4月20日(米国時間)、アップルのスペシャルイベントで発表されたAirTag。4月23日には予約が開始されたものの、早くもオンラインでは発売日に入手困難なほど予約が殺到している。
忘れ物を探し出せるAirTag。便利そうだが、一方で悪用されたり、個人の位置情報が流出するなどの不安を感じる人も多いだろう。
果たして、アップルはAirTagにおいて、どのようなプライバシー保護、セキュリティを確保しているのか。
●プライバシーとセキュリティ重視で開発
開発を担当したカイアン・ドランス、ワールドワイド iPhone プロダクトマーケティング バイスプレジデントとロン・フアン、センシング&コネクティビティー担当シニアディレクターに話を聞いた。
AirTagはBluetoothや加速度センサー、NFC、電池(CR2032)などを内蔵。11グラムでオセロの石のような大きさとなっている。
AirTagを鍵や財布につけておけば万が一、無くしたときもiPhoneを使って見つけ出すことが可能だ。
カイアン・ドランス氏は「アップルユーザーはAirTagで『探す』という体験ができる。iPhone 11とiPhone 12であれば正確な場所まで把握できる。もちろん、プライバシーとセキュリティは重視して開発した。AirTagを持つ所有者、非所有者だけでなく、サードパーティにもメリットがあるようなエコシステムができあがっている」と自信を見せる。
●他社製品との違いは「iOSデバイス」の強み
これまでもBluetoothを用いたスマートタグや紛失物トラッカーといった製品は数多くあった。その点、アップルが出したAirTagはそれらと比べてどこが違い、何がすごいのか。
ロン・フアン氏は「iOSデバイスは世界中で10億を超えるユーザーに使ってもらっている。それらのデバイスが、ユーザーが探しているものを見つける手助けをしてくれている。場所を特定するにはデバイスの数が重要だ。もちろん、パブリックキーとプライベートキーで暗号化をしており、アップルを含めて位置情報がオーナー以外に漏れることはない。バッテリーの消耗も気にしなくていい」と語る。
もし、ユーザーが「なくした」と思ったら、iPhoneの「探す」アプリから持ち物「持ち物を探す」を選ぶ。すると持ち物リストが表示されるので、その中から探したいものを選べばいい。あとはAirTagから音を出したり、近くにあればiPhoneの画面上に探したい物がある方向や距離が表示されるようになる。
自分が持っているiPhoneからBluetoothでつながらないような距離にある場合、他のユーザーのiPhoneを経由して置かれている場所が知らされる。セキュリティが気になるが、「Bluetoothの識別子を1日に何回か変えている。同じものは使わない。アップルにおいても、位置情報はわからないし、知り得ることはない」(ロン・フアン氏)という。
●iPhoneのアクティベーションロックと似た仕組み
もし、AirTagをつけた鍵を落としてしまったとしよう。その際、ユーザーは「紛失モード」にしておくと、鍵のついているAirTagが誰のiPhoneと通信した場合、その場所をユーザーに通知してくれる。
拾った人がすぐユーザーに連絡したいと思った場合、自分のiPhoneもしくはAndroidスマホをAirTagにタッチさせると、紛失モードとなっているAirTagは、NFCにより、拾った人のスマホに落とした人の名前や電話番号を表示できる。「落として困っているので連絡ください」とメッセージすることが可能だ。
もちろん、紛失モードにしていなければ、連絡先は表示されない。
街中でAirTagを拾った人が「自分のものしてしまおう」と思うことがあるかもしれない。しかし、紛失モードのAirTagは「ペアリングロックがかかっており、他の人が見つけても、ペアリングできないようになっている。iPhoneのアクティベーションロックと似た仕組みが入っている」(ロン・フアン氏)とのこと。アップルはきちんと考えてAirTagを作っているのだ。
もうひとつ気になるのはストーカー対策だ。
●数日でピロピロ鳴りはじめる
AirTagをそっとカバンのなかに忍ばせておき、人の行動を監視したりできないものなのか。アイドルにプレゼントを贈って自宅を特定したり、旦那の浮気現場を探し出そうと奥さんがカバンの中にAirTagを入れておくといったことができてしまわないのか。
カイアン・ドランス氏は「AirTagは不要な追跡をさせないように工夫している。人を追跡するためには作られていない」と断言する。
実際、AirTagをカバンに入れてしばらく持ち歩いてみた。すると、何日かして、AirTagがピロピロ鳴るようになった。AirTagを持っていない人からすると「なんだこれは」ということになる。
ちなみに、この状態のAirTagにiPhoneやAndroidスマホをタッチさせると「あなたは追跡されているかもしれない」ということで、AirTagを無効するための方法である、電池を抜く方法を教えてくれる。今回、AirTagは電池を内蔵して充電するのではなく、一般的なボタン電池を外せる仕様にしているのは、こうした配慮から来ているのかもしれない。
2021-04-26 19:23:41