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電子機器のデザイン&テスト“シンクタンク”が見る2021年の技術予測

2020年、世界は未曾有の公衆衛生危機(新型コロナウイルスによるパンデミック)を経験しました。これは企業、政府、民間機関等の社会のあらゆるセクターに影響を与え、デジタルトランスフォーメーションの加速、イノベーションの実現方法を再考するため、場合によっては広範囲にわたって方向転換を迫りました。

キーサイト、ミッドレンジの普及型オシロ「Infiniium EXR」シリーズを発売

キーサイトは、パンデミックのレンズを通して展開されている事業運営やテクノロジー動向の変化、そして組織や社会に継続的に及ぼす影響について、次のように考察しています。
リモートワークの高まり

分散型およびリモートワークは、特に技術革新に関して新たな尊重と受容を得ており、その結果リモートとオンサイトの職場環境が混在するようになってきています。これはパンデミックが収束しても変わることなく、今後も標準になります。

コラボレーションの技術と実践は新たな意味を持ち続けます。テクノロジー企業は、リモートで管理されるミッションクリティカルなイノベーションチームの形成と組織化を加速させていきます。
エンジニアやその他のイノベーターは、現場での対面によるコラボレーションに戻る必要がありますが、そのタイミングについては、より意図的かつ戦略的なものになります。
ハイブリッド型の営業部隊(対面とバーチャルの組み合わせ)は、関係構築や学習のための新しい方法を適用し、製品やソリューションのデモンストレーションを遠隔から提供する代替方法が用いられることにより、企業の営業組織は大きな変革を遂げることになります。

STEM(注)が人材パイプラインを促進

ダイバーシティとインクルージョンへの注目が高まるにつれ、技術系人材を求める競争が激化することが予想されます。

すべての地域で、STEMへのアクセスと実施に焦点を当てた取り組みが強化されます。
公平な競争条件を提供するバーチャルな学習機会を実現するために、新しい方法が模索され、実施されます。
企業と政府は、パンデミックが悪化させた「デジタルディバイド(情報格差:コンピューター、スマートフォン、Wi-Fi、ブロードバンドなどのリソースへのアクセスの有無)」における公平性の問題に取り組むことになります。

企業の社会的責任(CSR)のビジネス上の重要性がさらに高まる

CSRは、もはや専門的な問題ではなく、企業の価値創造戦略に合致する道徳的かつビジネス上の必須事項になります。

株主は、従業員や顧客と共に具体的なCSRのコミットメントを持つ企業が、長期的な利益を生み出し、より持続可能な慣行を達成できることをますます認識するようになります。
倫理的なサプライチェーン、在庫・材料調達のベンダーは、企業組織との仕事関係を確立する前に、企業のCSRプログラムを検討することになります。
求められる人材は、CSRを検討する企業の基本的責任として認識し、キャリア選択における重要な意思決定要因になります。
気候変動は、今後も地球規模でサプライチェーンの混乱を引き起こすため、ビジネスの成功には事業継続計画とサプライチェーンの回復力を高める戦略が不可欠となります。これにより、以下の項目への必要性が明確化します:

潜在的なリスクの評価、エンドツーエンドのサプライチェーンプロセスを対象とする緩和戦略と計画の評価
代替部品の複数調達、部品の再設計、部品の標準化を含む柔軟な調達戦略
自然災害が発生した場合に備えて、施設が回復機能を備えていること、危機管理計画が策定されていることに重点を置くこと
こうした概念に固有の財政的影響に対処するには、新しいアプローチが必要

技術の開発、設計、導入におけるハイブリッドな労働の影響は、ソフトウェアを介して対処

ハイブリッドな労働、ソーシャルディスタンス、その他の従来の労働慣行が減少し、製品の設計開発におけるソフトウェアの有効性を加速させます。

2021年には、ソフトウェア主導のプロセスが大きな役割を果たすことになります。製品設計、研究開発、テスト、製造/生産、および診断トラブルシューティングは、ソフトウェア主導のソリューションによりリモートで実行できるようになります。
企業は、クラウドを活用し、高度な計算機能を提供することにより、リモートワークをサポートするためにソフトウェアに依存することになります。
2021年には、エンゲージメントマーケティング、顧客との対話、顧客サポートがそれぞれデジタルトランスフォーメーションの中心となります。マーケティングとコミュニケーションにおける個別化が保証されます。

