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THXが200ドルのスティック型USB DAC「Onyx」発表、その戦略は?

映画館でおなじみのTHXから、初のコンシューマー向け製品としてドングル型のポータブルUSB DAC「THX Onyx」が発表された。海外製品で価格は200ドル(2万1914円程度)と手頃だ。アメリカ・欧州ではRazerのサイトで販売が行われているが、国内での販売は不明である。

Onyxは、AndroidスマートフォンやPCのUSB Type-C端子に接続して、3.5mmのヘッドホン端子に音声を出力できる製品だ。デジタル出力した音源を高音質にヘッドホンやイヤホンで楽しめるものとなる。こうした本格的なドングル型のUSB DACは古く、過去に「AudioQuest Dragonfly」といった製品があったが、最近では「Astell&Kern PEE51」といった新製品も登場している。本製品の特徴はTHX独自のアンプICであるTHX-AAA(AAA-78)を採用したことと、DACにES9281PROを採用してMQAに対応していることだ。

外観はブラック塗装かつ金属製のスタイリッシュなデザインで、THXというブランドのイメージもよく伝えている。またマグネット式のケーブルにより、使いやすくケーブルを折りたたむことができる。なかなかポータブルのUSB DACとして優れているように思える製品だ。

THXがオーディオ機器をなぜ出すのか?

ところでおそらく多くの方が抱く疑問は映画館の音響で有名なTHXがなぜこうした製品を出すのかということではないだろうか。そして映画館の音響のように轟くような重低音を再生するためのものかと期待するかもしれない。しかしそれはいささか違う。それらの疑問を解くために、まずTHXの独自技術であるTHX-AAAの解説から始めよう。

THXは映画館などの音響評価をつかさどっている会社で、もとはルーカスフィルムの一部門だった。つまり映画館で出てくるロゴはTHX認証を通ったシアターという意味だ。同様にAV機器に対してもTHX認証を与えている。これがよく知られているTHXのイメージだろう。そして、このTHXがTriad Semiconductorと共同で開発したオーディオアンプ用のICがAAA(Achromatic Audio Amplifier)である。

THXと聞くと重低音などを思い浮かべてしまうので、THX-AAAもそうした類のデジタルデバイスかと勘ぐってしまうが実はそうしたものではなく、THX AAAの正体は正統派のオーディオマニア向けのヘッドホンアンプICだ。もともとはTHXの戦略に則り、VRなどのパーソナル製品のオーディオ面を支えるために開発されたものだが、Laurie FinchamというTHXの音響開発担当重役がオーディオマニアであったということも関係しているようだ。

そのことは名称からも推測できる。AAAのAchromatic(アクロマティック)とは望遠鏡やカメラレンズでよく使われる単語で、色のにじみがないという意味だ。この場合オーディオでは着色感のない、あるいは高忠実度という意味で使われている。つまり原音そのままを通す技術という感じの言葉がAAAだ。その名のように、AAAチップは低ノイズ、低歪み、そして低消費電力を特徴としている。

ハイエンド機器で増えているTHXアンプ搭載モデル、なぜRazerか?

THX-AAAは技術名であり、実際の製品としてはハイエンド向けからポータブルまで様々なICが用意されている。

Onyxでは「AAA-78」というICが採用されている。これはTHX AAAファミリーでは、モバイル向けシリーズの高音質タイプのICで、DAPやポータブルヘッドホンアンプのために開発されたものだ。THX-AAAの優れている点はスペック上にも表れているが、AAA-78のS/N比は128dBという非常に高いものであり、よく知られるヘッドホンアンプICのLME49600よりも低歪みで消費電力も低くなっている。

すでにTHX-AAAを採用した製品は国内でも発売されている。ハイエンドではBenchmark Media Systemsの「HP4」がある。ポータブルではFiiOのアンプモジュールである「AM3C」などが登場している。これらを実際に聞いてみると大変に優秀なアンプであり、帯域バランスに優れていて高品位で整ったサウンドだ。ここからも、THX-AAAを搭載したOnyxが、重低音デバイスのようなものではなく、あくまで正統派のオーディオ的でリアルな高音質を狙った製品だということがわかると思う。

ここを踏まえてポータブルUSB DACを出したTHXの製品戦略を考えてみる。やはり、海外販売をしているのが、ゲーミングデバイスを扱う「Razerのサイト」である点はキーになると考えられる。

またT、HXは「THX Spatial Audio」という流行りの空間オーディオ技術を持っている。もちろん有線ヘッドホン向けデバイスであるからゲームで重要な遅延も問題にならない。

つまり、Razerが発売している「Razer BlackShark V2」のようなTHX Spatial Audioに対応したゲーミングヘッドホンと組み合わせて、対戦ゲームで求められる高精度の立体音響と高品質でリアルな音質の実現を提供するデバイスとしてOnyxが開発されたのではないか。そう考えるとパズルのピース(製品の位置付け)がうまくはまるように思える。

THXが自社ブランドでこうした製品を出したのは、THX-AAAという技術を広めるためもあるだろうし、もちろんストリーミングでの音楽再生に使用してもいいのだが、やはり、最近よく出てくるゲーミングと高音質再生というトレンドが影響しているのではないだろうか? この分野ではすでに本稿で書いたようなMQA対応の「ASUS ROG Delta S」や低遅延ワイヤレスの「AUDEZE Penrose」などの高音質で、かつゲーミング市場に向けた製品がある。

対戦ゲームやeSportsは海外を中心に人気を博している分野だ。そう考えると特に海外では、コロナ禍で伸長したゲーミング市場が、ポストコロナの高音質オーディオ機器市場の立ち直りの一翼を担ってくれるのかもしれない。