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オンライン開催の「CES」で世界から注目された日本のスタートアップ

毎年米国・ラスベガスで開催される世界最大規模のテクノロジー見本市のCESは、1967年から始まり、かつては「Consumer Electronics Show(CES)」として知られ、家電製品主体の展示会だった。2015年に主催団体の名称が米国家電協会から米国民生技術協会(CTA:Consumer Technology Association) に変更され、家電だけではなく自動運転やスタートアップ、スポーツなども参入。現在は世界最大級のテクノロジーの祭典として、出展企業の新製品発表やPR・商談の場として世界から注目を集めている。

今年開催された「CES 2021」は初の完全オンライン化での開催となった。そこで、JETROスタートアップ支援課長の島田英樹氏とCES 2021担当者の瀧幸乃氏、CESのプロデューサーであるConsumer Technology Association(CTA)の3者に、出展に至るまでの準備や注目を集めたスタートアップについて伺った。

JETROスタートアップ支援課長 島田英樹(左)と CES 2021担当者 瀧幸乃(右)

世界へのゲートウェイ、年々増加する日本スタートアップのCES出展社数

JETROは、CES 2019よりスタートアップ専用エリアとして近年特に投資家や大手企業から注目を浴びる「Eureka Park(エウレカパーク)」に、JAPAN/J-Startupパビリオンを設置し、世界に挑む革新的な日本発のスタートアップの出展を通じたグローバル展開を支援してきた。2019年は22社、2020年は28社、そして3年目を迎える2021年は過去最多の53社が出展し、年々CESに出展するスタートアップの数は右肩上がりだ。

増加の背景としては、CESという展示会自体及びJETROとしての支援実績の日本国内における認知度向上、また今年はデジタル化開催のために参加のハードルが例年よりも下がったことが挙げられる。参加した日本企業は、世界的なメディアカバレッジ、PRを目的としており、海外の代理店探しをしているところも多い。

CES初の完全デジタル開催、JETROとしての新たな挑戦

リアル開催が想定されていた6月頭に出展企業の募集を開始したところ、70社近くの企業より申込があったが、7月末に主催者CTAより完全デジタル化開催のプレスリリースが発表され、会期1か月前の12月にようやく53社の出展が確定するという状況だった。

申込企業の審査・最終的な確定通知及び主催者が用意するデジタルプラットフォームの詳細発表が後ろ倒しになる中、完全デジタルという状況の中でどのように出展企業の海外メディアカバレッジや商談に繋げていくことができるのか、JETROのCESチームと外部アドバイザー3名は頭を悩ませた。

コンテンツ重視の支援に特化、国内外における広報効果は大

そこで、最初に動き出したのは、出展企業のプロダクトPR動画の制作支援だ。デジタル上で人に関心を集めるには、各社の展示プロダクトの魅力を伝えることのできるコンテンツが重要であると考え、出展企業ほぼ全社分の動画制作に着手。JAPAN全体としての一体感を出すために、主催者CTAのプラットフォームの発表に先駆け、制作した各社の動画やプロダクト概要を掲載できる独自のウェブサイトの構築も同時並行で進めた。

さらに、海外メディアの関心を惹き、記事掲載に繋げていくために、PR専門家による英語でのプレスリリース、メール文案作成支援、HPの見せ方にかかる指導を行った。英語での効果的な情報発信により、国内外の主要メディアへの掲載に繋がったことから、商談が進めやすかったという声もある。

商談では苦戦の声多数、会期後のフォローアップが鍵

商談の部分では、オンライン化によって苦戦している出展企業が多く「偶発的な出会いの創出が困難」、「商談に至るまでの導線がわかりづらかった」、「コンタクトをしても返事をもらえない」、「言葉だけのコミュニケーションは難易度が高い。プロダクトをその場で見せながら、身振り手振りを交えて説明できるリアル展示会の方が効果的」という声も寄せられた。

そこで、閉会1ヶ月後の2/15まで主催者のプラットフォーム上での展示が可能なことと、ジェトロ独自で制作したウェブサイトを活用し、ジェトロは出展企業へのフォローアップとして、希望のあった企業に対し、グローバル・アクセラレーション・ハブを活用した海外企業との商談アレンジを実施した。

同サービスは、スタートアップの海外展開を促進する支援サービスで、先進的なイノベーション・エコシステムを有する世界27拠点にハブを設置。JETROの海外事務所と現地のスタートアップ支援機関やVCが連携し、メンタリング、商談アレンジ、コワーキングスペース貸与等を、年間を通じて提供する。このサービスを活用して、出展企業はCES会期後も、海外エコシステムにかかる情報収集や販路開拓に積極的に取り組むことができた。

一方、デジタル展示会の良い点も挙げられている。会期に関係なく、継続的に企業やメディアとコミュニケーションが取れる点や、出展企業側であっても翻訳ツールを活用しながらカンファレンス視聴が可能なこと、他の出展企業の情報も時間をかけて見ることができる点や、物理的な移動に伴う金銭的コストや体力的なエネルギー消費が避けられる点は、オンラインならではのメリットだ。

