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次世代移動通信システム「5G」とは 第39回 遠隔運転から映像伝送まで、横浜で見たNTTドコモの5G活用事例

2021年3月5日に実施された「Minatomirai 5G Conference」では、主催のNTTドコモらが5G時代に向け取り組んでいる、さまざまなサービスや実証実験などの展示を見ることができました。5G時代にどのようなサービスやソリューションを実現・提供されようとしているのかを見据える上でも、同イベントで出展されていた取り組みのいくつかを紹介していきましょう。→過去の回はこちらを参照。

高速通信とスマートフォンではない、「5G」が注目を集める理由

MECとエッジAIで車いすを遠隔運転

5Gのビジネス活用を本格化させるべく、さまざまなユースケースの開拓が進められている中、NTTドコモが3月5日に横浜市で主催したのがMinatomirai 5G Conferenceです。これは「イノベーション都市・横浜」をテーマに、5Gを用いた先進技術やサービス、ソリューションを展示し、5G時代の街づくりや地域活性化に向けた取り組みを紹介するイベントになります。

同イベントの中にはNTTドコモが中心となって手掛けているさまざまな5Gの取り組みのデモンストレーションがなされていたのですが、その中でもこのイベントで初めて披露されたのが「対話型AI自動運転車いす」になります。これは、同社と久留米工業大学が開発した「対話型AI自動運転車いすパートナーモビリティ」に、NTTドコモの5G技術を取り入れたものです。

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この車いすにはカメラやLiDAR、GPSなどを搭載。会場のデモではスマートフォンに行先を話しかけると、用意された地図データを基に自動で障害物などを避けながら、指定した目的地へと走行してくれました。

それに加えて、5Gのネットワークを用いたオペレーターによる遠隔操作ができるというのも、大きなポイントとなっているようです。デモでは自動運転で目的地に到着した後、オペレーターとテレビ電話で接続し、自動運転からオペレーターによる遠隔運転に切り替わって新たな目的地へと走行する様子を披露していました。

そして、この対話型AI自動運転車いすで活用されていたのが、NTTドコモの「ドコモオープンイノベーションクラウド」と「エッジAI対応5Gデバイス」の2つです。

ドコモオープンイノベーションクラウドは、いわゆるマルチアクセスエッジコンピューティング/モバイルエッジコンピューティング(MEC)の役割を果たすものであり、映像伝送や遠隔運転を高いセキュリティで伝送し、遅延を減らすことで事故などのトラブルを防ぎ、安全な運転を実現するのに役立てられています。

一方のエッジAI対応5Gデバイスは同社が開発中のもので、単に5Gの通信を担うだけでなく、クラウドを経由する前にAI技術を用いたさまざまな処理できるのが大きな特徴。今回の場合は自動・遠隔運転中の障害物検知や、プライバシー保護のため人物を自動で認識し、クラウドに送る前にモザイクをかけるなどの映像処理をエッジAIで実施しているとのことです。

5Gでは、スタンドアローン運用で実現するとされている「低遅延」が大きな注目を集めていますが、無線の部分だけを低遅延にしても、クラウドなどネットワーク全体に係る遅延の低減にはつながりません。それだけに低遅延の実現にはMECやエッジデバイスでの処理が重要とされており、今回の取り組みは無線以外の低遅延に向け、より進んだ取り組みを示したものといえるでしょう。

軽量スマートグラスや映像ソリューションの展示も

そのほかにも同イベントでは、NTTドコモが手がけるさまざまな取り組みが披露されていました。その1つは「軽量ディスプレイグラス」です。これは2021年2月3日に発表された眼鏡型のウェアラブルデバイス試作機で、同社の最新技術を披露するオンラインイベント「docomo Open House 2021」でも披露されていたのですが、Minatomirai 5G Conferenceでは直接触れて体験することができました。

軽量ディスプレイグラスはその名前の通り、49gと非常に軽いというのが最大の特徴なのですが、一方で軽量化のため、AR(拡張現実)コンテンツなどに対応するためのセンサなどは省略されています。基本的にAndroidスマートフォンに接続して利用する形となることから、あくまでスマートフォン上のコンテンツを大画面で視聴する、ディスプレイとして活用するデバイスとなるようです。

会場ではその活用事例として、スマートフォンに接続することで場所を選ぶことなく大画面で仕事ができる「PCリモートワーク」のデモを実施していました。5Gの高速回線を活用し、PCやディスプレイを用意する必要なく仕事がこなせる環境の提供が検討されているようです。

そしてもう1つは「LiveU」を活用した遠隔医療の事例です。LiveUはモバイルネットワークを活用した小型の映像中継装置で、4Gや5Gに対応し高画質の映像中継を屋外で、なおかつ低コストで実現可能だというのが大きな特徴となっています。

NTTドコモは、このLiveUを活用した映像伝送ソリューションのモニタープログラムを2020年10月から実施しており、Minatomirai 5G Conferenceではその活用事例の1つとして、神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院による事例が紹介されていました。

同病院ではLiveUを救命救急の現場で活用しており、ドクターカーなどで搬送される患者の様子を、LiveUを用いて救命救急センターの指令室に中継することで、高精細映像により患者の容態変化を把握しやすくなったとのことです。

ただ、現時点では5Gのネットワーク整備自体が進んでいないことから、現在用いられているのはLiveUの中でも4Gのネットワークに対応したモデルになるとのこと。だがLiveU自体は5G対応モデルも用意されていることから、上りの通信速度の高速化が見込める5Gのエリア拡大によって、今後は一層の映像の高精細化が期待できるとしています。

これら一連の展示からは、NTTドコモは同社が5Gで力を入れている高速大容量通信を中心に、5Gを有効活用したソリューションの開拓を積極的に進めている様子を見て取ることができました。

2021年は5Gのエリア拡大が本格化すると見られており、利用に向けた条件が整うことで具体的なサービスやソリューションが多く生み出され、目に見える形で広まってくることに期待したい所です。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら