。なんでこんなに悩ましい売り方をするのだろうと思う人は多いだろうが、Intelが細かく値段の違うチップをたくさん作って提供しているから、何となくそれに合わせるのが業界の因習で、Apple以外の会社も同様の売り方をしている。

 これに対して、例えばiPhone 12では、一番安価なiPhone 12 miniから最高性能のiPhone 12 Pro Maxまで、全機種ともにAppleが今作る最高のプロセッサを搭載している。もしかしたら、M1プロセッサ搭載Macは、それと同じ方向に進化するのではないかと感じさせる(今回、登場したのがいずれも性能よりもバランスを重視するモデルなので、もしかしたら性能重視モデル用にもう1~2バリエーションくらいは追加されるのかもしれない)。

 今回、唯一のプロセッサのバリエーションはMacBook Airに用意されたGPUコアを1個減らした(通常8個のところ、7個になった)下位モデルだが、Appleも正直、どういう製品構成にしたらいいのか悩んでいて、コア数による差別化への消費者の反応を実験しているように見えなくもない。

 こんな変化を見るだけでも、Appleは他社に依存するのではなく、自らプロセッサを作ることで、パソコンそのもののあり方を1から再定義したがっているのだな、と感じた。

パソコン業界の常識を再定義する
パソコンのあり方の再定義といえば、もう1つ。今回のMacBook Airと13インチMacBook Proの差も非常に面白い。プロセッサは同じものなので、GPUのコア数が同じモデルでは、基本スペックが同じになるのだ。では、一応はProの名がつくMacBook ProとAirの差はというと、空冷ファンがついているか否かだ。
MacBook Airは、スマートに静かな動作を好むコンシューマー向けのノートPC。発表会で登場した既にM1搭載Macに触った人たちのビデオによれば、M1プロセッサ搭載Macは驚くほどエネルギー効率が良く、本体が熱くならないらしい。とはいえ、3Dレンダリングや4Kビデオ編集など負荷の大きい処理を続ければ、自然とプロセッサの温度も上がってくる。最近のプロセッサは温度がある程度以上に達すると、それ以上熱くなって熱暴走しないように動作速度を遅くするなどして対策をとる。

 空冷ファンを備えていないMacBook Airでは、この熱さの限界への到達が必然的に早い。これに対してスペック的には同じでも、空冷ファンを備えたMacBook Proは、ファンによってプロセッサが冷却されるので、それだけ長い間、高速な動作が続けられる。よってそうした利用をするプロユーザー向け、ということなのだ。

 こんな大胆なパソコンの常識の再定義、自らプロセッサを作っているAppleでもない限りできない印象がある。

 ちなみにIntel依存からの脱却は、部品などの提供会社までも含めて二酸化炭素排出を減らすとしているAppleの戦略的にも有利だ。既にM1搭載Macは再生アルミなどを多くのリサイクル部品を使って作られているが、今後、プロセッサ自体もリサイクルされたレアメタルなどで作られるようになれば、Macは最もエシカルに作られるパソコンになりそうで、その点でも期待が持てる。

Mac上で膨大なアプリケーションが動作
Appleがパソコンをどう再定義しようが、ユーザーにとっては関係ないのかもしれない。ユーザーにとってM1搭載Macの速い、バッテリーが持つ、安い以外のメリットは何か。

1つは、何といっても利用できるアプリが一気に増えることだろう。M1搭載Macでは3種類のアプリが動く。

 1つ目は、Apple M1に最適化済みのファットバイナリだ。Appleが今後も2年間はIntelプロセッサ搭載Macの販売も継続するため、全てのMac用アプリはM1とIntelの両方に対応しなければならず、どちらのプロセッサでも動作するように両方のコードが入っているのがファットバイナリだ。

 2つ目は、現状のMac用ソフト、つまりM1への最適化がまだのアプリである。Intel専用アプリを認識すると、macOS Big Surに組み込まれたRosetta 2という技術がコードをM1向けに翻訳しながら実行する。翻訳が入るため、少し動作が遅くなるが、アプリの動作を重くしがちなMetalなどの標準グラフィックスエンジンを使った部分などは関係なく高速化される。その結果、翻訳を介していてもIntel Macより速く実行できるアプリも多いという。

 3つ目は、iOS用アプリだ。iPhoneやiPad用に作られたアプリは、開発者が「Mac用のアプリも書き出す」というオプションを選ぶ一手間をかければMacでも利用できるようになる。iOS用には200万本近いアプリがあり、Macで動作するアプリが一気に爆発的に増える可能性がある。ただし、全てのアプリが利用できる訳ではなく、開発者がそれを望んで上記のひと手間をかけたアプリのみだ。開発者によってはあえてMac版は出さないというところもある。

一方、CPUがIntel製ではなくなることから、Boot Campなどを使ってWindowsを利用することはできなくなる。ただし、macOS上でWindows用アプリの利用を可能にしてきたParallels Desktop for MacのM1版が現在開発中で、これを使えばこれまで通り利用できるようになるはずだ。Rosetta 2同様に、Intel用コードを翻訳して実行するため、多少動作が遅くなる可能性もあるが、Parallelsは高いパフォーマンスが出るように努力を重ねているというから期待したい。

大きな変化の前奏曲となるApple M1
Apple M1という新しいプロセッサを搭載しているにもかかわらず、見た目がこれまで通りなので、「なんだか新しさがない」とガッカリした人がいるかもしれない。だが、1時間弱の製品発表会を見ていて、筆者は、これがIntelプロセッサ搭載Macとは、全く別の世代の製品なのだと、感じることができた(おそらく起動の速さが最大の理由だ)。見た目そのままで、これを感じさせられるというのはなかなかすごいことではないだろうか。

 そしてこのような再定義は、やはり1977年にApple IIでパーソナルコンピューターという概念を広め、1984年に初代Macintoshで現代のパソコンの原形を定義したAppleだからこそ、できたのかもしれないと思った。

 おそらく発売日を迎える来週、製品を手にした人たちも、そう感じるのではないかと思う。もちろん、異なるプロセッサへの切り替えというのは、そんなに簡単なものではなく、最初はいくらかの不具合が発見されるだろう。しかし、そういった不具合を楽しむくらいの勢いで、新しいことにチャレンジしてきたのがMacユーザーであり、そうしたMacユーザーの多くも自ら新しいことにチャレンジしてきた人たちだと思う。

 改めてそんなことを強く思ったのは、今回、発表会の冒頭でAppleが流したビデオ映像のせいかもしれない。有名アーティストなどが次々と登場し、チャレンジをして世界を変えてきた人たちを称える言葉が添えられていて、1997年ごろの「Think different.」キャンペーンの広告をほうふつとさせる良い映像だった。

 やはり、M1搭載Macを買う人には、一度、発表会の映像を最初から最後まで通しで見てもらいたいと思う。