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近未来テクノロジー見聞録 第10回 日本版GPS、準天頂衛星システム「みちびき」の現在と活用状況とは?

準天頂衛星システム「みちびき」をご存知だろうか。日本が整備する測位衛星システムだ。GPSをご存知な方は多いと思うが、ジャンルとしては同じ測位衛星システムだ。準天頂衛星システムは日本版GPSとも言われている。

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山手線車内のトレインチャンネルで流れていたCMを記憶している方がいらっしゃると嬉しいが、今日はその準天頂衛星システムとは何か。いまどのような整備状況にあるのか。どんなことができるようになるのか。そんな内容について紹介したいと思う。
準天頂衛星とは?

準天頂衛星システムとは日本版GPSと記載したが、少し詳細に説明すると、このシステムは内閣府所管となっている。

衛星は三菱電機をプライムメーカとして製造され、準天頂衛星システムはPFI事業として運用されている。

PFIとは、Private Financial Initiativeの略で、公共施設などの設計、建設、維持管理および運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るもので、官民連携事業の一種だ。

公共施設などと申し上げたが、以前にPFI法が改正され、人工衛星もPFI事業の対象となったのだ。ちなみに、気象庁の気象衛星「ひまわり」、防衛省の「Xバンド防衛通信衛星」もPFI事業だ。

準天頂衛星のPFI事業は、特別目的会社(Special Purpose Company:SPC)である準天頂衛星システムサービスが実施している。

そして、準天頂衛星システムサービスは、衛星測位サービス、サブメータ級測位補強サービス、センチメータ級測位補強サービス、測位技術実証サービス、災害危機管理通報サービス「災危通報」、衛星安否確認サービス、公共専用サービス、SBAS配信サービスの8つのサービスを提供している。

ちなみに、余談だが“衛星”となると、衛星単体を意味する。“〇〇衛星システム”とシステムがつくと、衛星単体のみならず、さまざまな情報を生成、配信する地上局などを含めたものを意味する。

世界には測位衛星システムが6つ存在する。まずGPS(Global Positioning System)。正直なところ、我々が一番耳にしているかもしれない。アメリカが運用を行っており、常時30機ほどの体制で、全世界に測位信号を配信している。

欧州が打ち上げている測位衛星システム「GALILEO」は、常時20機ほどの体制で、全世界をサービス範囲としている。

中国の測位衛星システム「BeiDou(ベイドゥー)」は、50機ほどの体制で、全世界がサービス範囲だ。

ロシアの測位衛星システム「GLONASS」は、常時30機ほどの衛星で全世界をサービス範囲としている。

インドの測位衛星システムは「IRNSS」から改称して「NavIC」というが、7機体制で主にインドをサービス範囲としている。

そして、日本の準天頂衛星システム「みちびき」だ。現在は4機体制で、日本の準天頂衛星システムは、日本はもちろんのこと、アジア・太平洋地域をサービス範囲となる。
現在の準天頂衛星の整備状況は?

宇宙基本計画工程表をぜひご覧いただきたい。

日本が進める宇宙プロジェクトについての工程表を確認することができる。宇宙基本計画工程表には、もちろん準天頂衛星についても記されている。

準天頂衛星システムは、2018年度から4機体制のサービスを開始。2010年9月11日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた「みちびき」(準天頂衛星初号機)は、2017年2月28日に内閣府に移管され、4機体制のうちの1機となっている。そして、2号機、3号機、4号機と打ち上げ、4機体制を確立し、現在、運用を継続している。

では、準天頂衛星システムの次の計画はどのようなものだろうか。まず、2021年には、初号機の後継機が打ち上げられる予定だ。そして、次は7機体制を構築し、7機体制での持続測位の確立だ。

2023年度の打ち上げに向けて追加3機の開発、準備が進められている。また、準天頂衛星システムを活用した測位システムの利活用の促進、日米協力、防衛分野での利用促進といった検討が進められている。

準天頂衛星システムで可能になる「センチメータ級測位補強サービス」とは?

