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新型コロナウイルスワクチン接種の有無を示す「ワクチンパスポート」が運用開始、プライバシー面では懸念も

新型コロナウイルスワクチンを接種済みであることを示す「ワクチンパスポート」の導入が世界中で検討されており、MicrosoftやOracleがワクチンパスポートアプリを開発中であることも報じられています。そんな中、ニューヨーク州はIBMが開発したワクチンパスポートアプリ「Excelsior Pass」を2021年3月26日から正式に運用開始。「公衆衛生と経済の両立」と歓迎される一方で、プライバシー面では不安が残ると指摘されています。

Excelsior Passは、IBMが提供する健康情報照会システム「Digital Health Pass」を基に開発されており、ユーザーの「新型コロナウイルスワクチン接種の有無」「新型コロナウイルス感染症検査の結果」といった情報を示すQRコードを発行し、スマートフォンの画面に表示します。レストランやイベントの主催者は、スマートフォンの画面に表示されたQRコードを読み取ることで、ユーザーのワクチン接種情報や検査結果を知ることができます。

クオモ知事は、「Excelsior Passを用いることで、個人情報を保護しながら、ワクチンの接種情報や検査結果を確認できます。これにより、劇場・スタジアム・アリーナの利用や、結婚披露宴・ケータリングイベントなどの安全な開催が可能になります」「これまでは『公衆衛生か経済活動』の2択を迫られてきました。Excelsior Passを用いることで、公衆衛生と経済活動を両立できます」と述べ、Excelsior Passの安全性と有用性を主張しています。

一方で、プライバシーの保護を推進する非営利団体「The Surveillance Technology Oversight Project(STOP)」の設立者であるアルバート・フォックス・カーン氏は「クオモ知事は、Excelsior Passのスクリーンショットを公開しました。しかし、プライバシーポリシーは公開しませんでした」と指摘。また、クオモ知事がExcelsior Passのプライバシー保護について「ブロックチェーンを用いた安全なテクノロジーを用いています」と述べていること対して、「クオモ知事は『ブロックチェーン』という語句を用いることで、Excelsior Passのプライバシー関連技術についての説明をはぐらかしています」と苦言を呈しています。

IBMはExcelsior Passの基となっているDigital Health Passにおけるブロックチェーンの扱いついて、「Digital Health Passでは、ブロックチェーンを用いてデータを分散管理し、厳格な署名の検証を行うことで、データの信頼性を確保しています」と解説しています。

しかし、ジョンズ・ホプキンズ大学で情報セキュリティについて研究するマシュー・グリーン氏は、「ワクチンパスポートアプリにおけるデータ管理に、ブロックチェーンを用いる理由はありません」と述べ、新型コロナウイルスに関連する情報には、ブロックチェーンによる信頼ではなく、医療機関や保健当局による信頼が必要だと指摘しています。

なお、Excelsior PassはAndroidとiOS向けに既に公開されていますが、カーン氏は「ニューヨーク州には、スマートフォンを持たない人々が何百万人も暮らしています。Excelsior Passは新しい形の情報格差をもたらす可能性があります」と主張。また、多くの研究者から「ワクチンパスポートは、不平等をもたらす可能性がある」と、懸念の声が挙がっています。

新型コロナPCR検査の結果やワクチン接種の有無を証明する「デジタルパスポート」の導入が進む、研究者は不平等をもたらすと懸念 - GIGAZINE