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瞳孔径の時間的変動から脳活動を測定する技術をNCNPなどが開発

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)ならび千葉工業大学(千葉工大)は、瞳孔径の時間的な複雑性と左右瞳孔の非対称性の解析により、覚醒や注意機能を担う脳活動をリアルタイムに推定する技術を開発したと発表した。

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同成果は、NCNP 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部の白間綾リサーチフェロー、千葉工大 情報科学部 情報工学科の信川創准教授、魚津神経サナトリウムの高橋哲也副院長(金沢大学 子どものこころの発達研究センター 協力研究員)/福井大学 学術研究院 医学系部門 客員准教授兼任)、昭和大学医学部の戸田重誠准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、細胞や生体システムなどを題材とした学術誌「Frontiers in Physiology」にオンライン掲載された。

「目は心の窓」ということわざがあるが、古くから目は人の精神状態を映し出すと信じられてきた。また、サッカーなどのスポーツにおいて目だけで意思疎通するアイコンタクトという用語があることからもわかるように、目はその上部の眉毛の動きなども含めて、人の精神状態や思考、意思などを他者に伝えたり、または他者が読み取ることが可能だ。他者の目を見てその人の考えや感情を読んだり、アイコンタクトでお互いの考えを確認し会うといったことは日常生活でも当たり前のように使われていることであり、社会性の動物である人なら誰でも毎日のように経験しているはずである。経験的に、脳と目は密接につながっていることを知っているのである。

その人間の目の構造は、瞳には虹彩に囲まれた瞳孔があり、ここから外界の光を眼球内に取り込んでいる。そして、眼球後方にある視細胞が光を受け取って信号に変換して脳に送ることで、人はものを見られるのだ。そして光が強くまぶしいときや暗いときなど、状況に合わせて眼球内に取り込む光量を調節するのが瞳孔だ。瞳孔は、まぶしければ光量を減らすために収縮するし、暗ければより光量を取り込めるよう拡大する。

さらに近年の研究によれば、瞳孔径が閉じたり開いたりする変化(時系列の挙動)は、覚醒や注意などの認知機能に関わる神経活動を反映することが明らかになってきたという。しかし瞳孔径を制御する神経系は、交感神経と副交感神経の二重支配を受けており、単純ではない。これまでの手法では、データの解釈に限界があったとする。加えて、瞳孔径の時系列の挙動には複雑なパターンが含まれるが、なぜ複雑な挙動が生じるのかほとんどわかっていなかったのである。

その複雑さは、近年の自然科学や社会科学において、重要性が増している研究対象だ。複雑系の定義は必ずしも単一ではないが、多くの要素が自律的に動作し、かつ要素間の相互作用によって、単一の要素では保持し得ない全体として新しいレベルでの機能が創発するシステムのことを指す。

中でも、人間の脳は単一の要素であるニューロン(神経細胞)が1000億個以上も相互に接続した複雑系の最たるシステムだ。そしてこのような複雑系の特徴を示すのが「複雑性」である。神経活動時系列における複雑性の低下は、うつ、統合失調症、アルツハイマー型認知症など、さまざまな精神疾患と関連することがわかっている。それらは、カオスと呼ばれる決定論的システム(決定論的カオス)から生まれる複雑性によって定量化されることが多いという。

なお決定論的カオスとは、ある時点での状態が決まればその後の状態が原理的にすべて決定される、という決定論的法則に従っているにもかかわらず、複雑で一見ランダム、不規則に見える挙動を示す現象のことをいう。生体においては、その機能強化にカオスが積極的に利用されているという研究成果が過去数十年にわたって報告されており、生命にとって決定論的カオスは必須の要素なのである。

こうした背景を受けて共同研究チームは今回、瞳孔径時系列データを解読するため、あるモデルシミュレーションを組み合わせることにしたという。そのモデルシミュレーションは、近年新たに報告された瞳孔径の制御機構を取り入れたカオス性を保持したニューラルネットワークによるものだ。

このモデルシミュレーションが組み合わされ、瞳孔径時系列データに含まれる複雑性、左右瞳孔の非対称性などの解析が実施された。特にこのモデルでは得られた瞳孔径の時系列データから、瞳孔径の制御に関わる交感神経系と副交感神経系の活動、そして「青斑核」と呼ばれる大脳の覚醒や注意に関わる脳部位の活動を推定するものだという。

今回の研究では、17人の健康な成人の瞳孔径が測定された。次に、瞳孔径の大きさと、「サンプルエントロピー」による複雑性、「移動エントロピー」による対称性の評価が行われた。その結果、瞳孔径に対して複雑性と対称性が逆U字特性を持つことが明らかとなった。

なおエントロピーとは本来乱雑さの度合いを示す指標のことだが、サンプルエントロピーも移動エントロピーも、脳波などの複雑な振る舞いをする生体時系列データにおける複雑性を定量化するために考案された非線形時系列解析手法のことだ。今回の研究では、サンプルエントロピーは瞳孔径の時間的複雑性を定量化するため、移動エントロピーは個別に得られた生体時系列データ間の相互依存度を分析するために用いられた。

評価に加え、最新の瞳孔径の制御機構を取り入れた青斑核を起点とする交感神経・副交感神経系からなるニューラルネットワークが構築され、青斑核の活動度に対応する複雑性と対称性の評価がシミュレーションによって行われた。その結果、シミュレーションでも逆U字特性が再現されることが確かめられた。さらに、先行研究によって報告された青斑核からの「エディンガー・ウェストファル核」(EWN)への対側の投射の存在が、その逆U字特性を増強していることも解明されたのである。

これまで、瞳孔径の時間的複雑性がなぜ生じるかほとんどわかっていなかったが、今回の手法により、瞳孔径の制御機構に関わる交感神経系、副交感神経系、青斑核の活動がダイナミックに変化する様子を推定することが可能になるとしている。

覚醒や注意機能の異常は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)を初めとする精神疾患に多く見られる症状だ。そのため、このような疾患においては、この逆U字特性のプロフィールに何らかの変化が生じると推測される。よって今回の手法により、対象者の覚醒や注意機能の評価を行い、精神疾患の診断の補助とするなどの利用方法が考えられるという。また、今回の手法は対象者の心理的・身体的負担が少ないという利点もあるとした。なお今回の評価システムについては、現在、NCNPと千葉工大、昭和大、福井大で特許を共同出願中としている。