グーグルが新しい5G対応のスマートフォン「Google Pixel 5a(5G)」を8月26日に発売する。5万1700円という価格も手頃なグーグルの高速・高機能スマホのハンズオン、また販売を日米に絞ったグーグルの戦略についてレポートする。
SIMフリー版が5万1700円
Pixel 5a(5G)はグーグルが2020年10月に発売したPixel 5a(5G)の後継機になる。国内ではグーグルのオンラインストアでSIMフリー版が販売されるほか、通信キャリアはソフトバンクが取り扱う。
グーグルはSIMフリー版についてソフトバンクのほか、NTTドコモ、auが提供するSub-6の5G通信サービスで使えるとしている。筆者が契約しているワイモバイルの5G通信サービスで試したところデータ通信と音声通話が問題なく利用できた。楽天モバイルは筆者が取材をした時点ではSIMカードを挿しても読み込まなかったが、現行のPixel 5/Pixel 4a(5G)ともに対応製品なので、Pixel 5a(5G)についても発売後にアップデートされるのかもしれない。
Pixel 5a(5G)は物理カードとeSIMにより、両方のSIMで電話の受発信ができるデュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)機能を搭載する。今後海外に出かける機会があれば、現地の格安な通信サービスが併用できて便利だと思う。
本体のカラーバリエーションは「Mostly Black」の1色のみだが、カラフルな4色のシリコンケースが同時に発売される。
左が5a(5G)、右は4a(5G)。本体サイズが少し縦に長くなっている。5a(5G)のボディカラーは少し緑がかったブラック
本体は防水対応。バッテリーは増量長持ち
昨年発売のPixel 4a(5G)からアップデートされたポイントに注目しよう。
ディスプレイは6.34インチのHDR表示に対応する有機EL。Pixel 4a(5G)の6.2インチよりもわずかに大きくなった。本体は縦方向の寸法が156.2ミリあるが、筆者が使っている6.7インチのiPhone 12 Pro Maxに比べるとPixel 5a(5G)は横幅がスリムなので、片手で持ちながらでも操作が少し楽にできる。
Pixel 5a(5G)は筐体に再生アルミニウム素材を使った、継ぎ目のないメタルユニボディデザインとしている。Pixel 4a(5G)はポリカーボネイト素材だった。Pixel 5が採用するメタルユニボディが手触りと堅牢性の面から好評だったことと、今回新製品も対応したIP67準拠の防塵・防水性能が実現できることが変更の理由だ。
内蔵バッテリーは3800mAhから4680mAhにボリュームアップしている。バッテリーの持ちは他のPixelシリーズのスマホよりも良いと思う。メタル筐体になったこともあり、質量がPixel 4a(5G)よりも15グラムほど重くなった。手に持つとその差がわかる。
アダプティブバッテリーテクノロジーにより、スマホがバッテリーの使用パターンを学習して長持ちさせる。スーパーバッテリーセーバーをオンにすると最大48時間の連続使用も可能
前機種から継承するデュアルレンズカメラ
Pixel 5a(5G)のカメラは、仕様・画質ともに前の機種をそのまま踏襲した。
背面のメインカメラは2つのレンズを搭載するデュアルレンズ仕様。12.2MPの広角レンズカメラには、オートフォーカスの精度やポートレート撮影時の正確な深度測定を可能にするデュアルピクセル技術を載せた。118.7度の視野を持つ16MPの超広角レンズカメラは、レンズ収差による画像の周辺歪みもソフトウェア処理によって自然に補正する。
暗い場所でシャッターを切ると自動で切り替わる「夜景モード」で撮った写真を、iPhone 12 Pro Maxの「ナイトモード」で撮影した写真と撮り比べた。Pixel 5a(5G)も実際に目で見た被写体の様子よりも明るく撮れているのだが、今回は色鮮やかさも含めてiPhoneの方が見栄えする写真に仕上がった。
iPhone 12 Pro Maxで撮影。ナイトモードによる撮影が一枚上手だ。端末の価格差を考えれば妥当な結果と言えるかもしれない
マスク着用時に便利な指紋センサーを内蔵
iPhone 12シリーズとの違いで言えば、Pixel 5a(5G)は前機種のPixel 4a(5G)と同様に指紋センサーを背面に搭載している。外出時にマスクを着けたまま画面のアンロックが素早くできたり利点も多い。
3.5mmのオーディオジャックも本体のトップにある。マイク付きリモコンを搭載する安価な有線イヤホン・ヘッドホンを装着して、素早くリモート会議など音声通話ができることを踏まえれば、ビジネスシーンにも役立つ機能と言えなくもない。
8月にはすべてのGoogle Pixelユーザーが、交通事故などのアクシデントが発生した際に利用できるようになる緊急情報サービスもアップデートにより追加される。米国ではAndroid 10以降から先行提供されていた「自動車事故検出」の機能が、日本でのローカライゼーションが完了したことから本格的に提供される。
ソフトウェアアップデートにより使えるようになる「自動車事故検出」。スマホが万が一の事故からユーザーを守る
自動車事故検出は、Pixelシリーズのユーザーがスマホを携行している状態で万一自動車事故に遭遇した場合、Pixelがモーションセンサーや周囲の音に基づいてこれを自動検知。デバイスの現在位置情報を把握して自動で110番/119番に通報して自動車事故に関連するデータを伝える。自動車事故に限定した機能なので、自転車やバイクによる事故はカバーされない。
日米限定販売の理由
グーグルはPixel 5a(5G)を北米と日本に限って発売する。その理由はPixel上位モデルの高機能を惜しみなく載せた廉価版として、2019年に発売した「Pixel 3a」が日本でもよく売れて、その勢いが昨年発売した4a、4a(5G)にまで持続したことから「日本からのフィードバックが特に多いため」とグーグルは説明している。日本以外では利用されることが少ないFeliCaを使ったタッチ決済機能をPixel 5a(5G)に載せたところにも、グーグルの意気込みが表れている。
加えて昨年から続くパンデミックの中、世界中で半導体部品の供給不足が続いていることと、物流ネットワークのダメージが回復しきれていないことから、グーグルとしても新製品を投入する「優良市場」を絞り込む必要があった。名前にあえて「5G」を残した背景には、比較的手頃な5万円台で購入できる5Gスマホであることを強くアピールする狙いがあるようだ。
Pixel 5a(5G)は前機種で既に高い完成度に到達しているカメラ機能とデザインを踏襲しつつ、防水対応やバッテリーの容量アップなど細かな点で使い勝手の向上を果たした。いまPixel 4a(5G)を使っているユーザーが買い換える必要はないと思うが、これから5Gスマホの購入を検討している方にはAndroid OSのアップデートをいち早く楽しめるスタンダード機として狙い目だと思う。
本体サイズの大きさが気になる方は6.0インチのPixel 5を選ぶ手もあるが、機能よりも価格の差が23000円も開いていることに躊躇するかもしれない。
グーグルは、秋に5Gスマホ「Google Pixel 6」と「Google Pixel 6 Pro」の発売を予告、外観も公開している。スペックや価格に関連する情報は明らかになっていないが、独自に設計開発するメインプロセッサが載る初めてのPixelシリーズのスマホになるようだ。
今のグーグルが持てる最先端のテクノロジーを詰め込んだフラグシップモデルとして、価格は少なくともPixel 5a(5G)よりも高くなることが見込まれる。AIやスマートデバイスの進化にもいち早く触れられるPixel 6シリーズと、価格も手頃な高機能5GスマホのPixel 5a(5G)という、品定めする側からも明快な選択ができると思う。