Appleが、中国でウイグル人を強制労働させて作られた製品の取引を禁止するアメリカの「ウイグル人強制労働防止法案」に対し、その条項を緩和させるためのロビー活動を行っていることが報道により判明しました。
中国では、新疆ウイグル自治区の人々を対象とした監視や拷問など厳しい弾圧が行われているほか、ウイグル人強制収容所も近年急速に拡大していることが分かっています。
中国のウイグル族収容施設は急速に拡大を続けているという指摘 - GIGAZINE
こうした強制収容所での人権侵害を防ぐことを目的に制定が進められているのが、アメリカの「ウイグル人強制労働防止法案」です。強制労働により製造された新疆ウイグル自治区の物品の輸入を制限するこの法案は、2020年9月22日に下院で審査され、406対3の圧倒的多数で可決。今後、上院で審議を受ける予定です。
アメリカの日刊紙ワシントン・ポストは11月20日に、「Appleのロビイストが、中国での強制労働を防ぐことを目的とした法律を弱体化させるために活動しています」と報じました。匿名で同紙に情報を寄せた国会の職員2人によると、複数の企業がウイグル人強制労働防止法案に反対するロビー活動を国会で行っており、そうした企業の中にAppleも含まれているとのこと。職員らは、Appleに特定されることを恐れて法律の具体的な条項を伏せましたが、両人とも「Appleの努力は法律を骨抜きにする試みだ」と強調したということです。
また、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議の国際部門の責任者であるキャシー・ファインゴールド氏は、ワシントン・ポストの取材に対し「Appleの目的は、法案をめぐる協議を無為に終わらせることです。この法律はいくつかの効果的な強制力を持つ初めてのものなので、彼らはショックを受けているようです」と話しています。
一方、Appleの広報担当者であるジョシュ・ローゼンストック氏は、「Appleはサプライチェーンを構成する全ての人が尊厳と敬意をもって扱われることを念頭に置いています。私たちは強制労働を忌み嫌っており、ウイグル人強制労働防止法案の理念を支持しています。また、アメリカの法律を強化し強制労働を根絶するという目標を国会の委員会と共有しています」と話しました。
また同氏は、「中国のサプライヤーと共同で詳しい調査を実施したところ、Appleの生産ラインで強制労働が行われたという証拠は見つかりませんでした。今後も綿密な監視を続けていきます」と述べました。
しかし2020年7月には、Appleと取引しているとされている中国のサプライヤーが強制労働に関与していると告発され、アメリカ商務省による輸出規制対象リストに加えられるといった事件も発生してます。
Appleのサプライヤーが商務省による輸出規制対象リストに追加される - GIGAZINE
なお、ウイグル人強制労働防止法案をめぐる議論では、Appleのほかナイキやコカ・コーラも法案反対のロビー活動を展開していることが分かっています。
2020-11-29 19:56:57