Galaxyブランドの完全ワイヤレスイヤホン「Galaxy Buds Live」は、独特のデザインと使い勝手が面白い製品です。実売価格は16,000円前後(税込、2021年1月上旬時点)と比較的高額な製品ですが、スペックは充実しており、アクティブノイズキャンセリング機能も備えています。
Bluetooth接続でコーデックはSBCとAACに対応。加えて、独自の高音質コーデック「Scalable Codec」をサポートしています。いまのところScalable Codecは、Galaxyシリーズのスマホと組み合わせて使うものです。それ以外はSBCかAACとなります。
独特のデザインで装着感は良好
Galaxy Buds Liveは、形状としては「空豆」のような独特のデザインを採用しています。多くの完全ワイヤレスイヤホンは、イヤホン本体からマイクなどを内蔵した「棒」が伸びていたり、耳から飛び出すデザインが一般的です。対してGalaxy Buds Liveは、耳穴にはめるような突起状の部分がなく、イヤホンがすっぽり耳に収まります。
一見すると落下の心配がありますが、装着してみると意外に大きなフィット感。装着すると、ちょうど耳の穴と周辺の耳甲介(じこうかい)といわれるあたりを「埋める」ような感じで、本体がピッタリはまります。そのまま耳珠(じじゅ)のような耳の構造がイヤホンを支えてくれるので、身に着けていて落ちそうな印象はありませんでした。
装着は、耳の穴に差し込むようにイヤホンの下半分を少し入れてから、上半分を自然な感じで押し込むと、勝手に最適な位置に装着されます。最初は耳にきちんとハマっていないような感覚で慣れないのですが、位置を少し調整してしばらく使っていると、フィットする感じになってきます。
Galaxy Buds Liveを装着しても耳から外に出る部分が少ないため、目立たないところは好印象。今回使ったのは、スマホを含めて最近のGalaxyシリーズでメインカラーとなっているミスティック ブロンズです。光沢のあるカラーですが、派手さはありません。そのほか、ミスティック ホワイトとミスティック ブラックがあり、計3色のカラバリです。
充電ケースは本体サイズの割に少し大きめ。バッテリー容量は472mAhです。アクティブノイズキャンセリング有効の場合、連続使用は最大6時間、充電ケースからの充電を含めると最大21時間となっています。長距離の飛行機フライトには足りないのですが、通勤・通学のようなシーンなら十分。クイックチャージ機能もあり、5分間の充電で約1時間の音楽再生が可能です。
充電はUSB Type-CケーブルまたはQi準拠のワイヤレス。Qi対応のスマートフォンも増えてきているので、ワイヤレス充電台を持っている人も多いでしょう。バッテリー容量の小さい完全ワイヤレスイヤホンなら、ワイヤレス充電でも十分なチャージ速度で実用的です。
また、スマートフォンからのワイヤレス給電(バッテリーシェア)機能を搭載したGalaxyシリーズの端末であれば、出先でも手軽にGalaxy Buds Liveのケースを充電できます。日常では外出先でケースを充電する機会はあまりないでしょうが、いざというときの安心感があります。
完全ワイヤレスイヤホンとして小さいのはメリットですが、コンパクトすぎる点は気になるかもしれません。装着感は高く、きちんと身に着けていれば下手に落とすことはなさそうですが、付け外しのときにポロリと手から落ちることは十分に考えられます。完全ワイヤレスイヤホンはどれも同じ心配はあるので、駅のホームなど落としたら回収しづらい場所での付け外しには十分注意しましょう。
●ノイズキャンセリングの傾向は
AndroidやWindowsでの接続は簡単
再生機器と接続する場合、スマートフォンのGalaxyシリーズであれば、「Galaxy Wearble」「SmartThings」アプリをインストールしておきます。充電ケースに入れた状態で、ケースのフタを開けると自動的にペアリングが開始され、Galaxyスマートフォンにポップアップが表示されるので、すぐにペアリングは完了します。
それ以外のスマートフォンでも、同様にケースを開ければペアリングモードになるので、スマートフォンのBluetooth設定からペアリングします。各種設定のために、AndroidスマートフォンにはGalaxy Wearbleアプリ、iOS端末にはGalaxy Budsアプリは必須です。
