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山田祥平のニュース羅針盤 第280回 5Gサービスが固定回線に置き換わる未来

先日、UScellularとQualcomm Technologies、Ericsson、Inseegoが、商用ネットワークで通信範囲を拡大した5Gミリ波の通信に成功したことを発表した。

au、コンセントにつなぐだけで使える5G対応ルーター UQでも取り扱い

このマイルストーンは、米国5Gミリ波固定ワイヤレスアクセス(FWA)で最も遠い7kmの距離で達成され、平均ダウンリンク速度は約1Gbps、平均アップリンク速度は約55Mbps、瞬間的なピークダウンリンク速度は2Gbps超を記録したそうだ。さらに、見通しの悪い1.75kmの距離で、約730Mbpsの平均ダウンリンク速度と、約38Mbpsの平均アップリンク速度を達成した。この成果は、5Gミリ波があらゆる場所の家庭や企業に提供できる、驚異的な範囲と接続速度を示していると各社はアピールする。

○遠隔地まで光ケーブルを敷くのは難しい

全国津々浦々の家庭や企業に、高速で低遅延のインターネットアクセスを提供する手段としては、本当は光回線をくまなく敷設するのがいちばんいい。電波は有限の資源なのでどこかで破綻してしまうからだ。しかも光網の整備には莫大な費用が必要だ。需要が集中している都市部ならまだしも、密集地から遠く離れて孤立する野中の一軒家のようなところまで張り巡らすのはなかなかたいへんだ。

昔、地方のへんぴなところにある温泉宿を取材したとき、宿泊した宿に電話が一回線しかなかったことがあった。携帯電話もまだ身近ではない時代のことだ。古いことなので、記憶が定かではないのだが、宿のロビーにはピンク電話が設置されていて、その電話が無線で外部につながっているから音質が悪いという旨の貼り紙があったのを覚えている。その電話一回線のために、まさに遠路はるばる有線の電話線を敷設するのが難しいということなのだろうと理解した。

当時の無線通信は、現在とは比較にならないほど品質が低かった。たぶん、通常の電話回線を使ったパソコン通信では、モデムを使って9,600bps(MもGもない素のbps)程度の通信ができていたはずの時代だが、無線を介した回線では、とてもそんな速度は出なかった。
○「ラストワンマイル」を結ぶ手段になりうる

今、5Gは、Sub-6に分類される低い周波数、低いといっても6GHzという高い周波数でのサービスがメインだ。これに対してミリ波は波長がもっと短く1センチを下回る。つまり単位がミリになるからミリ波なわけだ。周波数でいうと30GHz帯より高い周波数がミリ波のカテゴリーになる。日本の5G通信におけるミリ波は28GHz帯でのサービスなので厳密にはミリ波ではないが、実質ミリ波として考えることができる。

ここまで周波数が高くなると、電波は可視光線と同じような性格を持ち始める。たとえば直進性が強いので障害物で遮断されやすいし、減衰のしやすさもネックになる。その一方で、アンテナが小型化できたり、超指向性を確保したり、また、広い帯域を占有しての通信ができるので、結果として通信速度が速くなる。

今、ミリ波は、ごく限られたエリア、というよりも、スタジアムや屋内スポットなどでのサービスが想定されていて、一般的なフィールドで誰もがカンタンに使えるような用途は想定されていない。今回、Qualcommらが成功させたミリ波による広帯域の通信は、かつて、ラストワンマイルと呼ばれた通信拠点からエンドユーザー宅までを、どのような通信手段で結ぶかという難しい問題を解決するための糸口にもなりそうだ。

仮に1Gbpsの帯域を持つ回線があったとしても、それを100人で同時に使えば一人あたりが占有できるのは10Mbpsにすぎない。それでも十分に高速だが、近い将来のネットワーク利用にはとてもじゃないが足りないだろう。1,000人の生徒がいる高校や中学を考えてみてほしい。彼らが授業中にいっせいにネットワークを使ったらどうなるか。そのために数Gbpsの回線を引き入れている教育機関はそんなに多くないだろう。会社だって同様だ。
○5G通信でブロードバンド難民を救えるか

実は、人口が密集している都市部も問題を抱えている。都市部の住宅はマンションのような集合住宅が少なくないが、これらの建物内の配線は、個々の世帯まで独立した光回線を引き回すようには考慮されていることはあまりない。建物までは光回線がきていても、それを共有するかたちで各世帯までのネットワークが構築されているケースが多い。そのため、数世帯どころか、数十世帯で限られた1本の光回線帯域を共有することになる場合も多く、スピードが確保できないケースがでてくる。

ちなみに、自宅のブロードバンドがMbpsの単位になったのは、ADSLを敷いた2000年のことだった。それから、20年ちょっとが過ぎ、今は1Gpbの光回線がある。20年で1,000倍だが、その光が開通したのはADSL開通のわずか2年後だ。そのときに敷設した光ケーブルを今なお現役で使っている。スピードは1000倍になったもののの、それが20年間同じままだ。

戸建住宅のように、各戸に独立した光回線が敷けるように設計された集合住宅は、それほど多くはない。これは、マンションデベロッパーなどが将来のネットワーク環境をあまり考えずに建物を設計してしまっているからだ。彼らはこのことを深く反省すべきだろう。そうしたマンションを拠点にするスタートアップやSOHOなどの中小企業についても大きな悩みになっているに違いない。誰もが最新の設備を持つ建物に入居して仕事ができるとは限らないのだ。

企業にしても個人にしても、エンドユーザーのインターネット環境が、今後、どのようなインフラに依存することになるのか。5Gのミリ波がその選択肢のひとつとして候補になれれば、ブロードバンド難民を救うことができるのではないだろうか。懸案は、上りの速度が遅いことだ。ここをなんとかしない限り、ブロードバンドを名乗ることはできないだろう。

著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら