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AppleがApp Storeの手数料を“半額”に下げる狙い アプリ開発者に与える影響は?

Appleは、11月19日に「App Store Small Business Program」を発表した。2021年1月から、手数料を引いた分の収益が100万ドル(約1億400万円)に満たない小規模なデベロッパーに対し、App Storeでの販売手数料を現行の30%から半減となる15%に引き下げる方針だ。Appleによると、「大多数のデベロッパーが恩恵を受けられる」といい、アプリ業界へのインパクトは大きくなりそうだ。複数のデベロッパーに話を聞きながら、今後の展開を占った。

小規模デベロッパーの手数料を半額に、実際にどれだけ支払免除になるのか
App Storeでアプリを販売すると、売り上げの30%を手数料としてAppleに納める必要がある。“Apple税”などとやゆされることもあるが、Appleは、App Storeでのアプリの審査や運営、課金などを肩代わりする対価と位置付けている。この手数料は、App Storeがスタートした2008年に導入され、現在に至っている。当初はアプリ1本を購入して終わりという買い切り型だけしか存在しなかったが、アプリ内課金やサブスクリプションなど、12年の間に、さまざまな仕組みが導入されてきた。

 ちなみに、30%という数値はあくまで有料アプリのみ適用される。また、サブスクリプション型で継続課金している場合、2年目以降の支払いに対しては、手数料が15%になる。今回のApp Store Small Business Programが適用されると、手数料を除いた収益が100万ドル以下のデベロッパーや、新規参入したデベロッパーの手数料が、一律でこの水準まで引き下げられる。

1年の途中で収益が100万ドルを超えた場合、その時点から手数料が30%に戻り、翌年はApp Store Small Business Programの対象から外れる。例えば、2021年8月に100万ドルを超えた場合は、2021年9月以降と2022年の手数料が30%に引き上げられる。仮に2022年の収益が何らかの事情で100万ドルに達しない場合、2023年は再び15%に戻る格好だ。

 単純計算だと、基準ギリギリとなる100万ドルの収益を出していたデベロッパーの場合、売上高は約143万ドル(約1億4800万円)。これまでは、その内の30%にあたる約43万ドル(約4500万円)を手数料として支払っていたが、App Store Small Business Program適用後は、約22万ドル(約2300万円)の支払いで済む。実に2000万円以上の手数料が節約になるというわけだ。

実際に、この恩恵を受けられるデベロッパーからは、歓喜の声も聞こえてくる。位置情報のログを可視化するツールの「1 log」のデザイナーを務める掬矢吉水氏は、App Store Small Programの発表を知り、「非常にうれしかった」と語る。1 logはツール系のアプリで、サブスクリプション型の課金を導入しているが、その特性上、広くあまねく使って一気に売り上げを作るようなアプリではない。「爆発的ではなく、息の長いアプリを作っている開発者にとって、非常にいい発表だった」(同)という。

収益が100万ドルを超え、App Store Small Programの対象にならない会社に所属する別のデベロッパーも、結果として「多様なサービスが増えて、業界全体が活性化するのでは」とAppleの取り組みには期待を寄せる。このデベロッパーの会社には、直接的な恩恵はないものの、「キャッシュが1割以上増えるのは(対象の小規模な会社にとって)大きい」と評価する。

デベロッパーに与える影響は? アプリのトレンドが変化する可能性も
Appleは、発表で「デジタル商取引とアプリケーションを通じたイノベーションをさらに生み出し、新たな雇用を支援し、小規模でインディーズとして活動するデベロッパーが継続的にAppleユーザーのために素晴らしいソフトウェアを提供していくのを支援します」と語っている。実際に、小規模なデベロッパーの手数料が引き下げられるとどうなるのか。

先の100万ドルを超える大手に所属するデベロッパーは、「インディやスターアップの活性化につながる」と語る。同氏によると、ベンチャーキャピタルからの期待も大きいというという。一方で、「複数のサービスを抱えていると、年額約1億円は容易に超えてしまうライン」(同)。既存の大手デベロッパー、「特にゲーム系大手には無風」(同)だという。掬矢氏も、「100万ドルだと、最大で10人ぐらいのチームまでで、それを超えるところには影響がないのではないか」と語る。

