新品互換用パソコン バッテリー、ACアダプタ、ご安心購入!
ノートpcバッテリーの専門店



人気の検索: ADP-18TB | TPC-BA50| FR463

容量 電圧 製品一覧

スペシャル

スペースデブリの除去まで行うExolaunchが発表した新OTV、EcoSpaceTugとは!?

ドイツの宇宙ベンチャー企業Exolaunchは2021年4月12日、新サービスラインナップを発表した。その新サービスラインナップの名は、「EcoSpaceTugProgram」。では、EcoSpaceTugProgramはどのようなものなのか、Exolaunchがどんな企業なのかと合わせて、紹介したいと思う。

軍事作戦だけじゃない!? エンタメ要素もある空飛ぶジェット・スーツとは??

ライドシェアビジネスのパイオニアExolaunch とは?

Exolaunchは、2010年にドイツのベルリン工科大学のエンジニアやサイエンティストにより創設された宇宙ベンチャー企業で、ライドシェアビジネスのパイオニア的存在だ。

同社のホームページを訪れると、実績が掲載されている。例えばSpire、ICEYE、Skyfox Labs、Omnispace、Momentus、NanoAvionicsなど数多くの宇宙ビジネスを行う企業がカスタマーとなっているようだ。

では、ライドシェアをご存知だろうか。ライドシェアとは、New Spaceの時代に登場したビジネスで、1基のロケットに複数の衛星を搭載して宇宙へと輸送するシェアリングサービス。近年このライドシェアビジネスは、トレンドとなっている。少し詳しい読者であればSpaceXのStarlink計画がライドシェアで打ち上げられていると気がつくだろう。1基のFalcon9に約60機の衛星を搭載して宇宙へと輸送している。

では、なぜこのライドシェアビジネスが、トレンドとなってきたのだろうか。

実は、一昔前のOld Spaceの時代、ご存知だと思うが、世界の宇宙先進国の政府、宇宙機関は、大型ロケットで大型の衛星を輸送するのが主流だった。もちろん、現在もそうだ。そして、Old Spaceの時代のあるタイミングで、小型衛星が登場する。この小型衛星を宇宙へと輸送する場合は、大型のロケットで大型の衛星と一緒に打ち上げられる。しかし、大型の衛星を所望の軌道へと投入することが第1優先であるため、小型衛星は、投入したい軌道へと投入できない、してもらえないという課題があった。小型衛星のことをピギーバッック衛星なんて呼んだ時代もある。

この課題を解決しようと、小型ロケットベンチャーが登場したのだ。今現在、この状況が進化して、大型ロケットでも複数の小型衛星をそれぞれの所望の軌道に投入できるようにしたのが、ライドシェアビジネスだ。そして最近では、小型衛星でも複数のCubeSatなどを搭載しているライドシェアもある。例えばRocket Labなどはそうだろう。

新サービスEcoSpaceTugProgramとは!

では、新たに発表されたExolaunchのEcoSpaceTugProgramとはなんだろうか。それは、新しいOrbital Transfer Vehicles(OTVs)であるEcoSpaceTugを用いた人工衛星のカスタム軌道への打ち上げプログラムだ。

OTVs(OTVとも)とは、日本語で、軌道間輸送車とでも訳されるのだろうか。実は、正直に言うと、ライドシェアとOTVsの意味がほぼ同義に使われているケースが多い。ライドシェアは、ロケットに複数の小型衛星を整理整頓された状態で整理、配置、搭載すること、OTVsはそれらの複数の小型衛星を所望の軌道へと投入する輸送機と定義することも可能かと思う。

話をもとに戻そう。この新型OTVsである EcoSpaceTug。気になるのは、名称内のEcoとTugだ。Ecoの意味するところは、環境面とコスト面のようだ。まず環境面は、OTVsが軌道や姿勢を変更するための推進系がグリーン推薬と電気推進エンジンを使っていること。新しい推進系の採用により、1時間で軌道を250-300kmから500kmまで高度を上げることができるようだ。

そしてもう1つの環境面はスペースデブリの視点だ。まず、小型衛星を放出したあと、2時間以内にOTVsを軌道から外すように設計されているため、宇宙でのさまざまなものとの衝突のリスクを最小限に抑えることができるという。また、OTVsは、大気圏へと突入しスペースデブリとならないように配慮している点がある。

他にも驚くべき発想がある。大気圏へと突入する前に、あらかじめ定めておいたスペースデブリを除去するというのだ。つまりスペースデブリをキャプチャーしたOTVsはスペースデブリと共に大気圏へと突入し燃え尽きるというもので、スペースデブリ除去ビジネスの一面もあるのだ。
コスト面では、軽量炭素繊維複合材や3Dプリンターなどで製造することで信頼性を確保しつつ低コスト化をさせているようだ。Tugは、タグボート(大型船を曳航する小型船のこと)のタグと推測できる。

EcoSpaceTugの構造を詳しくみてみよう。少し鉛直方向から軸からずれた形で、搭載されているシルバーの箱が小型衛星(2個)。その下に黒の円筒状のものがある。これがEco Space Tug。その円筒の側面に太陽電池パネル、コンテナのような黒い箱が2つずつついているのがわかると思う。この太陽電池パネルはOTVsの発生電力のためと理解している。

そして太陽電池パネルの横のコンテナのような黒い箱は、EXOpodという。EXOpodはCubeSatを格納するコンテナだ。宇宙空間へと到達した際、EXOpodの蓋が開き、バネ機構でCubeSatが放出されるのだ。EXOpod にはCubeSatに対するロケットからの衝撃、振動などの機械的環境条件を緩和してくれるなど、すごい機能もある。

いかがだっただろうか。ロケットなどで衛星を宇宙へと”輸送”するという概念が、ここ10数年の間でガラッと変わった。このライドシェアの領域での日本企業の参入は、まだまだ少ないが、今後さらなる斬新なアイデア次第では、他の企業も参入の可能性があるのではないだろうか。

筆者は、未来には、EXOpodと類似したアイデアで、CubeSatに対するロケットからの機械的環境条件の緩和でなく、完全に”フリー”にできるサービスが出てくると予想している。機械的環境条件は、衛星設計条件にかなり影響しているため、そうなれば衛星設計に革命が起きるはずだ。

齊田興哉 さいだともや 2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。 この著者の記事一覧はこちら