初のデジタル開催で注目を集めた日本発スタートアップ5選

素晴らしい技術やプロダクト展示でアワード受賞をしたり、メディアから注目を集めた企業や有力なリード獲得に繋げた企業を、JETROのCES担当者の推薦で5社紹介する。

1:バンガードインダストリーズ【ロボティクス】

バンガードインダストリーズはAIが搭載されたセラピー型のコミュニケーション・ロボット「MOFLIN(もふりん)」を開発。Kickstarterでクラウドファンディングを実施していたが、今年の春の販売を目指して、開発を進めている。

主催者が実施するイノベーション・アワードのロボティクス部門で「Best of Innovation」というトップ受賞を達成、日本企業としては、トップ受賞は2年ぶりの快挙。また、米国テック系メディアEngadgetが実施するアワードのファイナリストとしても選出、国内外メディアより多くの注目を集めた。

評価されたポイントとしては、新規性とユニークさ。所有者との一連の意思疎通を強化学習し、コミュニケーションの方法を自ら学んでいく先端のAI技術、人々が可愛いと感じるサイズ感、動物的な反応、感情をベースとして成長し変化する生き物らしさをAIロボットというコンセプトとして体現している点、そしてこのようなテクノロジーが日常生活に馴染む点が挙げられる。

人間が朝日を浴びることにより体内時計がリセットされる事をヒントに、赤ちゃんの起床就寝のリズム形成を助けることを目的としたベッドライト型のデバイス「ainenne(アイネンネ)」を開発、今年の3月に国内販売予定。CES 2021 スマートホーム部門でイノベーション・アワードを受賞。

アワード受賞及びオンライン上でのSEO対策として、「Babytech」というキーワードを会社概要冒頭に入れたことにより、メディアや企業からの問い合わせが多く寄せられた。また、そこから有力なリード獲得にも繋がった。

評価されたポイントとしては、圧倒的なユニークさ(赤ちゃんの泣き声を解析したいという万国共通のニーズに対し、研究と実績を積み重ねているアプリ・プロダクトである点)、世界150ヵ国、15万人の赤ちゃんのデータをもとに開発された泣き声診断アルゴリズム、世界初の睡眠指導ベッドライトという技術力。

医療とヘルスケアを専門とするIoTスタートアップであるクォンタムオペレーションは、糖尿病患者が血糖を計る際の負担を軽減する非侵襲血糖センサーの開発に取り組んでいる。同社は、世界初のノンストップモニタリングが可能な血糖値測定リストバンドを展示し、国内外メディアより注目を集めた。

米国テック系メディアEngadgetが実施するアワードのファイナリストとしても選出。同誌の記事によると、アメリカ人の10人に1人は糖尿病を患っており、指で刺すテストを必要としない継続的な血糖値モニターは、そのような患者にとって一大事であると高く評価。

アルケリスは、「世界から立ち仕事のつらさをなくす」をミッションに、立ち仕事による足腰の負担を軽減するアシストスーツ「アルケリス」の企画・開発・販売を行う。

長時間の立ち仕事を行う工場労働者、外科医向けに展開をしており、「身につけたまま移動ができる」「体型関係なく装着可能」「電源を必要としない」点が高く評価されている。今後は工場、外科以外の立ち仕事にも事業展開を行う予定。

英語のプレスリリースを300名程の海外メディアに送ったことで、ロイター通信からオンライン取材を受け、同社ツイッター上で記事として紹介された。その結果、同記事に掲載された動画の再生回数は累計20万回を記録。米国だけではなく世界各国のメディアに掲載・転載され、外国企業からの問い合わせの大幅増に繋がった。

アマテラスは、自由視点映像及びマルチアングル映像を、視聴者がスワイプする事でWeb上やアプリ内で自由に視点をスイッチングしながら視聴できる配信システムSwipeVideoを提供する。国際特許として特許取得済の技術。

同技術は、Eコマース、エンタメ、スポーツ、技術教育分野において応用可能。日本国内では2020年にエンタメ業界での有料配信を多数実施し、購入者の声も上々、Twitterにも購入者からの高評価コメントが多々投稿されている。現在は技術教育用動画(トレーニング)の有料販売も開始し更に展開市場を拡大中。会期後もジェトロのグローバル・アクセラレーション・ハブ・サービスを積極的に活用し、世界各地のエコシステムにかかるブリーフィングや現地企業との商談を通じて、海外販路開拓を行っている。

史上初の完全デジタルでのCES開催という状況下において、成果をあげた上記企業の成功要因としては、アワード受賞等による「他社との差別化」及びプレスリリース等の「英語での積極的な情報発信」が挙げられる。

また、会期前からメディアや参加者の目を引くような新製品等にかかる重大発表をしたこと、魅力的なビデオコンテンツを作成して製品やブランドをアピールしたこと、待ちの姿勢ではなく、CES参加企業に対して自ら積極的に営業活動を行ったことも効果的であった。

CESに限らず、多種多様なオンラインイベントが開催されるようになったが、参加自体は容易でも、一定の成果を上げようと思うのであれば、自社の存在をアピールするための準備に力を注ぐ必要があるだろう。偶然を期待しすぎないことが、オンラインイベントを成功させる第一歩かもしれない。