ソニー最新モデル「Xperia 1 III」もキャリア版の対応バンドは狭い
大手キャリアが販売するAndroidスマホでは、多くの機種が他社プラチナバンドに対応していません。ソニーの最新フラグシップ「Xperia 1 III」においても踏襲されたことで不満の声が上がっています。なぜこのような制限が続いているのでしょうか。
キャリア版スマホの多くが他社バンドに非対応
ドコモが公開している資料を見ていくと、XperiaやGalaxy、arrowsシリーズなど多くのAndroidスマホがauやソフトバンクのプラチナバンドをサポートしていないことが分かります。
AQUOSやPixelシリーズ、ファーウェイ製品など他社バンドに対応したAndroid端末も存在するものの、iPhoneやiPadがいずれも主要バンドに幅広く対応しているのに比べると対照的です。
ドコモ端末のバンド対応。他社プラチナバンドをサポートしない機種が多い
総務省はSIMロックを原則禁止とするなど、乗り換えのハードルを下げる取り組みを続けています。バンド制限についても議論されており、今後注視していく問題の1つに挙がっています。
総務省も注視している(「競争ルールの検証に関する報告書2021(案)」より)
最近ではドコモからahamo、ソフトバンクからワイモバイルやLINEMOのように同じキャリア内で安価なプランに乗り換える選択肢は増えています。しかし新規参入の楽天モバイルを含め、キャリアをまたいだ乗り換えを阻害している可能性はありそうです。
バンドをめぐるメーカーとキャリアの関係
こうしたバンド制限はいったい誰が決めているのでしょうか。大手3キャリアは、いずれも「他社バンドを制限するよう要請することはない」と回答。ソニーは「お取り扱いいただく事業者様と協議のうえで決定している」と説明しています。
実際のところ、キャリアモデルでもシャープやファーウェイの製品は他社バンドに対応していることから、どのバンドに対応するかはメーカーが提案した仕様に基づいて協議していると考えられます。
技術的にはバンド対応は少ない方が容易とされ、コストや設計上の理由からやむを得ずバンドを削る場合もあります。しかしソニーは国内の主要バンドをカバーしたSIMフリー版のXperiaを販売しており、技術的には実現できそうに見えます。
さまざまな話を総合すると、各端末メーカーはバンドを制限した製品をキャリアに納品することを何年も続けており、変えるきっかけがないまま現在に至っているのが実情ではないかと筆者は考えています。
端末メーカーによっては、低価格モデルを提案する際に「MVNOへの乗り換えを抑制できます」と売り込んでいるとの話もあります。このような空気の中で「他社バンド対応」を提案するのはなかなか難しそうです。
バンド対応をどう広げていくか
ソニーはSIMフリー版のXperiaを販売しており、キャリア版とは違って幅広いバンドに対応しています。しかし最新の「Xperia 5 II」においても発売はキャリア版から半年遅れ、価格も安くはないなど、キャリアへの「配慮」が感じ取れます。
IMフリー版「Xperia 5 II」の仕様。国内キャリアの主要バンドをカバーしている
もっとSIMフリーに注力してほしいという声はあるものの、国内SIMフリー市場は約13%に過ぎず、8割以上はキャリア経由(MM総研調べ)です。日本全国に販売やサポートを展開し、スマホユーザーを支えているキャリアは依然として大きな存在です。
ただ、このままでいいとは筆者も考えていません。まずは分かりやすい表記から始めてはどうでしょうか。スペック表やPDFファイルではなく、店頭やWebサイトの目立つ場所に各社のバンド対応を「○」「×」で表示し、周知を図るわけです。
消費者が乗り換えのしやすさを重視するなら「○」の機種を選ぶことになり、AQUOSのようにバンド対応の広いスマホは有利になります。端末メーカーは自社製品に「×」がつくことを嫌うので、バンド対応を広げる動機付けになります。
一方で、コスパ重視の中・低価格モデルならば「×」でも構わないという判断もあるでしょう。さまざまな価格帯に広がったスマホの多様性を損なわない範囲で、バンド対応を広げていく環境整備に期待したいところです。