準天頂衛星システムのスゴイところを紹介したい。現在までにさまざまな取り組みが実施され、すべて紹介することは不可能だが、準天頂衛星システムの強みは、やはりセンチメータ級測位補強サービスだろう。

国土地理院の電子基準点を用いて補正情報を計算し、現在位置を正確に求めるための情報(センチメータ級測位補強情報)をみちびきから送信。それをユーザが受信することで誤差“数cm”で測位を行うことが可能となるのだ。

では、センチメータ級測位補強サービスではどんな取り組みがなされているだろうか。例えば、船舶分野。海上技術安全研究所は、センチメータ級測位補強サービスを活用した小型船「神峰」の自動着桟実験を実施している。

三菱電機は自動運転技術搭載車「xAUTO(エックスオート)」で、前方および後側方を監視するミリ波レーダと前方監視カメラなどの周辺センシング技術を高度に組み合わせた独自の「自律型走行技術」に、高精度3次元地図を活用した「インフラ型走行技術」を組み合わせた自動運転技術を実証している。

他にも農機の自動運転や隊列走行、除雪車、AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)の自動運転、物流などにおけるドローンの自律飛行、建機の自動運転やIT施工、海洋土木工事といった分野で実証が進められている。

また、他のサービスであるサブメータ級測位補強サービスを活用した事例もひとつ紹介したい。

例えば、M・S・Kは、ライフジャケットに独自に開発したGNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)端末を搭載した。ライフジャケットには、海水の塩分濃度を感知する塩分センサーが搭載されており、これを身に付けた人が海中に転落すると、センサーが海水を検知して海中に転落したことを認識し、自動的に位置情報を発信。救助に向かえるというものだ。

他に測位衛星はどんなかたちで活躍しているの?

準天頂衛星を含め測位衛星はどのように利用されているのだろうか。
まずマーケティングや行動把握だ。スマホから得られる位置情報と属性情報(性別・年代など)から、いつどこにいたのかという滞在情報、ある時間、場所にいた人がどういう経路でどこまで移動したのかという情報を得ることができる。

統計的な情報として扱うケースがほとんどだが、例えば最近ではコロナ禍において街の人出の様子をニュースで見かけると思う。これもこの一環だ。他にも観光地やお店の集客のための情報としても活用されている。

エンターテインメントなどの分野でも活用が盛んだ。例えば、ゲームのポケモンGO。その場所へ行きポケモンを捕まえたり、バトルしたり、交換したりすることができる。また、バンダイナムコは、位置情報と音声データを組み合わせた新しい位置情報アソビ化プラットフォーム「ブラメディア」を開発。

ブラメディアは、スマホで街を歩きながら位置情報に応じた音声データを聞いたり、自分でデータを投稿して楽しんだりすることができる。例えば、キャラクターボイスの音声ガイダンスでアニメのゆかりの地を巡る“聖地巡礼”ができたり、タレントやキャラクターとのバーチャルデート、観光案内、音声案内による店舗へ集客といった分野での活用が期待される。

また、測位衛星からは、高精度な時刻が配信されている。実は、高精度な時刻を得るための最も一般的な方法と言われているのだ。測位衛星が出す信号には、衛星搭載の原子時計による非常に高精度な時刻情報が含まれており、これを利用すればマイクロ秒オーダー以下の誤差での正確な時刻同期が容易に実現できる。

では、この高精度な時刻情報を活用することでどのようなことができるだろうか。例えば株や仮想通貨をはじめとした金融取引。。コンピュータを駆使したHFT(高頻度取引)や、取引成立の証明としての正確な時刻履歴に活用が期待される。

また、5G通信。5Gではコアとなるシステムでは超低遅延が要求される。また電力分野では、送電線故障点標定装置や電力通信網での時刻同期に活用が期待されている。

いかがだっただろうか。今回は、日本の測位衛星である準天頂衛星について紹介した。測位衛星の位置情報や時刻情報がどのように使われているのか、少しでも知っていただけたら幸いだ。

齊田興哉 さいだともや 2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。 この著者の記事一覧はこちら