Windows PCでは、クイックペアリング対応のWindows 10であれば、充電ケースのフタを開ければ通知がポップアップするので、簡単にペアリングができます。そのほかのデバイスでBluetoothの通知といった機能がないときは、そのデバイスに用意されているBluetoothのペアリング機能から接続します。
ペアリングしたら耳に装着。操作はイヤホンの側面をタッチすることで行います。タッチ1回で音楽の再生・停止。タッチ2回で曲送り、電話の応答・終了、保留・再開、タッチ3回で曲戻し、長押しで着信拒否または指定した設定を起動――となります。タッチ機能は左右で同じ割り当てとなっており、長押しのみ右と左で分けられます。
長押しに設定できるのは、アクティブノイズキャンセリング、音声コマンド、音量、Spotifyの4種類。音量を選んだ場合、左が音量ダウン、右が音量アップに固定されます。音声コマンドには、Googleアシスタント、Alexaといった音声アシスタントを設定できます。
個人的に、大半の完全ワイヤレスイヤホンは音量操作ができない点がネックだと思っています。Buds Liveは左右ピース側面の長押しに音量を設定できるので、そこは筆者としてはうれしいところ。ただ、長押しに割り当て可能なほかの設定と排他なので、しかたなくも残念ですが……。
そのうちのひとつ、Spotifyの専用機能は、いくつかの音楽サービスから選択できればよかったのですが、Spotify限定です。長押しでSpotifyを起動しても、再生したい音楽はスマートフォンで探す必要があります。音声アシスタント経由でも再生できるので、長押し操作に割り当てる必要はあまりないように感じました。
低音のノイズ削減をしてくれるアクティブノイズキャンセリング
また、長押しにはアクティブノイズキャンセリング(ANC)も設定できます。周囲の雑音を抑えながら、会話やアナウンスなどの音声は通過させるというもので、低周波帯域のバックグラウンドノイズを最大97%カットするといいます。
Galaxy Buds Liveはインナーイヤー型であり、形状的にも耳孔にピッタリとはまり込むカナル型でもないため、音楽の再生中は周囲の音がかなり聞こえます。音漏れもそれなりにあるため、周囲への配慮は欠かせません(個人的にちょうどいいと感じる音量では、それほど音漏れしませんでした)。
そんな性格なので、ANCの効果も限定的です。基本的に外部の音は聞きやすいのですが、ANCをオンにすると、低周波の音がスッと消えます。電車内の走行音、飛行機内の低い騒音が顕著に聞こえなくなります。「周囲の音が消える」というほどではありませんが、音量を1~2段下げても十分なくらいに音楽が聞きやすくなります。
密閉型のような強力なノイズキャンセリングではないにしろ、効果は感じられます。結果として音漏れも減るので、外出先では積極的に利用するとよいでしょう。
音質は、やや高音が弱い印象はあり、どちらかというと低音重視の印象。とはいえ、たとえばロックだと、ドラムのハイハットからバスドラムまでバランスよく、いわゆるドンシャリにならず全体的によく響きます。低音重視とはいっても、それほどバランスは悪くありません。
アプリのイコライザでは細かい設定はできませんが、標準、低音ブースター、ソフト、ダイナミック、クリア、高音ブースターが選べます。個人的にはダイナミック設定が良好に感じましたが、BGM的に聞くときはクリア、ボーカルを中心に聞きたいときはソフト、というように使い分けています。
内蔵マイクは外側に2つ、内側に1つを搭載しています。さらに「ボイスピックアップ装置」がアゴの動きを感知して、振動データを音声信号に変換するそうです。相手側に音声はかなりクリアに聞こえ、音声通話もまったく問題ありません。
このマイクは、ビデオ会議でも大変役立ちます。筆者はビデオ会議には片耳で使い、バッテリーが切れそうになったらもう片方に切り替えて使っています(そこまで長時間のビデオ会議もそうそうありませんが)。こういう使い方ができるのも、マイクが左右ピースの両方にあるから。片耳だと音声はモノラルになりますが、ビデオ会議や音声通話なら大きな支障はありません。
Galaxy Buds Liveは、外部と断絶して音楽に集中するといった使い方には最適ではありませんが、ノイズキャンセリング機能は音楽を妨げるノイズをいい感じで減らしてくれるため、外出時や移動時に向いています。コンパクトで目立たず、それでいて聞く・話すという双方の音質は十分に確保しているという点で、カジュアルなリスニングが中心のユーザーにおすすめしたい完全ワイヤレスイヤホンです。
2021-01-05 02:34:00