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「世界最高の解像度」を持つ「世界最小」のLiDARにつながる東芝の新技術

東芝は2021年6月11日、「世界最小のサイズかつ世界最高の解像度」(同社)を持つソリッドステート式LiDAR実現につながる受光技術と実装技術を新たに開発したと発表した。2020年7月に同社が発表した「シリコンフォトマルチプライヤー(SiPM)」のさらなる感度向上と小型化を通じて、容積は350cc(cm3)で解像度は1200×84画素、画角は24×12度のLiDARが開発可能になったという。

死角が生まれやすく大型だったLiDAR
東芝は2020年7月に、投光時と受光時にレーザーがたどる経路が異なる「非同軸型」のソリッドステート式LiDARにおいて、200mの距離でも物体のスキャンが行えるようにする受光技術を開発したと発表した。LiDARの受光系に使うSiPM上に、高感度素子である受光セルと、それを受光可能な状態に戻すトランジスタを組み合わせて搭載することで、小型化や高解像度化を実現したものである。同技術を搭載したLiDARの試作品は容積1600ccで、解像度300×80画素、画角は7×7度を達成した。

ただ、実社会への実装を考えるとこれらの性能は十分なものではなかった。東芝 研究開発センター 上席研究員 崔明秀氏は「当社が開発した技術は、投光時と受光時にレーザーが同じ経路を通る同軸型のLiDARに比べてコストやサイズで優れており、またレンズの変更しやすさなど柔軟性を持つLiDARが開発できる点が大きな利点だった。ただ、当社が想定している道路の凹凸情報を監視して危険を察知するインフラシステムでの運用を想定した場合、まだ解像度が低い上、画角の狭さから死角が生まれやすく、危険を見逃す危険性がある。機器も大型で、設置条件に制約が生じかねない」と説明した。

高耐圧と低耐圧のトランジスタを混載
そこで東芝は、ソリッドステート式LiDARの高解像度化と小型化、広画角化を実現する「ハイブリッド混載型SiPM」に加えて、耐環境性を向上させる「自動温度補正技術」などを新たに開発した。これらの技術を用いることで、測距可能距離200mは保ったまま、解像度は1200×84画素、画角は24×12度を実現するLiDARが開発可能になったとする。

 ハイブリッド混載型SiPMは高耐圧と低耐圧のトランジスタを搭載することで、SiPMの小型化を図るものである。従来、SiPMの小型化には受光セルとトランジスタ部分を縮小する必要があった。しかし、受光セルだけを小型化すると、受光できないトランジスタ部分の基板上での面積が相対的に大きくなるため、受光エリアが狭まり感度が劣化しかねない。反対にトランジスタを微細化すると、耐圧低下による感度劣化の可能性がある。また、トランジスタの周囲には保護のためにバッファー層を幅広くとる必要があるため、そもそも小さくする意義にも乏しい。

こうした課題を解決するために開発したのが、高耐圧と低耐圧の2種類のトランジスタを搭載するハイブリッド混載型のSiPMである。受光セルとのインタフェース部分に高耐圧トランジスタを数個、その横に低耐圧トランジスタを数十個配置する。高耐圧トランジスタの面積は大きいが、小さな低耐圧トランジスタと組み合わせることでバランスをとっている。中耐圧のトランジスタのみを搭載していたSiPMと比較して高電圧をかけられるようになり、従来比1.5倍の高感度化を実現した。

 バッファー層についても、小さな面積で導電をしないエリアを作る「絶縁トレンチ」を新たに導入したことで、受光できないエリアを縮小して、SiPM全体で従来比4分の1の小型化、解像度で同4倍にすることに成功した。また、2次元SiPMアレイのチップ面積を2倍にすることでより多くのセルを搭載可能にしており、画角が従来比6倍に改善した。

ロバスト性のあるLiDAR
自動温度補正技術はSiPMを搭載したチップ上で感度を直接的に評価することで、温度に応じて受光セルに供給する電圧制御を可能にするものである。

 SiPMは温度への感度が高いため使用時は温度補正が必要だ。従来は温度を測定してサーミスターなどで間接的にSiPMの感度を調整するという方法を採用していたが、今回、東芝はチップ上にロジック回路をSiPMとともに混載する独自技術を導入したことで、温度に応じてチップ上で直接感度を調整できる仕組みを整えた。この他、基板にSiPMを高密度で実装する技術や、投光系ユニット内部への超小型ポリゴンミラーを実装することで、温度などの環境変化に高いロバスト性を持つLiDARを開発可能にした。

これらの技術を搭載したLiDARでPoC(概念実証)を行った結果、日差しの強い炎天下の環境下でも200mまでの距離にある物体の測距にほぼ100%成功したという。LiDARの価格は1万ドル(109万5000円)以内と同性能の他社製品と比較して低コストに抑えられる可能性があるとして、崔氏は「LiDARの性能とコストはトレードオフであることが一般的だが、今回の技術開発で当社が初めてその制約を打破したのではないかと考えている。当社も最終的にはMEMS技術を用いた手乗りサイズのLiDARを開発して、自動運転やインフラ監視に使える製品を目指す」と語った。