直接課金に頼らない収益を上げるデベロッパーにも、影響が大きそうだ。100万ドルの基準は、あくまで課金による売り上げだからだ。アプリ内に広告を入れ、主な収益をそちらに依存しつつ、広告を消去する代わりとしてアプリ内課金を導入している場合にも、App Store Small Business Programの恩恵を受けやすい。大手に所属するデベロッパーは、「スマホゲームは最近、大規模なタイトルより、広告モデルのカジュアルゲームが活性化している。その流れを促進する可能性もある」と指摘する。

既存のアプリに、新機能が追加されるといった効果も期待できる。掬矢氏は「より細かいところまで、手を回すことができる」と語る。「例えば、最近だとウィジェットに対応するだけでも、工数が1つ増えてしまう。1 logも、iPad版やApple Watch版はやれていないが、その可能性も出てくる」(同)という。浮いたコストを開発の投資に回すことで、アプリのクオリティーを上げたり、展開するデバイスを広げたりできるのも、手数料値下げのメリットと言えそうだ。

根強い大手デベロッパーのApple批判、解決の道はあるか?
Appleが、App Store Small Business Programを導入した背景には、30%の手数料に対し、デベロッパーの不満がくすぶっていることがある。その代表例といえるのが、Epic Gamesの「フォートナイト」がApp Storeから削除されたことだ。経緯や理由は他の記事が詳しいが、App Storeの手数料などに不満を持っていたEpic Gamesは、自社の独自課金システムをアプリ内に導入。これが規約に反したとして、8月にApp Storeからアプリそのものが削除された。AppleとEpic Gamesの戦いは訴訟問題にも発展し、現在も係争中だ。

 同様に、サブスクリプション型の音楽ストリーミングサービスを提供するSpotifyも、Apple Musicを開始したAppleに対し、たびたび批判を繰り返している。30%の手数料がかからないApple Musicに対し、自社が競争上不利な立場に立たされているというのが同社の主張だ。

Epic GamesやSpotifyのような“超大手”以外でも、30%に対する評価は複雑だ。先の大手企業に所属する開発者は、「面倒なことを考える必要なく、アプリを世界中に展開でき、決済の後始末をしなくていいという視点で考えると、それほど高くはない」との見方を示す。一方で、「iモード時代を知っていると(iモードの公式サイトは手数料が9%だった)、やはり高いという印象がある」(同)。「特に日本の場合、今のユーザーがプラットフォームのプッシュであまりコンテンツを選ばなくなってきている」(同)ことも、割高感を感じさせる一因になっているようだ。

AppleのApp Store Small Business Programには、こうした批判をかわす狙いもありそうだ。実際、適用されるのは売り上げの小さいデベロッパーだが、Appleの説明通りなら、大多数がその恩恵にあずかれるため、評価する声は多い。逆に超大手のデベロッパーは、数の上では少数派になり、業界を代表してAppleを批判するという大義名分が成り立ちにくくなる。収益的なダメージを抑えつつ、デベロッパーを味方につけるという意味で、非常に戦略的な値下げといえる。もちろん、先に挙げたように、App Storeのエコシステム自体も活性化できる。

これに対し、Epic Gamesのティム・スウィーニーCEOは米国でのイベントで、「開発者を分断して、征服する皮肉な策略」とApp Store Small Business Programを批判。Spotifyも、「AppleのApp Storeポリシーが恣意(しい)的で気まぐれなものであることをさらに示している」との声明を発表したことが報じられている(THE VERGEより)。

 こうした声にAppleが応えるかどうかは未知数だが、超大手デベロッパーの一部の不満を解消するには、別の対策も必要になる。一定の売り上げを超えた分を割り引くボリュームディスカウントや、地域限定で配信する場合の手数料を抑えるなど、小規模デベロッパー以外が恩恵を受けられる踏み込んだ対応が求められるかもしれない。