M1搭載MacBook Airを入手して実作業に投入している小寺信良さんに、4K動画編集マシンとしての新MacBook Airの実用度を検証してもらった。まずは、Final Cut Proを使った動画編集について。
筆者は技術系のライターではあるが同時に映像技術者でもあるので、1年のうち半分ぐらいは映像コンテンツ制作やそれに関わる技術開発の仕事をしている。そんなわけでYouTuberほどではないが、しょっちゅう動画を撮影し、編集している。
昨今はネットのライブ配信が全盛で、イベントやトークをリアルタイムで配信してしまって終わり、という動画コンテンツが増えた。こうした速報性やリアルタイム性があるコンテンツは、軽快に見られる事が優先させるので、ほとんどはHDかそれ以下の解像度で制作される。カメラやスイッチャーも、ほとんどはHD解像度でシステムが組まれるはずだ。
一方で編集コンテンツにおいても、軽快に見られるという前提は変わらず、HDが最高解像度である事が多い。しかし収録素材としては4Kが主流になっている。例えば2人トークの2ショットを4で撮影しておけば、各1ショットはそこから切り出せばいいので、別途アップ用のカメラを用意する必要がなくなるからである。
すでに多くのデジタルカメラやスマートフォンが4K撮影に対応しており、わざわざ高価なカメラを購入する必要もなくなった。スマートフォンでの4K撮影は、2014年ソニー「Xperia Z2」を皮切りに、翌15年にはApple iPhone 6s Plusが対応。それ以降、4K撮影は大いにハードルが下がったといえる。
ただ編集となると話は別だ。4K撮影素材をそのまま編集するためには相当のマシンパワーが必要になる。筆者は2016年に13インチMacBook Proを購入したが、4K編集は単純なカット編集ぐらいはできるものの、複数レイヤーにまたがる合成などはそのままではできなかった。
ではどうするかというと、「プロキシ編集」という方法を使う。これは4K素材から編集用の低解像度ファイルを作り、編集作業はそのプロキシデータで行う。最終に一本化して書き出す際に、元の4Kデータと差し替えてレンダリング処理するわけである。
この方法なら、4Kはおろか8K編集でも対応できる。ただしレンダリング時間は別だ。この処理には元データを使うので、場合によっては数時間かかることがある。ただこの処理は人間が立ち会う必要がないので、昼間せっせと仕込み、夜中にレンダリングを仕掛けて朝結果を見る、といった使い方が普通だ。
Appleの新プロセッサM1搭載Macは、11月17日の発売以降、ベンチマーク記事がたくさん出て処理能力が大幅に向上したことは分かっている。しかし具体的な実作業でどのぐらい効率が上がるのか、といった記事はまだ少ないようだ。今回は4K編集という具体的作業においてどれぐらい恩恵にあずかれるのか、という話である。
2020-11-29 19:04:35