ソフトウェアもまた、デジタルトランスフォーメーションに不可欠

2021年には、イノベーションのペースが加速します。デジタルツール、プロセス、ソフトウェア主導のソリューションの採用によって、企業のイノベーション、成長、顧客サポート、ビジネス遂行のスピードが変化します。
- 企業は、情報をデジタルで収集・取得し、高度な分析とデータの見える化によりイノベーションの加速に必要な知見を得ることで、生産性、効率性、正確性、セキュリティ、かつ市場投入までの時間を改善するソフトウェアを使用して変革を加速させます。
- 特に次の場合、設計、テスト、検証、およびこれらの結果の分析と解釈を可能にする新しいソフトウェアソリューションがより重視されます。
- より多く、繰り返しのテストが必要となるため、研究開発の測定および解析が求められます。エンジニアはデータの詳細な解析を必要とし、これには基本的な機能を超えたより多様な自動化機能が求められます。
- 電子部品実装の環境がより複雑になるのに伴い、設計とシミュレーションも複雑になるため、設計が意図したとおりに機能することを確認するためにプロトタイプを検証しながら、電力のフロー、熱、およびアセンブリを測定することが必要になります。
- 2021年には、セキュリティが新しい意味を持つようになります。開発者は、設計サイクルのかなり早い段階でセキュリティテストを含む潜在的なセキュリティ問題に対処することになります。製品の展開方法、タッチレスおよび非接触型技術の使用、人による介入を排除すること、自己修復できるネットワークの完全自動化がより重視されます。
- ユーザーエクスペリエンス(UX)の重要性は、あらゆる種類のソフトウェアソリューションの顧客とプロバイダーの両方にとって引き続き高まります。これは、そのようなソリューションが仕事や個人の文脈で果たす役割が拡大し、平凡なエクスぺリエンスへの不満から生じる期待が今まで以上に高まっているためです。
5Gは依然として企業と政府にとって戦略的な必須事項

2020年は、パンデミックにより展開が鈍化しましたが、2021年には以下が予想されます。

5Gネットワークが電力、エネルギー、金融のインフラの改善を促進するため、5Gが国際的に強い関心の的になることが予想されます。しかし、移動通信網における基地局のゾーニング問題やそれらに関連する施策は、国や地方自治体にとってより大きな問題になります。
5Gは、スマートフォンを超えて、産業用ユースケースや、仮想化されたヘルスケアの提供や手順を可能にするものに移行していきます。
製造とネットワークの展開は2020年のデバイス発売に追いつき、複数の価格帯の5Gデバイスの多様化が進みます。
ユーザー機器へのアクセス性が向上して、現在のカバレージ問題やミッドバンドスペクトラムの展開コストに対処するため、ダイナミック・スペクトラム・シェアリング (DSS) と新たな国のスペクトラム方針によって、5Gの普及は後押しされます。

分散型クラウドやハイパーコネクティビティなど、IoTやIIoT(Industry 4.0)を可能にするインフラへの投資が拡大

とりわけ遠隔操作や管理を容易にする、産業企業向けのプライベート5Gネットワークが強調されます。

リモートワークの増加によりIIoTが促進され、企業はインテリジェントな機器を配備して、製造と工場操業の遠隔管理を効果的に行う必要があります。その結果、以下のことが予想されます。

自動化および設備管理用のロボティクスと機械学習の利用への投資が増加し、クラウド活用による生産ライン自動化の受容が高まります。
自動車やその他の設備の増加に伴い、すべてのコンポーネントの製造自動化、テスト、解析のための新しいソリューションが提供されます。
リアルタイムで予測可能な制御を行うIIoT機能への投資が拡大します。これにより、機械やセンサの数を増やすことや、こうした増加するデバイスを管理するネットワークインフラが必要になります。

初期段階ではあるものの、量子コンピューティングへの投資が加速する見込み

2021年は、量子研究が活発な段階に突入し、主要な企業は将来に向けた量子研究の実験と投資を継続します。

現在、数多く競合する量子ビット技術があり、代表的なものには、超伝導、イオントラップ、シリコンスピン、光実装などがあります。こうしたテクノロジーは、2021年も急速に進化を続けるでしょう。
量子の材料研究の分野は、2021年に本格化します。これは、量子コンピューティングの地政学的および経済的な利点をより深く理解するために、主要な政府がその一部に資金を提供する強力な投資パイプラインによって支えられます。
2021年、新しいアルゴリズムを実行して量子のメリットを見出すために、クラウド上の量子コンピューターにアクセスする顧客が増加するでしょう。2021年には、量子コンピューター、クラウドサービス、またはその両方を提供し、ユーザーが利用できるコンピューターの性能を拡張させる企業がより多く市場に参入します。

自動運転車(AV)開発の進化が続行

自動車業界はパンデミックの影響で逆風に見舞われましたが、生産・製造は回復します。

車載ネットワークに電力を供給するセンサの数は増え続けており、車載ネットワークもその傾向を維持する必要があります。
電気自動車(EV)の販売は増加しますが、自動車生産台数全体に占めるその割合はわずか3%に過ぎません。従来型の自動車生産が停滞する一方で、各国が排出ガス基準の強化に直面しているため、EVへの関心が高まります。
AVへの投資は2021年の前半は控えめですが、後半に持ち直します。中国ならびにその関連地域では、2035年までに従来型のガソリン車を段階的に廃止することに取り組んでいるため、この動きがより活発になります。
米国は、こうした技術を支持する大統領の政権交代に伴い、2021年にAVおよびEVの開発に注力するようになります。

注:STEMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字から取った用語。